アリアだけのイギリスのオムニバス映画 「アリア」
◆はじめに
最近、観てみたいDVD作品が収納されている図書館を利用開始し、鑑賞していないゴダールの作品で、「アリア(Aria)」 (1987)を知った。といっても、同作はイギリスのオムニバス映画であり、ゴダールも1篇の作品の監督として参加している。まさにセリフはなく、アリア(歌)だけで紡がれる。
早速、借りて鑑賞したところ、比較的有名なオペラなどバラエティに富んだ内容で、作品としての芸術性も比較的高く、2回程、鑑賞してみた。
◆「アリア」の構成
「アリア」とはオペラ等の叙情的な独唱を中心とした楽曲をいう。本作では、ヴェルディ、リュリ、コルンゴルト、ラモー、ワーグナー、プッチーニ、ギュスターヴ・シャルパンティエ、レオンカヴァッロの8人の作曲家の10のオペラ・アリアを題材に、当時の10人の監督がそれぞれ短篇映画に演出する。「道化師」を演じたジョン・ハートが、各作品のつなぎを狂言回しとして演じている。フランスオペラは3作もあるが、どれも秀逸な作品だが、「リゴレット」に関しては、おふざけが過ぎ芸術的な価値はあまり高く感じられなかった。
- 「仮面舞踏会(Un ballo in Maschera)」
- 「運命の力(La Virgine degli angeli)」
- 「アルミードとルノー(Armide)」
- 「リゴレット(Rigoletto)」
- 「死の都(Die tote Stadt)」
- 「アバリス(Les Boréades)」
- 「愛の死(Liebestod)」
- 「トゥーランドット(Nessun dorma)」
- 「ルイーズ(Depuis le jour)」
- 「道化師(Pagliacci)」

〈アルミードとルノー〉
リュリが、フィリップ・キノーとともにつくった叙情悲劇「アルミード」(1686年)の現代演出で、300年ぶりの演出となる。ジャン=リュック・ゴダールが監督しているが、ことごとくゴダールらしいエッジが効いていて、見ごたえがある。
時代は現代。スポーツ・センターで身体を鍛えている若者たち。掃除に来た娘は一人の若者に魅せられる。彼は彼女の存在に気づかない。この時、彼女にアルミードと同じ怒りがわき、彼の背にナイフをかざすのだった。

〈アバリス〉
ラモーのフランス・オペラ作品だが、2年前の12月に北とぴあでラモーのオペラ《レ・ボレアード》が上演され、バロック・ダンスの鑑賞を目当てに参ったので興味深い。
監督は「プレタポルテ」のロバート・アルトマン。18世紀には、一般人が料金さえ払えば、動物園を見にいくように精神病院を見学することができる。貴族の気まぐれの楽しみのために、患者たちがオペラに参加させられることもあったのだ。この作品では専ら観客席が対象とされたが、喜劇的な演出が愉快であった。

〈トリスタンとイゾルデ〉
愛の死をテーマにした有名なリヒャルト・ワグナーのオペラを、フランク・ロッダムが監督。出演はブリジット・フォンダほか。ラスヴェガス。まるで昼間のような明るいライトが照らされる一室で若い2人が愛を交わし、心を開く。ピーター・フォンダの娘としては、最初の頃の作品の様だが、この抒情的な有名なオペラ作品自体が、美しい映像でつづられていて感動的。

〈ルイーズ〉
ギュスターヴ・シャルパンティエのアリアを、「カラヴァッジオ」のデレク・ジャーマンが監督。出演はティルダ・スウィントンほか。恐ろしく年をとったレディ(エイミー・ジョンソン)が舞台でカーテン・コールを受ける。今、彼女の脳裏には若かりし頃の自分(ティルダ・スウィントン)の愛の日々が甦ってくる……。最近のかっこよい役を演じる女優のティルダ・スウィントンが美しすぎ、ただただ魅了された。
この曲(Depuis le jour)は、あまりにも美しい曲で、フランス歌曲やアリアを勉強して最初のころに、リハ無しでドキドキしながら歌ったのだが、伴奏ピアニストの力量のお蔭で、ひとまずちゃんと歌えたので安心した。メジャーではない作品だが、この作品が選出されたのが嬉しい。
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