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趣味は洋画
2025/03/28 15:46

第1回 アカデミー賞・作品賞受賞「つばさ」

映えある第1回アカデミー賞・作品賞受賞

 

「つばさ」(1928年、モノクロ、140分)

             監督:ウィリアム・A・ウェルマン

 

サイレント末期を飾るにふさわしいパラマウントの戦争映画大作だが、内容は、第一次世界大戦で活躍する2人のアメリカ空軍パイロットの、友情と恋の物語でもある。

 

第一次世界大戦さなかの1917年。志願して飛行隊に入隊したジャック(チャールズ・バディ・ロジャース)とデヴィッド(リチャード・アーレン)は、厳しい訓練を経て戦闘機のパイロットとなり、フランス戦線へ出征した。一方、ジャックに恋心を抱くメアリー(クララ・ボウ)は、物資を運ぶ婦人自動車部隊の設立を知り、隊員へ志願する。やがて実機へ搭乗したジャックとデヴィッドは、敵機による攻撃に遭いながらも実戦を重ね、次々に戦果を挙げていく。ある日、翼を並べて出撃した2人だが、デヴィッドは帰還しなかった。翌日、ジャックは親友への復讐の念に燃えて飛び立った。実はデヴィッドは撃墜されて深手を負っていたが、敵機を奪って帰還を図るのだ。ところが、ジャックはそれを敵機と見誤って攻撃してしまうのだが...。

アメリカ空軍の全面的なバックアップによって製作されたこの戦争叙事詩は、迫真的な空中戦シーンの連続に目を見張る。
それもそのはず、監督のウィリアム・A・ウェルマンをはじめ、撮影のハリー・ペリー、原作のジョン・モンク・サウンダースは、この第一次大戦で実戦を体験したパイロットでもあった。

戦闘機のスピード感を出すため、流れ雲を効果的に使うというテクニックは画期的であったし、20数台ものカメラを駆使して捉えられた空中戦闘シーンは、当時の状況を考えれば見事というほかない。
 

ジャック役のチャールズ・バディ・ロジャース(1904 ~ 1999)

デヴィッド役のリチャード・アーレン(1899 ~ 1976)

両者はともに、当時のパラマウント社が誇る若手二枚目スター。

そして、

ジャックの恋人役として、後にセックス・シンボルと謳われたクララ・ボウ(1905 ~ 1965)。

彼女は極度に貧しい少女時代を送る。17歳の時、美人コンテストに優勝したことをきっかけに、スクリーン・テストを受けて多数の作品に小さな役で出演。やがて、20年代のモダン・ガール ‘フラッバー役’ にひとつのタイプを生み出す。27年「あれ」が大ヒットし、独特のメーキャップは娘たちの流行となった。クララ・ボウの名は確かに映画史に刻み込まれている。

 

 

ところで、第1回のアカデミー賞の対象作品の公開期間は、

1927年8月1日~1928年7月31日までの1年間であった。

ロサンゼルス地域の商業劇場で、1週間以上公開上映された作品である。

そして作品賞にノミネートされたのが、「最後の命令」(ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督)、「肉体の道」(ビクター・フレミング監督)、「裏切者」(ルイス・マイルストーン監督)、

第七天国」(フランク・ボーゼージ監督)、本作「つばさ」の5作品で、すべてサイレント映画

 

因みに、男優賞は「最後の命令」、「肉体の道」に出演したエミール・ヤニングス

女優賞は「第七天国」に出演したジャネット・ゲイナー

当時は「主演」と「助演」の区別はなく、助演男優賞、助演女優賞が登場するのは1936年の第9回からである。

 

授賞式はハリウッド、ブール・バードの「ルーズベルト・ホテル」で、4分22秒で終わったという。集まった約200人の映画人たちの主目的は、晩餐会の料理にあったのかもしれない。

実は3か月前にアカデミー会報に受賞者名が掲載されており、誰が受賞するのかといったサスペンス性の期待は皆無だったのであろう。

 

今年は第97回を数えたアカデミー賞

作品賞は「アノーラ」が受賞した。

果たして、映画ファンを虜にするアカデミー賞は、今後、どのような形に発展(或いは衰退)していくのだろうか。

 

 

 

 

 

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3 件の返信 (新着順)
かずぽん
2025/04/05 12:06

洋画さん。
早速、本作をレンタル。途中、空中戦の映像に見入ってしまい、字幕を追うのを忘れてしまって、時々巻き戻して観ました。
パリでの休暇のシーン。シャンパンの泡がシャボン玉のようになって、それに夢中になるジャックの様子がコミカルに描かれていて、唯一の息抜きのシーンでしたね。
空中戦の様子は迫力があり、画面にくぎ付けになりました。
洋画さんのご説明のとおり、第一次世界大戦で実戦を体験した方たちが揃って原案・監督・撮影に臨んでいたのですから、このような見事な出来栄えになったのでしょうね。
本作をご紹介いただき有難うございました!
有名になる前のゲーリー・クーパーにも出会えて嬉しかったです。


趣味は洋画
2025/04/06 21:34

ご覧になられたのですね。
戦争映画、空中戦、かずぽんさんに受け入れていただけるかどうか、ちょっと不安でした。
でも楽しんでいただけたようで良かったです。

ゲーリー・クーパー、出てましたね。
特徴的な顔立ちなので、ボクもすぐ分かりました。

アカデミー賞受賞作品は、もっと取り上げたい作品が目白押しなのですが、
投稿は1カテゴリーに1作品のみなので、その点が残念です。
ではまたレビュー広場で...。

かずぽん
2025/03/30 10:15

洋画さん、おはようございます。

洋画さんならではの記事だと思いました。洋画さんが丁寧に詳細に書き込んでいらっしゃる「映画リスト」の力が充分に発揮されているのでしょうね。
100年近く前の作品を観られるなんて、しかも「第1回アカデミー賞作品賞受賞作品」と聞いては、好奇心が大いに刺激されますね。
ディスカスさんでレンタル出来るのも嬉しいです。
ご紹介ありがとうございます。


趣味は洋画
2025/03/30 22:22

かずぽんさん、コメントありがとうございます。

ご指摘のように、鑑賞時における感想や、データ蓄積が役に立っております。
「歴代アカデミー賞受賞作品」が、3月のお題のひとつになっていましたので、
それなら第1回作品賞受賞作を書こうと、素直に思いました。

もし気が向かれたらご覧いただき、レビュー広場でまた感想をお聞かせいただければと思います。
楽しみにお待ちしております。

飛べない魔女
2025/03/29 10:35

とても興味深い記事を有難うございます!
なんと!こちらが栄えある第1回アカデミー賞作品賞受賞作品なのですね。
観てみます!


趣味は洋画
2025/03/29 22:51

コメントありがとうございます。

奇しくもチャールズ・リンドバーグが、ニューヨーク ~ パリ間の大西洋単独無着陸飛行に初めて成功したのが、本作前年の1927年でした。
「つばさ」のオスカー受賞は、いわゆる「にわか航空機人気」の影響も多分にあったと察します。

古い作品ですが、魔女さんは古い作品もお好きなこと、よく承知しておりますので。
ご感想を楽しみにしております。