グレン・パウエルの七変化を楽しむクライム・コメディ『ヒットマン』
■ヒットマン
〈作品データ〉
『スクール・オブ・ロック』や『6才のボクが、大人になるまで。』を手掛けたリチャード・リンクレイター監督の最新作で、1990年代に偽の殺し屋として警察に協力したゲイリー・ジョンソンの実話を基にしたクライムコメディ。大学教授のゲイリーは大学で講義を行う傍らで盗聴や盗撮などで警察に捜査の協力をしていたが、ある日、ジャスパーに代わって偽の殺し屋としておとり捜査をやることに。そんな中でゲイリーはマディソンに夫の殺害を依頼されたことがきっかけで恋に落ちる。主人公ゲイリー・ジョンソン役をグレン・パウエルが演じ、他アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオ、レタ、サンジャイ・ラオ、モリー・バーナード、エバン・ホルツマン、グラレン・ブライアント・バンクスが出演。
・9月13日(金)より角川シネマ有楽町他全国ロードショー【PG12】
・上映時間:115分
・配給:KADOKAWA
【スタッフ】
監督・脚本・製作:リチャード・リンクレイター/共同脚本・製作・主演:グレン・パウエル
【キャスト】
グレン・パウエル、アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオ、レタ、サンジャイ・ラオ、モリー・バーナード、エバン・ホルツマン、グラレン・ブライアント・バンクス
原題:Hit Man/製作国:アメリカ/製作年:2023年
公式HP:https://hit-man-movie.jp/
〈『ヒットマン』レビュー〉
『スクール・オブ・ロック』や『6才のボクが、大人になるまで。』、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』などを手掛けながらも個人的には作品の当たり外れが混在するように思いながらも毎作品期待するリチャード・リンクレイター監督の最新作『ヒットマン』。あー、なるほどな刑事ものコメディで、どちらかというとコーエン兄弟がやりそうなクライムコメディかな。
いわゆる、おとり捜査官で、しかも殺害依頼を受ける偽の殺し屋に成りすまして、依頼者を次々と逮捕するという手法で成果をあげるけど、その偽の殺し屋に成りすますグレン・パウエルの七変化を楽しむ映画でもある。ゲイリーを演じるグレン・パウエルが製作と共同脚本まで手掛けているだけあって、最初は気乗りしなかった主人公のゲイリーが徐々に偽の殺し屋になるのにノリノリになる様子は役者を楽しむグレン・パウエルそのものの様にも見える。
ただ、そのおとり捜査からの摘発劇の繰り返しはクライムサスペンスの起承転結の“起”の部分が始まってから直ぐに“結”を見せられているような感じで、コメディとしては悪くないけど殺人劇の盛り上がり所を刈り取られている気がして微妙な気分になる。それを中盤以降に恋愛とようやくクライムサスペンスとしての“承”から先の展開に転がり、捻りも効かせている。
手触りとしてはコーエン兄弟がよくやるボタンの掛け違いのようなクライムコメディに仕上がった作品。グレン・パウエルの七変化とそこそこのクライムコメディを楽しむ、そんな映画である。