懐古 アメリカ映画の1961年
昔の時代を慕い、アメリカ映画を年度別に振り返っている。
前回の「1960年」に続き、今回は「1961年」(昭和36年)の話題作を懐かしむ。
「ウエスト・サイド物語」 監督:ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス
オープニングから息をのむ迫力!
タイトル・デザインの第一人者ソウル・バスによるマンハッタン島の輪郭を模したデザインから、ヘリコプター撮影で捉えられたニューヨークの実景に繋がり、そのまま下町ウエスト・サイドの上空まで下降しながら近づいていく導入部...何と素晴らしい。
一転して地上に降りたカメラは、街頭を軽やかに踊り始める若者たちの群舞を70ミリの大画面に力強く描き出していく。(映像にリズム感のあるジェローム・ロビンスによる振り付け)
これに「トゥナイト」、「クール」といった名曲が絡まり、単なるミュージカル映画の域は完全に超越している。
ニューヨークのスラム街では、イタリア系の若者グループ・ジェット団と、プエルト・リコ系のシャーク団が常に対立している。ジェット団の首領リフ(ラス・タンブリン)の親友トニー(リチャード・ベイマー)は、ダンスパーティでマリア(ナタリー・ウッド)という少女と知合い恋に落ちる。だが、彼女はシャーク団の首領ベルナルド(ジョージ・チャキリス)の妹だった...。
青春の躍動をダイナミックな映像で捉えた、映画史に残る名作。
「ティファニーで朝食を」 監督:ブレイク・エドワーズ
永遠の妖精、オードリー・ヘプバーンがコール・ガールを演じているが、透明感があって生活臭を感じさせない彼女が主演したからこそ、洒落た都会派ラヴ・ストーリーに仕上がっている。
ニューヨーク。高級コールガールのホリー(オードリー・ヘプバーン)は、猫と共に安アパートで自由気ままな生活を送っていた。ある日、彼女の隣室にポール(ジョージ・ペパード)という青年が引っ越してくる。彼は作家と名乗ったが、中年女性(パトリシア・ニール)をパトロンに暮らしていた。やがてホリーとポールの間には奇妙な友情が芽生えるが、そこへホリーの夫が彼女を連れ戻しにやって来る...。
ヘンリー・マンシーニがアカデミー作曲賞・主題歌賞を受賞。
本編中、テーマ曲「ムーン・リヴァー」をオードリーが歌うシーンが忘れられない名場面。
ジョージ・ペパードの都会的なファッション(黒のパンツにグレーのジャケット)も印象的。
「ナバロンの要塞」 監督:J・リー・トンプソン
冒険小説の大家アリステア・マクリーンの原作をもとに、難攻不落の敵要塞へ潜入するツワモノ兵士達の活躍を描いた戦争アクション。
第二次大戦下の1943年。連合軍はケーロス島の南の小島ナバロンにある、ドイツ軍の巨大な大砲を爆破する計画を立てた。実行部隊として選ばれたマロリー大尉(グレゴリー・ペック)ら数人は、絶壁の登頂には成功したが、たちまちゲシュタポに捕らえられる。何とか脱出したマロリーらは再び爆破作業を開始するが、ドイツ軍の警戒は厳しかった...。
そもそも、連合軍は何故ナバロン島の大砲(要塞でもある)を爆破する計画を立てたのか。
それは第二次大戦下のエーゲ海はドイツ軍が制圧しており、ケーロス島にいるイギリス軍2千人が全滅の危機に瀕していたからである。
勇猛果敢な面々が頼もしい。
前述のマロリーは登山家、元ギリシャ軍大佐のスタヴロウ(アンソニー・クイン)、科学者のミラー伍長(デヴィッド・ニーヴン)、ナイフの名人ブラウン無線兵(スタンリー・ベイカー)、そしてナバロン島生まれのパパディモス1等兵(ジェームズ・ダーレン)である。
更にレジスタンス運動に参加しているマリア(イレーネ・パパス)とアンナ(ジア・スカラ)が登場、アクションは一気に緊迫感をみせる。
「ハスラー」 監督:ロバート・ロッセン
強烈な印象を残す、迫力あるビリヤード・シーンをはじめ、プロの勝負師の世界を非情なタッチで描いている。ポール・ニューマンの絶頂期に相応しい演技にも注目。
若きハスラー、エディ・フェルスン(ポール・ニューマン)は、ビリヤードの伝説的名人ミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリースン)に挑戦し、逆転負けしてしまう。酒に溺れたエディは女詩人サラ(パイパー・ローリー)と出会い同棲をはじめるが、悪徳マネージャーのバート(ジョージ・C・スコット)と組んで場末のビリヤード場で荒稼ぎするエディに絶望して、サラは自殺、失意のエディは再度ファッツに挑戦する...
