映画愛に満たされる「ヒューゴの不思議な発明」
「月世界旅行」のメリエスを扱った
スコセッシの異色作
19世紀末、トーマス・エジソンのキネトスコープ、リュミエール兄弟のシネマトグラフなど、後年の「映画」につながる技術は人々をおおいに驚かせていました。2025年の今から130年ほど前のことです。
「映画」の概念すら曖昧ななか、いわゆる特撮映画の祖 ジョルジュ・メリエス(1861~1938年)が登場します。リュミエール兄弟のシネマトグラフに魅了され、映画撮影用カメラやフィルムの現像技術まで、手探りで編み出した人物です。世界初の本格的なスタジオ撮影を行ったのも彼だといわれています。もともとマジシャン・興行主として活躍していた彼らしい「月世界旅行(1902年)」は、あまりにも有名ですね‥!
「月世界旅行」のようなSFのほか、冒険もの、ホラー、ドキュメンタリーなど多彩な作品を生んだメリエスは、並みならぬ創作欲・行動力を備えたアーティストでした。

この映画黎明期の偉人ジョルジュ・メリエスの姿をよみがえらせたのが、マーティン・スコセッシ監督による「ヒューゴの不思議な発明(2012年)」。同監督初の3D映画であり、メリエスへの賛辞とあふれる映画愛を感じる作品です。スコセッシのピュアな原風景をも感じさせ、監督作で唯一?子どもも楽しめるというポイントは異色です。
原作について
原作はアメリカの絵本作家ブライアン・セルズニックの「ユゴーの不思議な発明」。
「ジョルジュ・メリエスの物語を書きたい」と考えていたセルズニックが、メリエスが所有していたからくり人形についての本「生きている人形」(ケイビー・ウッド著)にインスパイアされ、からくり人形を見つけた少年とメリエスの遭遇を紡ぎ出しました。フィクション要素を盛り込みながら、メリエスのエピソードを今に伝えるストーリーとなっています。

映画界への貢献は計り知れないにも関わらず、メリエスは不遇の晩年を迎えました。多額の負債を抱え、フィルムは当時の軍に接収されたり焼失などし、すべてを失ったのです。原作および本作「ヒューゴの不思議な発明」のときは1930年代、メリエスはすでに晩年の姿で、映画界から遠のき、事実そうだったように売店の売り子として生計を立てていました。メリエスはいかにして失意の底に至ったのでしょうか‥

メリエスそっくりのベン・キングズレー
少年が解き明かす メリエスの謎
架空の少年 ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)を主人公にすえたストーリーは、実在したメリエスの正体に迫っていきます。
年端もいかないながら、パリに建つ駅構内の隠し部屋でひとり暮らしするヒューゴ。彼は時計職人だった父(ジュード・ロウ)を亡くし、駅の時計管理をしていた叔父に代わり、人知れず働いています。孤独なヒューゴの拠り所は父の形見のオートマタ(機械仕掛けの人形)で、父から受け継いだ技術を頼りに人形の修理を試みていました。
そんなある日、構内の売店で働くジョルジュ(ベン・キングズレー)に、修理についてのメモが記された大切なノートを奪われてしまいます。このジョルジュこそ、オートマタの秘密を知るジョルジュ・メリエスとも知らず、ヒューゴはノートを取り返そうと彼の孫イザベル(クロエ・モレッツ)の力も借りて奮闘します。

撮影時ともに13歳で可愛らしかった、エイサとクロエ

ハロルド・ロイド主演「要心無用(1923年)」へのオマージュらしきシーン
映画は夢そのもの
駅構内の風景、時計塔やその内部、オートマタの機械部分など、鉄製でメカニカルなものが織りなすめくるめく映像美は、本作のみどころのひとつ。
また本作にはメリエスの妻ジュアンヌ・ダルシー(ヘレン・マックロリー)が女神に扮した「日食と月食」の撮影風景など、有名なガラス張りスタジオ(!)内を再現したシーンも登場します。手作り感満載のセット、古めかしいクルーの働きぶりがいきいきと描かれ興味深いです。スタジオを背に記念撮影するシーンでは、カメラマン役でカメオ出演するスコセッシの姿も👀
黄金期のメリエスが「夢はどこから来ると思う? ここ(スタジオ)でつくられるんだよ」と語るさまはとてもまぶしいです。
謎解きの終盤、「月世界旅行」をはじめ、メリエス本人が出演するトリック映画「四つの首の男」、大仕掛けのセットが楽しい「悪魔の宴」などメリエスによる貴重な映像も挿入されます。そしてすべてが氷解する魔法のようなひとときが訪れ‥✨「映画は夢そのもの」と改めて感じさせてくれる✨ぜひ多くの人にみていただきたい作品です。




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投稿を表示メリエスを物語に据えた作品なのですね!
知らなかったです!!
レビュー読ませていただいて俄然見たくなりましたっ
広告イメージだと、当時はやったファンタジーもの(ハリーポッターみたいな?)の印象をもっていて食指が動かなかったのですが、絶対見ます
素敵な作品をご紹介いただきありがとうございます
(いいねして、コメントしようと思っていたのにすっかり失念していました。今頃申し訳ありません・・)
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投稿を表示「ヒューゴの不思議な発明(2012年)」って、そんな話だったんですね。
いま受講してる大学院社会人講座でトーマス・エジソンのキネトスコープ、リュミエール兄弟のシネマトグラフなどの講義を受けたとこで、OH!~とタイムリ~
情報、ありがとうございます。