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2024/03/30 21:22

WE CAN DO IT! 落ち込んだ時、気落ちした時、必ず見て・爆笑し・感涙して・気分スッキリモチベUPになる映画 『プロデューサーズ』

皆さんこんにちは!

椿ですっ!!

なんだか、久々の投稿だわっ💗

さて、今回ご紹介したい映画なんですが、

いつか、いつか、大々的にご紹介したかった作品なんです。私がとっても大切にしている映画。
それだけに?いや、何故か書こうというモチベーションが上がらない不思議な現象に見舞われておりました。そんな折、今月のコラムテーマが『モチベUP映画』!!ということで、これこそぴったりのテーマがあろうか!!と、早々と、書こう!書くぞ!!と思っていたのですが・・・

気が付いてみればもう3月も終わり・・・。

あちゃ~っ

その間、ずっと書きたい気持ちは持ち続けていたのですが、う~ん、この、自分にとってとっても大切な映画を、また例のごとくヘタクソな長文のコラムで、この映画の楽しさを、読んでくださった方に一ミリも伝わらなかったらどないしょう・・という不安が付きまとい、パソコンの前に座るものの一向に筆が、いや、キーボードが進みませんでした・・。

でも、もう、3月は終わってしまう!
そんなこんなで、頑張って、書くことにしましたっ

 

さぁ、前置きが長くなりましたが(この前置きがいらないじゃん、というツッコミは無しにね💛)椿がとっても大切にしている映画、、そ・れ・は・・・

 

『プロデューサーズ(2005)』

 

トニー賞史上最多受賞

 

この映画は、アカデミー賞、グラミー賞、エミー賞と並ぶ「アメリカ4大エンタメ賞」である、優秀な舞台作品に贈られる賞「トニー賞」を受賞した2001年のミュージカル『プロデューサーズ』の映画化です。
このミュージカル、トニー賞史上最多12部門を受賞。この年のミュージカルの話題を総ナメした作品なのです。(トニー賞でミュージカルが受賞できる賞は全部で13部門。いかに本作が凄いかをご理解いただけるかと思います。)

 

ミュージカルの原作は、アメリカコメディ界、というかエンタメ界の巨匠、メル・ブルックス。私が最も敬愛する映画人であります。彼自身はコメディ映画の制作・監督・脚本・出演・歌部分の作詞作曲など、チャップリン並にマルチに映画製作をこなします。

偉大なチャップリンと違うのは、ブルックスの作品は。ほぼ「お下品」「くっだらない」作品であること。
なのに、何故アメリカで人気であり、映画人たちに尊敬されるのか?
それは、彼の作品は、ほとんどが過去の映画作品や舞台作品のパロディ作品であり、そのパロディには過去作やアメリカエンタメの愛情とリスペクトに溢れているから。


はっ!!( ゚д゚)ハッ!


やば、このままメル様のことを書いていたら、いつも長い文が余計に長くなる・・・
そんなわけで、もし、メル様に興味をお持ちいただけたら、私の過去の拙文

【まいふぇいばりっとぱーそん①】アメリカエンタメ界の偉人 メル・ブルックス

 

をご一読いただけますと幸いです。

 

68年映画のリメイク

 

このミュージカルは、メル・ブルックスが初めて映画監督に乗り出した作品『ザ・プロデューサーズ』が原作となります。ブルックスは、脚本も執筆しており、いきなり本作でアカデミー脚本賞を受賞します。名コメディアン、ゼロ・モステルと、後にブルックスとのコンビで名を挙げる名優ジーン・ワイルダーのコンビ主演で、奇妙奇天烈にしてこてこての喜劇でかなり面白い作品となっています。アカデミー賞を受賞するような作品にも関わらず、公開当時、アメリカでさえ、かなり直接的な表現でアブナい内容だったため、上映された劇場は少なかったそうです。また、日本では劇場未公開。2000年になってようやく上映されました。

