愛すべき「アノーラ」に遭遇✨
第77回カンヌ国際映画祭(パルムドール)と第97回米アカデミー賞(作品賞・監督賞・編集賞・脚本賞・主演女優賞)を制した「アノーラ」。ショーン・ベイカー監督の作品とあって注目していたところ、フタを開けてみると期待以上の作品でした✨
印象に残ったことを記します。
「アニーって呼んで」
主人公アノーラ(マイキー・マディソン)はニューヨークでストリッパーとして働く23歳。なぜその職業に就いたかなどの描写はなく、ただ彼女がプロフェッショナルであることは確かに伝わってきます。
彼女は決まり文句のように「アニーって呼んで」と言い、本名「アノーラ」で呼ばれるのをそれとなく避けています。「アノーラ」という名前には、「光」、「明るさ」などの意味があるそう。ですが、アノーラは「そんな意味は知らないし、アメリカ人は名前に意味など求めない」と言います。名前だけでなく、例えばなぜその仕事に就くのか、ということにも意味を求めたりしない―アノーラが心がける万事へのアプローチを垣間見る台詞だと感じました。ただあえて「意味を求めない」と言うからには、逆説的にいうと実は、求めそうになる自分がいる、ということなのでしょうか・・
アメリカンな親しみを感じる呼び名「アニー」。単純にその方が短いし、呼ぶほうだけでなく呼ばれるほうも気楽なのかもしれない、何よりもやはり「アニー」は鎧なのかもしれない。プロのストリッパーはタフでなければつとまらないはずで、アノーラは自分なりに生粋のアメリカ人になって「アニー」という鎧をまとい仕事にのぞむ、健気な女の子なのです。
アノーラがどんな将来を夢に描いていたのかなども具体的には描写されないなか、唯一彼女が「子どもの頃から、もしも新婚旅行にいくならディズニーワールドと決めていた」と語ったのも印象的でした。「夜の蝶」のイメージからかけ離れた、可愛い夢ではありませんか・・!
ディズニーワールドは、同監督の「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」のラスト、主人公の女の子が児童養護施設への収容を拒み、吸い込まれるように逃げ込む場所でもあります。
誰にでも行く権利があるし、楽しむ権利がある「夢の国」での新婚旅行。アノーラは、突如結婚するようなことさえなかったら、この夢を思い出すこともなかったかもしれません。

アノーラ役 マイキー・マディソン
アノーラを演じ、若干25歳で映画界の頂点ともいえるアカデミー賞主演女優賞に輝いたマイキーマディソン。クエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」ではヒッピー集団の一員で、ディカプリオに火炎放射器で焼かれる役😨を演じていました(たぶん、あの娘🔥)。そんな彼女が大躍進✨
ストリッパーという役柄、ポールダンスもほんの数秒でしたが披露されます。あのわずかなカットのための鍛錬ははかりしれず、凄まじい役者魂✨を感じます。
アノーラは出会ったばかりのロシア新興財閥の息子・イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)に求婚され、24時間開設の教会で衝動的に挙式。もちろん、彼女は玉の輿に乗りたくて彼をそそのかしたわけでもなく、「愛してる」と言われれば心底うれしそうに微笑むのでした。だからその状況が一変したときのショック、怒り、悲しみ、悔しさ、受ける傷も、誰もが抱くものと何ら変わりはなく・・彼女は、そのあふれ出す感情を絞りだし、存分に爆発させます。特にラストのマディソンが素晴らしく✨アノーラというキャラクターをこの上なく愛すべきものに仕上げています。
この先の展開にさまざまな想像をかき立てるラスト✨私はそういうエンディングの映画が好きです。強烈なエネルギー、疾走するストーリーが静かに締めくくられた本作もまさにそのものでした。

(c)Universal Pictures

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投稿を表示普段絶対手を付けないタイプの映画なのですが(;^_^A
アカデミー賞受賞といい、これもインディーズということを聞き興味がわいたところに来て、
Black cherryさんのコラムを読んで、俄然見たくなりました!
これは見ますっ!