ジョージ・C・スコットの抜け目ない狡猾さ、ジャッキー・グリースンの場数を踏んだプロならではの優雅さ、足の悪い女詩人サラを演じたパイパー・ローリーが夢破れた者としてエディに寄せる一途な愛...彼らは皆、アカデミー主演、助演の各賞にノミネートされる名演技をみせながらも、オスカー獲得はゼロという不運の名作。
<ジョージ・C・スコットはノミネートそのものを拒否している>
尚、後年(1986年)、「ハスラー2」が製作され、主人公エディのその後が語られる。
「噂の二人」 監督:ウィリアム・ワイラー
アメリカの平和な地方都市を舞台に、一人の少女の心ないデマが思わぬ事態に転じていく深刻なドラマ。
名匠ウィリアム・ワイラーの細やかな演出と、二大女優の競演で格調高い作品に仕上がっている。
大学時代からの親友カレン(オードリー・ヘプバーン)とマーサ(シャーリー・マクレーン)は、寄宿制の私立学校を共同経営している。カレンには医師の婚約者ジョー(ジェームズ・ガーナー)がいて、近々結婚を考えていた。そんな折、町の有力者の孫娘メリー(カレン・バルキン)が、学校生活から離れたいばかりに、カレンとマーサが同性愛者だというデマを広め、生徒が全員退校する騒ぎとなるのだが...。
アメリカ演劇界を代表する女流作家リリアン・ヘルマンの処女作「子供たちの時間」の2度目の映画化。集団心理の怖さ、人間の尊厳、信頼の絆の大切さ、学ぶところの多い名画でもある。
オードリー・ヘプバーンは、複雑な心の内を微妙な表情や仕草で演じている。
一方のシャーリー・マクレーンは、内なる情念の炎を垣間見せる演技、対照的なキャスティングの妙にも注目したい。
「エル・シド」 監督:アンソニー・マン
ムーア人の侵略に脅かされるスペインを舞台に、救国の英雄エル・シドの生涯を描くスペクタクル史劇。
若き勇将ロドリーゴ(チャールトン・ヘストン)は、ムーア人の大公たちを助けたことにより、「エル・シド」の称号を与えられたが、王から非難され、それが原因となって恋人シメン(ソフィア・ローレン)の父親を死に至らしめる。シメンは父親の復讐を果たそうとするが、エル・シドの願いを聞き入れて結婚した。だが、王位継承の争いに巻き込まれたエル・シドは、新王アルフォンソ(ジョン・フレイザー)によって追放の身となってしまうのだが...。
本作の最大の見どころは、豪華絢爛たる「中世の美術」を70ミリ大画面の迫力で見せている点。
又、実物大の船を35隻も作ったり、宝石類に多大な費用を投じたりと、プロデューサーであるサミュエル・ブロンストンの大判振る舞いは半端ではない。
しかも、アクション・シーンだけを撮らせたら他の追随を許さない、ヤキマ・カヌートが関わっている。(撮影全体はロバート・クラスカー)。
「中世」を舞台にした作品によく似合う、チャールトン・ヘストン、ソフィア・ローレンの起用も大作としての風格に少なからず影響を与えている。
「ポケット一杯の幸福」 監督:フランク・キャプラ
戦前の名作「一日だけの淑女」(33年)を監督したフランク・キャプラが、映画生活40年を記念し、自身で再映画化した人情ドラマ。
ニューヨーク、禁酒法が解かれた30年代初頭。若くしてキャバレーの経営者となり、今やブロードウェイを縄張りとする実力者となったデイヴ(グレン・フォード)は、自分が殺されもせず、警察に捕らえられることもなく成功出来たのは、老女アニー(ベティ・デイヴィス)から買うリンゴのお陰だと信じていた。 ‘アップル・アニー’ ことアニーにとって、デイヴはリンゴを買ってくれるうえ、チップも弾んでくれる上得意客である。一方、デイヴが見出した美貌のクィーニー(ホープ・ラング)は、キャバレーのダンサーから才気を発揮し、公私ともにデイヴを支えている。ある日、スペインの尼僧学校に預けていたアニーの一人娘ルイーズ(アン・マーグレット)が、ロメロ伯爵(アーサー・オコンネル)の御曹司と婚約し、伯爵一行揃ってアニーに会いに来ることになるのだが...。
ベティ・デイヴィスの老女ぶりと物乞いが強烈、ところが終盤、彼女はあっと驚く貴婦人に大変身。
その落差たるや凄いの一言。
他の出演者では、ピーター・フォーク、ミッキー・ショーネシーといった名優が個性的な演技をみせている。
上記以外にも「ニュールンベルグ裁判」、「草原の輝き」、「アメリカの影」(61年版)、「荒馬と女」といった名作が公開されている。
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投稿を表示こんにちは。1961年は名作ぞろいなのですね。
やはり好きなのは、「ティファニーで朝食を」です!
なんたってコケティッシュな魅力のオードリーが美しい作品でしたよね。
何度でも見たくなる作品です。
「ポケット一杯の幸福」はずっとレンタルリストに入っています(;^_^A
そろそろ見たいです!
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