【あらすじ】

かつてはブロードウェイの大プロデューサーで、今は落ちぶれたマックスと、プロデューサーになりたい夢を持っていたしがない会計士レオが手を組み「売れないミュージカル」を作って出資金を懐に入れてしまおうという、出資金詐欺のため、最低の台本、最低の演出家、最低の役者探しに奔走し、「最低のミュージカル」を作る。
ところが、最低のはずのミュージカルが大ヒットをとばしてしまい。。。

 

※次に完全ネタバレの物語説明です。この作品のバカっぽさ加減を知って欲しくて物語をある程度まで細かく書きました。ネタバレダメな方はスルー推奨です。

 

【ものがたり(ネタバレ)】

かつては「キングオブブロードウェイ」とまで呼ばれ、出すミュージカル出すミュージカルが大ヒットを飛ばしていたプロデューサーのマックス・ビアリストック。今や、かつての名声はどこへやら、出すミュージカル出すミュージカルがことごとく大コケ。公演1週間も持たず打ち切り。観客からは大ブーイング。かつての優雅な暮らしぶりとは想像できない貧乏な生活を送っていた。
ある日、マックスの帳簿を整理に、会計士レオ・ブルームがやってくる。彼は非常に生真面目だが、極端に臆病者。また、興奮して気持ちが舞い上がってしまったときには青い毛布(ハンカチーフ)に顔をうずめると落ち着くという、変な性癖の持ち主。
レオはマックスの大ファンで、ミュージカルのプロデューサーになりたかった夢を持っていたが、自分にそんな芸事などできないと、地味な会計士の仕事についていたのだ。
そのレオが帳簿の整理中、妙な事をひらめく。成功するミュージカルより、失敗作のミュージカルの方が、時には儲かるということ。新作ミュージカルの出資金を集め、実際は安い予算で、必ず失敗するミュージカルを作れば、公演は期日を待つことなく打ち切り。出資者には配当を返す必要も無ければ差額をピンハネできるというのだ。いわゆる粉飾決算。万一ミュージカルが大当たりしてしまったら、詐欺がばれ、刑務所行きだが、とにかくハズれたミュージカル作りにかければ、今やマックスの右に出る者はいない!そんなわけで、最低の台本、最低の演出家、最低の出演者を探し、最低のミュージカル製作を一緒にやろう、とマックスはレオをそそのかす。

自分の器ではないと一度は断ったレオだが、ミュージカルのプロデューサーになれるかも!という夢をおって、マックスと行動を共にする。

早速、最低の台本探し。『春の日のヒトラー』という、ヒトラーへのラブレターのような不謹慎な台本を発掘。台本作家フランツのもとへ。ナチの信奉者である彼は、ヒトラーへの忠誠を誓うことを条件に、台本の上演の契約をする。

Kobal/UNIVERSAL/COLUMBIA/The Kobal Collection/WireImage.com

次に最低の演出家探し。危ない演出家として著名なゲイの演出家ロジャーと内縁の助手カルメン・ギアのもとへ。「お堅い戦記ものなど私の趣味じゃない」とかたくなに断るロジャーだったが、「これでトニー賞も夢じゃない!」とマックスが口走ってしまうと、そのトニー賞という言葉に反応し狂喜乱舞したロジャーは演出を承諾。

マックスとレオのもとに、ボッキュッボン!の超絶スタイルのよいウーラという女性が役のオーディションに訪れる。彼女の魅力にデレデレな二人はとりあえず秘書として働かせながら新作のミュージカルへの出演を約束。

マックスはひとり、資金集めに奔走する。彼のタニマチはニューヨーク中の好色バアさんたち。マックスはバアさんたちの求めに応じ、変態的なごっこ遊びをして、代わりに小切手を切らせ集めたるや200万ドル!

