「仔像の行進」に魅せられて
軽快なテンポとユーモラスなメロディーの「仔像の行進」は、仔象3匹が水浴びに行くシーンで流れる。動物映画として ‘可愛い’ が先行する映画ではないが、このメロディーに思わず推薦してしまう。
「ハタリ!」(1962年・アメリカ映画)
監督:ハワード・ホークス

作品の冒頭、 ‘この映画は東アフリカ・タンガニーカで官民の協力で撮影された’ と字幕紹介される。
タンガニーカは現在のタンザニアであり、ここで半年にわたるロケを行い、多くの動物や大自然の壮大な景観をスクリーンに描き出した迫力ある映像も素晴らしい。
タンガニーカのアルシャの町に近いモメラ野獣ファーム。ここでは多くの猛獣を捕獲して、世界中の動物園に供給している。亡き所長の後を継ぎ、娘のブランディー(ミシェル・ジラルドン)はリーダーのショーン(ジョン・ウェイン)を中心に有能なメンバーと共に切り盛りしている。ある日、女性カメラマンのダラス(エルザ・マルティネッリ)が猛獣狩りをカメラに収めにやって来た。ショーンはダラスの我儘な態度に閉口するが、メンバー達は猛獣狩りを恐れず一緒に行動を共にする彼女に親しみを感じた。負傷した仲間の代役で雇ったフランス人青年チップス(ジェラール・ブラン)の横柄な態度に、カート(ハーディ・クリューガー)は立腹したが、ショーンが仲裁に入る。彼らは今日もまた、猛獣捕獲のために大平原に出かけていく...。

当時、タンガニーカには政府の許可を持った動物捕獲業者が2名おり、その1人ウィリー・デ・ベア氏が撮影に協力したという。彼はジープで猛獣を追いかけて生け捕りにする方法を考え出した人物とのことで、劇中でも実演しているようだ。ジョン・ウェインが大型ジープのフロント上へ設置された独特の椅子に着座し、獲物を追うシーンは迫力に満ちている。
そのシーンを撮ったのはラッセル・ハーラン。48年「赤い河」、59年「リオ・ブラボー」など、ハワード・ホークス監督がジョン・ウェインを主役に据えた作品で撮影を担当したカメラマンだ。
彼は猛獣を捕獲する決定的瞬間を撮るために、カメラに撮影車の振動が直接伝わらない特殊装置を開発したという。それでもジープが大きくジャンプするシーンや、サイの捕獲シーンなどは緊張感がある。
本作で描かれているのは銃で仕留めるハンターではなく、生け捕りにするトラッパー達である。当然、生け捕りには大きな危険が伴う。本作の題名が「ハタリ」(スワヒリ語で「危ない!」となっているのはそういう意味合いなのだろう。

イギリスから独立して間もないアフリカの新生国家タンガニーカに、夢と冒険を求め、それぞれ異なる国からトラッパーが集まっているという設定のためか、俳優はその国の出身者が配されている。
ジョン・ウェイン(米国)、レッド・バトンズ(米国/タクシー運転手出身の発明狂ポケッツ役)、ハーディ・クリューガー(ドイツ/元オートレース選手)、エルザ・マルティネッリ(イタリア)、ミシェル・ジラルドン(フランス)、ジェラール・ブラン(フランス)、ヴァレンティン・デ・ヴァルガス(メキシコ/元闘牛士ルイス役)といったメンバー。
なかでも準主役のハーディ・クリューガーが粋のいい演技を見せている。彼は戦争映画でドイツ将校を演じたらピカイチの存在だが、若い頃は「シベールの日曜日」といった純真物語もあった。ドイツ人俳優としては最も好きな俳優さんだ。
女性カメラマン・ダラスを演じたエルザ・マルティネッリは、イタリアの元ファッション・モデル出身。
63年「予期せぬ出来事」の女優役が印象深い。本作で演じた役柄は行動派な女性だが、どうにも我がままで自己主張が強くマイペース。見ていてイライラするほど面倒くさい女性の役だった。
一方、ミシェル・ジラルドンが演じたブランディーは明るい性格の女性。3人のトラッパーから求愛され、恋のさや当ても描かれるが、ミシェル・ジラルドンは1975年、36歳の若さで世を去っている。

主役は動物と言えるかもしれない。
キリンやシマウマが群れをなして疾走する。ダチョウの可愛い歩行シーン。仔象に乳を与えるために集められた山羊。木に群がるサルたち。突進してくるサイ。突然現れるワニ。
でも最も印象的で親しみを感じるのは、仔象のテンボだった。

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投稿を表示動物映画は言葉が無い分、純粋に感動が心を打つので好きなジャンルです😉その反面、自然の残酷さもストレートに感じるので感慨深いです😅