2011年からおよそ12年の現代日本の空気感をたっぷりと染み込ませた178分の岩井俊二監督の集大成的作品『キリエのうた』
※比較的最近レンタルスタートした作品をピックアップ。2024年5月29日レンタルスタート。
■キリエのうた
《作品データ》
『Love Letter』『リリイシュシュのすべて』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などで知られる岩井俊二監督の最新作! 元BiSHの歌手・アイナ・ジ・エンドが映画初主演を務める。東京にやってきた、歌うとき以外上手く声が出せない少女・キリエは、路上で歌っていたところイッコという女性に話しかけられる。最初は気付かなかったが、彼女はキリエの高校時代の先輩で友人の真緒里だった。イッコはキリエのマネージャーになるが、そこから2人の出会いにまでにあった過去の悲劇、ある男性の物語が明らかになっていく。
共演に、広瀬すず、黒木華、松村北斗、村上虹郎ら。
・丸の内TOEI他全国ロードショー中!
・配給:東映
・公式HP: https://kyrie-movie.com/
〈『キリエのうた』レビュー〉
古くは『スワロウテイル』や『リリィシュシュのすべて』、わりと最近では『リップヴァンウィンクルの花嫁』などで映像美と音楽の中で重い内容のドラマを展開する作品を次々と世に送り出した岩井俊二監督の最新作『キリエのうた』。タイトルや予告編から何やら少女と音楽を中心とした青春映画にも見えたが、そこはやはり岩井俊二監督作品。メインキャスト2人の過去12年間を巧みに散りばめた構成と、岩井俊二監督作品特有の重い内容、そして2011年からおよそ12年の現代日本の空気感をたっぷりと染み込ませた178分であり、また岩井俊二監督の集大成的な作品にも仕上がり、
岩井俊二の世界観を存分に堪能出来る。
あるトラウマから日常会話での発声が困難で唯一発声可能な「歌うこと」に全てをかけた少女キリエと、キリエの高校時代の友人でキリエのマネジャーとなるイッコ。主にこの二人の2023年の現在進行の話と過去12年を見て行く展開。時系列順のストーリーではないので通常時間軸のストレートな展開の作品ではないが、日常会話の声が出にくい少女と派手で奇抜なファッションセンスで職業不詳な少女の謎というか、そこに行き着く12年間をセリフではなく映像で表現し丁寧に描いている。映画を見ているうちに主人公キリエの謎が分かる仕組みになっていて、そこにイッコとの少女の友情や音楽との関わりを絡ませ、少女自身のミステリーと青春ヒューマンドラマの融合が絶妙な仕上がりになっている。
さらにこの二人のドラマに東日本大震災やコロナ禍といった現実の災害や厄災もしっかりと挿入。特に東日本大震災のパートはかなりがっつりと入れており、あまりのリアルさに当時被災した方にはトラウマを呼び起こしかねないぐらいだが、そのくらいしっかりと描いている。根幹の題材としては瀬々敬久監督の『護られなかった者たちへ』に近くはあるが、この題材を『花とアリス』や『リップヴァンウィンクルの花嫁』の岩井俊二監督が手掛けたらこうなるという作品でもある。
本作も音楽をサザン・オールスターズやMr.Childrenを手掛けた小林武史が担当。キリエが歌うオリジナルの曲や、イッコが幼少時代に過ごした母親が営むカラオケスナックで歌われる歌謡曲のチョイスの絶妙さなど、小林武史らしさを随所で味わえる。それに加えて、中盤以降のキリエの身の回りで起こる音楽業界の方々の動き・展開やストリートミュージシャンの活動なども小林武史が絡んだ作品らしさが伺える。
途中まではずっしり大容量な青春ヒューマンドラマ作品かなと思いきや後半にしっかりとキナ臭さい空気のシーンが多くなり、単なるエエ話で終わらせない。そこがまた岩井俊二監督らしく、最後の最後まで堪能。どう行き着くかわからないスクリューボールのような展開はある意味『リップヴァンウィンクルの花嫁』に近いが、過去・現在のエピソードを貼り絵のように行き来する手法はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『21グラム』にも匹敵する展開で、
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投稿を表示ほぼほぼ3時間の尺で、2000年代から現代の近年の日本史にも触れる重厚な内容なので、余裕がある時に見るといいかと思います。
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投稿を表示こちらまだ未鑑賞ですが、公開中にパンフレットは購入済みです😅
早く観なきゃ😊