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そして、最低の出演者集め。ヒトラー役のオーディションに集まってきた連中はどいつもこいつもひどい奴らばかり。業を煮やしたフランツが、ヒトラー総統はこう演じるのだ!とばかりに歌って踊ると、それがあまりに見事で、フランツがヒトラー役に抜擢されてしまう。

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一方マックスの留守をいいことに、レオとウーラはねんごろの仲に💗

 

さぁ。そして迎えた公演初日。

舞台上の慣習で、初日に「幸運を!」という挨拶は禁句だ!と教わるレオ。では何といえば?と問うレオに「脚を折れ!というのだ」と教える一同。
そこで、楽屋へ向かうフランツに「脚を折れ!」と言ったところ、なんと階段を踏み外し、本当に足の骨を折ってしまう。
慌てた一同は急遽、ヒトラーの代役に演出家ロジャーを立てる。

 

波乱の中、舞台は幕を開ける。満場の会場。幕が開くと、いきなりナチの服装を決めた役者たちが歌って踊り、ナチを賛美する。常識人の観客たちは怒り狂いどんどん席を立ってしまう。

シメシメ顔なマックスとレオは祝杯をあげるため、会場を去る。

ところが会場では予想だにしない展開が待ち受けていた。ロジャー演じるナヨナヨしたゲイ丸出しのヒトラーが満場の笑いを誘い、ナチとヒトラーへの痛烈なパロディと勘違いした観客たちに大受け。おかげでミュージカルは大成功してしまう。

 

完璧な計画で最低のミュージカルを作ったはずだったマックスとレオ。それが思いもかけぬ大ヒットとなってしまったため、刑務所行きを恐れるあまり二人は大げんか。そこへ、ヒトラーを侮辱された!と拳銃をぶっ放しながら怒り現れるフランツ。ドタバタの最中、警察がやってきて、偶然、粉飾決算の帳簿が見つかってしまい、マックスは逮捕。レオはウーラと200万ドルをもって高跳びしてしまう。友の裏切りにあい、失意のマックス。

そしてマックスの裁判の日、陪審員が有罪を告げようとする中、レオが現れ、「彼のお陰で、僕は助けられた」と情状酌量を訴える。マックスとレオはお互いの友情を讃えあう。と、それに心打たれた裁判長は、マックスとレオを仲良く刑務所送りにする

二人(と、拳銃をぶっ放したフランツ)は仲良く刑務所でミュージカルづくりに励む。囚人たちにミュージカルを教え、彼らを更生させたことに免じ3人は釈放される。

こうして、名実ともにプロデューサーとなったマックスとレオは共同で大ヒットミュージカルを作ってゆくのだった・・。

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夢と希望と友情と 「好き」にひたむきになる

 

私が本作を見て共感と、羨望と、喜びと、勇気と、元気を与えてもらっているのは、本作が「夢・希望・友情」を描き、どんなに腐っても「好き」になることにひたむきになる人々を極めて優しい心持ちで描写されているところにあります。

 

マックスはエンタメ界の厳しい波を乗り越えてきた人物。かつて大成功を収めながら、今は辛酸をなめてばかり。かつての成功がそうさせたのか、彼には「名声」に寄りつく人々はいても、彼の事を理解してくれる「友」はいない。そして、数々の失敗作で名声は地に落ち、彼の周りからは人が去り、彼自身も人間不信になって、大切なのは「金」な、人間に。
でも、そんな失敗作を連発してもなお、「ミュージカルをプロデュース」することに拘る。単純に、かつての名声にしがみついているのではなく、ミュージカルへと突き動かす「好き」がそこには存在しています。

一方のレオは、そんなマックスがかつてプロデュースしたミュージカルの大ファンで、一度はミュージカルのプロデューサーになりたい、という夢を抱いている。しかし、自分には才能はないし、だいいち気が弱い自分は人と関わるのも苦手。で、結局、しがない会計士として社会の歯車に。ひょんなことで叶えられるかもしれない「夢」へ向かってマックスと歩む。そこで、様々な人物や困難と出会い、「ミュージカルづくり」に関わってゆくことで、自身がどんどん魅力的な人間へと成長してゆき、会計士な自分だったら絶対叶わぬことだっただろう、絶世の美女との愛をはぐくむこともできた。でも、彼にとって最も大切なのは、マックスという「真の友」ができたこと。自分を初めて「レオ」と名前で呼んでくれて、自分を必要としてくれた人。その思いがひし、と伝わってくるのです。

