国宝は国宝級映画?!

映画「国宝」はなぜ当たったのか?
平日、昼間の上映ながら7割ほどの入り。盆明けながらこれだけの入りは興行成績を反映していますな。この作品のビジュアルを見たとき、ビューイングスタイルの歌舞伎の上映かと思ってましたが、劇映画でした。勢いは「南極物語」を突破して、実写邦画2位は間違いないでしょう。
現在一位「南極物語」は学研のおばちゃんがチケットばらまいたり、フジテレビが系列、代理店の押し付けたりの団体動員があったのですが、本作は正味の観客動員力!松竹のサポートはありません、そりゃ東宝の配給ですから~
作品を観ての感想は、ここ数年来、日本映画の傑作です。過去にこのような作品があったかと思い出すと「ドライブマイカー」以来になりますか…
とにかく傑作には違いなかったのです、
歌舞伎は知らない・・・
わたしは歌舞伎を見たことがない。演目などは多少知っているものの、この世界のことはわかりません。歌舞伎は現在、松竹が束ねています。(地歌舞伎など地方のものは除く)この作品の製作にかかわったのは東宝。東宝も過去、歌舞伎を上演していたことがあり、歌舞伎役者もいました。知っているのは二代目 松本 白鸚です。私の中ではこの人は市川染五郎、ルソン助左衛門。
歌舞伎役者は中村鴈治郎が出ておりますが、どちらかいうとテクニカルアドバイザーがメイン。梨園育ちの寺島しのぶと数人ほど歌舞伎役者はでてますが、メインでない。
歌舞いていないひとたちでつくられた映画なんですーー

ストーリーは多く語らず
やくざの息子・喜久雄が縁あって歌舞伎役者、渡辺謙扮する花井半二郎の養子となります。半二郎にはひとり息子・俊介がおり、歌舞伎役者として育てられています。そして女将が寺島しのぶになります。上方歌舞伎が舞台です。
喜久雄は「花井東一郎」、「花井半弥」が名跡です。このふたりの生涯にわたる大河ドラマなんです。
日本映画の大作は多数の登場人物が・・・
オールスターキャストとうたわれるよう、多様な人物が登場するのが大作の基本ですが、本作はハリウッドの大作のように人物が絞られています。「白い巨塔」、「華麗なる一族」、「仁義なき戦い」など。ハリウッドは「風と共に去りぬ」、「ジャイアンツ」や「ベンハー」、「十戒」など少人数の主要キャストで話が流れてます。この絞り込みにより約3時間、物語に引き込まれていきます。吉沢亮と横浜流星の拾われた男と血筋の男が歌舞伎という「芸」に生きる世界をみせていきます。
渡辺謙は老いていく役者のいきざまを見事に演じ、主役ふたりの柱になっています。女形の重鎮、人間国宝を田中泯が歌舞伎に住む妖怪のように、この世界の異様さを表現します。そして主人公二人をとりまく女たち・・・


血縁か芸か・歌舞伎の掟
これがテーマです。現在歌舞伎は世襲制ですが、それは昭和、戦後からだとされます。その以前は名跡を求めて、養子縁組になるのが多かったようです。「鴈治郎」「仁左衛門」などほしい名跡がありました。映画では半二郎をどちらに襲名させるか、それ以降波乱万丈のストーリーとなっていきます。伝統芸能の世界で生きていくすさまじさ、栄光とその影、没落など、このふたりの人生がどうなっていくのか、吸い寄せられていきました。
ふたりの人生は歌舞伎の舞台で描かれています。演目の芝居のなかで描かれもします。歌舞伎そのもの再現性はわかりませんが、時折演者の視点で観客の映像が出てきます。役者視線です。舞台にたつ緊張感であり、達成感を見るものにみせていきます。
伝統芸のなかで生きていく、このふたりの人生だけでなく、振り回されていく人々も描きつつ、恐るべき世界であることを提示します。

スタッフィングの凄さ
登場人物の人間像に迫った脚本、演出の技量は無論ですが、作品の品質に大きく貢献しているのはカメラと音楽です。最後のクレジットで誰だ?って見ていたのですが、どちらも知らない人・・・
撮影監督:ソフィア・エル・ファニ
音楽:原摩利彦
いづれも存じ上げませんが、カメラは余計な動きをせず、舞台、人物をカットでつないでます。昨今の邦画、テレビドラマのカメラはひどいもんです。そんななかこれぞ映画!っていうカメラワークでした。外人っやん!
音楽は舞台の演奏=ソースミュージックとアンダースコアを重ね合わせ、自分の心情を表し、ここも余計な音楽がありません。
吉沢亮と横浜流星の演技が評価されています。わたしはここに触れていません。彼らの演技はまだ未熟だと思います。それを支えたのが渡辺謙ら助演陣です。女優たちも頑張ってました。
総合力により傑作だと思います。テレビドラマの映画化やアイドルがでるオバカ映画の前に見ておいた方がいいと思います。

ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示珍しくカリントさんが最近の邦画を絶賛しておりますなっ
これは見に行かないといけない感じですかね・・→まだ見てないんかい!