公開まで5年掛かった問題作品
実話に基づく作品好きさん、集まれ!
監督:アレハンドロ・モンテベルデ
主演:ジム・カヴィーゼル
制作総指揮:メル・ギブソン
世界の深刻問題【人身売買】
ただ、扱っている内容はかなりショッキングです。それは、人身売買。しかも、小さな子供を誘拐してきて、小児性愛者(ペド)の相手をさせたり奴隷として扱っているのです。
冒頭、実際の防犯カメラに映る誘拐される瞬間の映像は、やはり衝撃的で動揺します。あんなに大胆に連れ去るの?日本ならあそこまで出来ない治安の良さですが、この犯罪がまかり通るのは、貧困国(今回はホンジュラス)ならではかと。
手口は簡単。歌手やモデルを夢見る子供に近付く、ニセエージェント。事務所やオーディション用に写真を撮るので街まで出てこいと誘う。子供の為を思い、預けて約束の時間へ行くと、もうそこはもぬけの殻。後の祭りである。南米の子供達は、その子供の需要のあるアメリカへ物のようにコンテナに詰められて北上します。
そのほとんどが、まずはコロンビアへ。ティム・バラード(ジム・カヴィーゼル)は、子供を買うペド(小児性愛者)を捕まえてきても、イタチごっこな現実に嫌気が差していました。そして、ある運命的な救出劇から子供達を救い出す事を目的に単独で動き始めるのです。そんな時、出逢った元カルテル会計士バンピロ(ビル・キャンプ)と協力し、CIAの後ろ盾を失っても子供達を救う決心をするのです。
ティム自身も子供が沢山いるお父さん。もしも自分の娘を誘拐されたら?を念頭にイカれたグリンゴ(アメリカ人)と言われても突き進みます。そして、とうとう汚い金持ちの為に用意した、児童買春島に誘き寄せる為の島で、子供達と悪者一網打尽作戦が始まります。ここの部分は、Netflixドキュメンタリー『ジェフリー・エプスタイン』で描かれたものに通じている気がします。事実、こんな事って金持ちなら出来るんだというおぞましさ。
時には自らもペドと偽り相手を油断させ、潜入捜査としてのスリルを描いており、エンタメと事実の衝撃さの塩梅が良かった。
モデルのティム・バラードについて
そこに映画では触れられていないが、これはドキュメンタリー作品ではない。私は例えティムに問題があっても、実際に沢山の子供を救い出した事実には変わりがないし、そもそもティムがモデルなので、ヒーロー扱いされているのも当たり前だ。ユダヤ人をナチスから救った人達だって、同じように描かれてきた。それより何より、この作品が5年も公開できなかった事実や、児童買春や人身売買が1500億円(日本円で21兆円!)ビジネスとして成り立ち、その数は奴隷時代よりも多いと言う現実を教えてくれた事に重大なメッセージがある。
そして、その事を広く知らせるのは、制作総指揮のメルギブソンでもなく、演じたジムカヴィーゼルでもない、この作品を観た人達だと。
ジム本人による、濃い演出ビシバシのエンドロールで、私はすっかり言いなりです。それでも、醒める事も引く事もなく、この現実は多くの人に観て興味を持って欲しい。そこは素直に感じた社会性メッセージ最強映画です!