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フランツはゆがんだナチス愛をもっていますが、きっと「第三帝国万歳!」みたいなこてこてのナチではなくて、彼らのやってきた「悪」の面はほとんど知らなくて、ナチは楽しい歌と踊りと喜びを与えてくれたもので、ヒトラーは愛すべき存在と信じ込んでいたのではないでしょうか。だから、彼がナチを語るとき、自分の大好きな「歌」「踊り」に昇華してしまう。

 

そして、最低の演出家ロジャーは自分がいかにダメな演出家と評されていようと一切顧みず、自分が楽しいと思うミュージカルを作り続ける。でも、いつかは本格的な舞台を作りたい、と思っていて、夢見るは「トニー賞」の受賞。でも、いつも、自信のない自分がどこかに居て、それが邪魔をして一歩を踏み出せないでいる。そんな男を鼓舞するのが内縁の助手カルメン・ギア。でもカルメンもどこかちょっと抜けていて・・・。

そんな連中が集まって作るミュージカルが『春の日のヒトラー』。この一本のミュージカルにかける思いはそれぞれ違う。マックスとレオは大失敗する最低の作品を、フランツはヒトラーの再評価を、ロジャーは、目指せトニー賞!

それぞれの思惑は違いながら、「ミュージカルが好き!」その一点が彼らを突き動かして、「最低の」舞台が「最高の」舞台に変わってゆく様。ミュージカルにかける思いと、その間彼らが培ってきた「信頼」や「友情」が加味されて、大ヒットの舞台が出来上がる。

 

言ってみれば、世間の「負け組」である彼らが「好き」にひたむきになり、素晴らしい舞台と、「夢」「希望」を叶え、真の「友情」を作りあげ、未来への「成功」をつかみ取る。

 

私みたいな「負け組」の人生を歩んできた者にとって、本当に心強く語りかけてくれる作品なのです。

 

 

「笑い」と「優しさ」あふれるミュージカルナンバー

 

古き良き時代のアメリカエンタメで育ってきたメル・ブルックス作詞・作曲によるミュージカルナンバーの数々は、とてもなじみやすいメロディであり、一度聞けばなんとなく口ずさめるような親しみのある音楽ばかり。そして、歌詞も気持ちを鼓舞してくれそうな詞や、友情を讃えるもの、時にブルックスらしく、エッチぃなものもあったりします。

ブルックスが目指したものは、かつてのミュージカルにあった「歌あり・踊りあり・笑いあり」の、誰もが見ていて幸せになる舞台。2000年以降の、ネット社会の進歩による価値観の崩壊、開く貧富の差や社会分断、世知辛くなってゆく世の中に、「もう一度、アメリカンドリームを描けた、あの頃にもどってみないか?」「どんな弱い人間も、「負け組」も、マイノリティも、夢を抱こう!」というくさびを、ブルックスは打ち込んだのではないでしょうか。
そんなブルックスの想いが、当時観客に響き、ミュージカルの大ヒットとトニー賞12部門受賞という、史上最高の栄誉を本作にもたらしたのではないかと思います。

もしよければ、代表的なナンバーを聞いてみてください

 

1 WE CAN DO IT!

 なんか、時のアメリカ大統領の決め台詞のようですが、まさに本作のメインテーマをストレートに歌詞にした曲。最低の舞台の方が成功した舞台より設けることができる。というレオの仮説を聞いたマックスが「手を組もう!」とレオを口説くときの曲。「そんなのできない」と気乗りしないレオに「俺たちならできる!」とマックスが鼓舞します。
 

2 I WANNA BE A  PRODUCER

マックスの誘いを断り、会計事務所に戻り自分の仕事をするものの、プロデューサーになりたいという夢が妄想を誘い、ミュージカルの華々しい舞台、真珠の衣装を着た美女たちに囲まれて歌い踊る夢を見る。そんな場面です。重苦しい会計事務所がいきなり華やかな舞台へ転換する場面は本当に夢の世界です。

