ブルーノ・ガンツの「永遠と一日(Eternity and a Day)」(1998)、静謐な音楽!
◆◆「永遠と一日」作品概要
カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した作品。本作は、ギリシャ出身のテオ・アンゲロプロスの「愛」と「旅」の永遠の物語で、現代に19世紀を蘇らせ、台詞にギリシア語とイタリア語で詩をちりばめた文芸作品である。
ギリシアの港町テッサロニキを舞台に、詩人の最期の一日と難民の子供との出会いの「人生の旅の一日」の中で現在と過去と未来、現実と旅と夢を描いた作品。
19世紀の詩人ソロモスについて研究している詩人アレクサンドロスは、重病を患い、入院を明日に控えて、追憶に浸っている...
1936年の夏の少年の日、親友と朝早く遠泳をして島に行ったときの追憶から映像は始まる。アトランティス(サントリーニ島)の伝説から詩の台詞が謳いあげられ、アレクサンドロスは少年の日を呼びもどす。
◆◆音楽による演出
彼は家政婦ウラニアと最期のお別れを告げ、テッサロニキの海辺通りに散歩に出る。アレクサンドロスは一戸建ての住まいを去り、今はアパルトマンに住んでいる。3年前に去った妻アンナの手紙を手に愛犬とともに娘のカテリーナの娘婿と暮らすポリカティキーアに向かう。途中、路上で車の窓ふきをして小銭を稼いでいるギリシア系アルバニア人の少年が警察に追われているところに出くわすと、アレクサンドロスは自分の車の窓を拭いてくれた少年をかくまう。
・・アパルトマンでは、同じ楽曲を聴いている、となりのアパルトマンの知らない人の話が出てくる。★この音楽は、ギリシャ出身の女性作曲家エレニ・カラインドルーが担当しているが、物悲しい響きと独特の静かな佇まいに癒される。
◆シーン1
アレクサンドロスは愛犬をウラニアに託すことにするが、訪れた彼女の家では子息の婚礼の真っ最中だった。アレクサンドロスに、亡命ギリシア系アルバニア人の「旅」する少年が、詩人ソロモスに倣い詩人を「言葉を買う遊び」で慰めようとする。アレクサンドロスは亡妻アンナの聖人暦の日に親戚一同で島に旅した思い出に耽るが、偶然、病院の担当医師と出会い、現実に連れ戻される。
◆シーン2
難民の少年は他の仲間たちとナポリやマルセイユにフェリーで「旅」(密航)するという。アレクサンドロスは少年を誘い、海辺の循環バスに乗る。コミュニストの青年、喧嘩をする仲のよい恋人、弦楽科の音楽学生、そして詩人ソロモスが同乗する。
◆シーン3
翌朝、テッサロニキの海辺の昔懐かしい一戸建ての旧家で、アレクサンドロスは嘗てと同じように親戚と妻アンナに再会する。詩人が妻に「明日の長さは?」と聞くとアンナは「永遠と一日」と答える。
◆高い感性!
テオ・アンゲロプロスの作品全般、高度な含意を含んでいる様な気がするが、本作品は、比較的わかりやすく、またシーン1~シーン3で示した様な、特徴的な映像が示す様な、詩情あふれる心の叫びが、上手に表現されている。妻アンナの輝く存在感は、他作品にはない好感度が感じられる。
◆テオ・アンゲロプロスの作品群
ブルーノ・ガンツ以外では、欧州系では、マルチェロ・マストロヤンニ、ジャンヌ・モロー、ミシェル・ピコリ、イレーヌ・ジャコブが、テオ・アンゲロプロス作品に出演している。また米国系のウィレム・デフォー、「ピアノレッスン」のハーヴェイ・カイテルも出演している。
DISCASでも入手しにくいので、鑑賞に時間がかかったが、最後に、この作品にたどり着いた。
●作品リスト
旅芸人の記録(1975)
狩人(1977)
アレクサンダー大王(1980)
シテール島への船出(英語版)(1984)
蜂の旅人(英語版)(1986)
霧の中の風景(1988)
こうのとり、たちずさんで(英語版)(1991)
ユリシーズの瞳(1995)
永遠と一日(1998)
エレニの旅(2004)
エレニの帰郷(2009)
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