 

3 KEEP IT GAY

劇中、最もカオスなナンバー。ロジャー宅を訪れたマックスとレオに、彼のスタッフ(全員ゲイ)がご挨拶。乗り気でないロジャーに「トニー賞を!」と言ったとたんロジャーの目の色が変わり、あとはもう、カオス・・・。

 

4 WHEN YOU GOT IT, FLAUNT IT

本作紅一点のメインキャラ、ウーラの歌。「あたしのお宝見せちゃうわっ」と腰におっぱ×にユラユラ揺らしながら歌う歌。メル・ブルックスのお下品お笑いの本領発揮?
大好きなユマ・サーマン様の歌です。

 

5 SPRINGTIME FOR HITLLER

劇中のミュージカル『春の日のヒトラー』で流れるミュージカルナンバー。この曲は旧作の68年『プロデューサーズ』でもミュージカルシーンで使われた曲で、素晴らしいメロディです。68年の映画の時以来、アメリカでは有名なミュージカルナンバーとされています。

 

6 TILL HIM

裁判にかけられたマックスのもとに逃げたはずのレオが戻り、彼は僕の大切な友と訴えます。そして、マックスも彼こそ最高の友だと二人が互いを必要としていることを歌い上げる、優しく、感動的な歌です。

 

ミュージカルの舞台を再現『春の日のヒトラー』

 

劇中劇として上演される『春の日のヒトラー』
この舞台、ホントすごいのです。私、一度だけ本場での舞台をみたことがありますが、感動のあまりしびれてしまい、涙が止まりませんでした。とりわけ、この『春の日のヒトラー』場面は華々しい舞台で、ナチのメイン突撃隊員の歌、そして隊員たちのタップダンス。裸まがいのドレスに、ドイツを象徴するビールやらウィンナーやら、プレッツェルの冠をのっけた女性たちの登場。そしてなよなよヒトラーの一節のあと、突撃隊員たちが現れ、ハーゲンクロイツ(鉤十字)のマスゲーム。これが巨大な鏡が後方に設置されていてこの鏡が持ち上がると、きれいなマスゲームが浮かび上がるという仕掛け。
この舞台で驚いた劇中劇を、映画の中で完全再現。「ヒトラー賛美」な舞台でなければ、普通、成功してるだろ、この舞台、と思うような素晴らしい舞台シーンです。

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不謹慎にもほどがある

 

白状します!この映画は非常に不謹慎な作品であります。
正直いって、今現在のアメリカエンタメ界の状況でこのミュージカルが上演されたなら、トニー賞12部門の快挙は無しえなかったと思います、
それは、今、アメリカエンタメ界を蹂躙している、「ポリコレ旋風」という悪しき慣例によるものです。

本作では、ゲイの演出家チームが出てきて、かなりカオスな場面を作り上げています。ナヨナヨした動きでちょっとキモく、そして大きなアソコとか、性的表現を強調してステレオタイプなオカマ達として登場するし、プロデューサーになって美女をはべらせて、踊り子のお尻を叩いて「いやん!」「Yes!」などと言わせる。ウーラが「私のお宝見せちゃうわ!」なんて歌わせて、腰や胸を強調した踊りを躍らせたり・・。まるで、プロデューサーが、ブロードウェイで活躍したければ、俺の女になれ、とでも言わんばかりの印象を受けるかもしれません。
今のアメリカエンタメ界、とりわけハリウッドでは、こういう表現はご法度。
本作が発表されたのが、現代ではなく20年前であったことは幸いですが、「ポリコレ」を訴えてこうした表現を、作品の理解も無く、のべつまくなしに切って捨てるというのは映画芸術にとっては百害あって一利なし、と感じます。人種、性別といった点でマイノリティにあたる人々にも、才能が有れば分け隔てなく、適材適所に採用することがポリコレ大作であるのに、今はびこるポリコレ熱は、批判を避けて、「対策してますよ」という形だけを示すために、「とにかくマイノリティ対策をちゃんとやってますよ」とうやってやってる感が丸出しなのです。それによる「表現狩り」が横行しているのでは?そう思うのです。(飽くまで椿の考えです)

『プロデューサーズ』は時代考証なども含めて、性的な表現、性的マイノリティに対する表現等、すべてが必要不可欠なものです。「美女たちをはべらせる」のも「お宝みせちゃうわ」も、ナヨナヨなゲイたちの表現も、すべて作品に必要なものであり、その表現が作品を大きく動かし、展開させ、物語を進展させる。重要なファクターであるのです。ブルックス作品には、こういう、女性やマイノリティが物語づくりに重要な役として登場します。弱い立場は弱い立場の人間として、でも力強く根を張って生きている姿を表現させるのです。
それは、ブルックス自身がユダヤ人としてヒトラーやナチスを笑い飛ばす対象とすることで、弱い立場だった人間が理不尽さに立ち向かう姿を暗に描いているのと同様、マイノリティという立場の人を活躍させることで、人間の生きる力強さを表現しているにほかなりません。


そういう意味では、表層的にとらえれば、現状のハリウッドに代表される「ポリコレ」の行動を強く支持される方にとっては、本作はちょっとオススメできないかもしれません。

 

 

ミュージカル賢者たちの競演

 

本作の監督は、舞台版の演出・振付をおこなったスーザン・ストローマンが担当。ストローマンはブロードウェイで数々のミュージカルの振付を担当し、成功に導いた人物。演出にも乗り出しますが、そちらではあまり代表的な作品に巡りあえていませんでしたが、メル・ブルックスにより抜擢された『プロデューサーズ』で歴史にのこる快挙を成し遂げます。そして、本作で映画を初監督。舞台をそのまま映画に持ち込んだような演出に賛否はありますが、目指したのが、昔のミュージカル映画であることを考えれば、至極まっとうな演出であり、その華やかさには何物にも代えがたいものがあります。また、毒があり、下品なメル様の作品を、華やかで楽しい作品に昇華させ、その毒を薄めて大衆化に成功したのも、ストローマンの功績といえるでしょう。

マックスとレオはミュージカルのオリジナルキャストでもある、ネイサン・レインマシュー・ブロデリック。ネイサン・レインは、舞台やミュージカルでも活躍。『マウスハント』『バードケージ』と言った作品でコメディアンとしても優秀さを見せつける演技派。最近では久々に『ボーはおそれている』に出演してました。これのセリフ回し、歌まわしは非常に巧みでその確かな演技力に舌を巻きます。
マシュー・ブロデリックは、椿オッサン世代の青春スターで、『ウォーゲーム』の頃の初々しい彼が脳裏に焼き付いていたので、うだつの上がらない中年おじさんのレオでの彼には、「あーっ、誰でも年を取るんだなぁ」なんて思ってしまいましたが、カッコわるかわいい踊りとキャラでとてもよいです。背の高いダンサーたちと並ぶとそこがまた(笑)

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ウーラは僕らの『キル・ビル』ユマ・サーマン!正直言っちゃうと、本作でのウーラはあまりストーリーには絡んでこないのですが、魅力的な歌と、役柄を超えて、作品に印象を残せる役、という意味では女優心をそそられるようです。本作でのユマは美しく、ちょっと天然なのをとても楽しそうに演じています。ユマがミュージカルで歌うというのがちょっと意外なのか、この映画を人にお勧めするときに「ユマ・サーマンが歌ってる」ということに結構興味持たれます。
ちなみに、当初、ウーラ役はニコール・キッドマンが配されていましたが、他作品とのスケジュールの関係で、ミュージカルナンバーや踊りを覚えている時間がないということで降板。ニコール・キッドマンのウーラも見てみたかったぁ

 

そして、フランツには名コメディアン、ウィル・フェレル。歌も演技も素晴らしい、コメディアンの面目躍如といった感じ。ドイツなまりの英語を駆使して、登場シーンは多くない者の縦横無尽に暴れまわります。ちなみに、この役をロビン・ウィリアムスがやりたがって、主役で友人のネイサン・レインにコンタクトをとっていました。

ロジャーとカルメン・ギアはこちらもミュージカルのオリジナルキャスト。ゲイリー・ビーチロジャー・バート。ゲイリー・ビーチはブロードウェイで活躍するミュージカル俳優で『アニー』『美女と野獣(ルミエール)』『レ・ミゼラブル』といった錚々たる作品に出演。本作でトニー賞助演男優賞。カルメン役のロジャー・バートは一度見たら忘れられない顔を本作ではしていますが、テレビ、映画、舞台とマルチに活躍する役者。映画では『ホステル2』『アメリカン・ギャングスター』等に出演。

 

こんな彼らが本作を見事に作っています。


批判はあるよ!でも面白いんだよっ!!

 

大切な事なので、声を大にして言いましたっ
いや、まじで面白いので、だまされたと思ってみていただきたいのです。

確かに、ミュージカル史に多大なる足跡を残すほどには、映画では成功したとは言えません。また、日本では『レミゼラブル』『キャッツ』『オペラ座の怪人』『シカゴ』といった、ミュージカルそのものを知らなくても名前くらいは知っているという作品のように有名でもロングランされてもいません。
そして、「ミュージカル映画が苦手」という方にとってみれば、ミュージカルの舞台をそのまま映画として作ってしまったような作りには、正直ついてゆけない、といった批判もあります。例えば、役者の演技が大袈裟である、とか、舞台のものを映画用にサイズを変えないで作ってしまった、古臭い、といったようなものを目にします。
でも、その批判を目にして「じゃぁ見ないっ」っていうのは本当にもったいない。映画なんて本作に限らず、誰がどう批判しようと、世間一般に作品が認められていなくても、自分にはひっかかる何かを見つけることができるかもしれない。自分だけの宝物の映画が、世間一般には埋もれてしまった作品がある、ということは、普通にありますよね。
この『プロデューサーズ』は、そんな小さな宝石があちこちに散りばめられている映画です。全体としては引っかからなくても、素敵なナンバーや面白いシーン、胸を熱くするようなセリフ、そんなものがあちらこちらで輝いています。
きっと、見てくださったあなたにも、なにか、心に響く宝石がみつかることでしょう。

またまた、あまり意味のない長文コラムになってしまいましたが、
本当に素晴らしい作品なので、本作をごらんいただき、見ていただいたあなたの心に残って、気落ちした時、モチベが下がった時に、見ると元気になるような作品として、認識されるような映画となること、切に望みます

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2 件の返信 (新着順)
はじめ バッジ画像
2024/04/01 23:28

曲紹介のYOUTUBEが全部同じ画像なのが笑いました😂
一瞬同じ曲載せているのかと思って、二度見しましたよ(笑)


椿五十郎 バッジ画像
2024/04/03 19:35

すみません!
プロデューサーズ楽曲のプレイリストみたいなものからの引用なので同じジャケットみたいです(笑)
あっ、実は白状しちゃうと、最初掲載したとき、紹介したのと違う曲を添付していました(;^_^A
気が付いて直しました・・。
同じ図柄だから間違えましたっ(笑)

そぜシネマ
2024/03/30 22:07

すごい👏。
私椿さんのコラムを通じた熱量の循環、大好きです😍。プロデューサーズ、見てみますね🎬


椿五十郎 バッジ画像
2024/03/31 09:13

そぜさん!
コメントありがとうございますっ

どうもそぜさんのコラムのように、的確におすすめを、読んだ人が見たくなるような文が書けなくて、そぜさんコラムを拝読する度、自分の文才の無さにガッカリします…

温かいコメントありがとうございます。そして、『プロデューサーズ』見てくださる!との事、本当に嬉しいですっ