ライナー・ヴェルナー・ファスヴィンダーとハンナ・シグラ
◆はじめに
昨年8月末にライナー・ヴェルナー・ファスヴィンダーの傑作集の特集があったが、遅れて、年始早々に、作品を鑑賞することができた。ニュー・ジャーマン・シネマという言葉も聞いた事がある程度だったが、フランス映画のヌーヴェル・ヴァーグと共通している点で興味深いので、これから少しづつ鑑賞する予定。
同監督のミューズということで、ヴィム・ヴエンダース「まわり道(Falsche Bewegung)」(1975)に出演していたハンナ・シグラの存在についても知っていたので、是非観たいと思った。(この鑑賞の時は、ナスターシャ・キンスキーの出演に重きを置いていたが・・)
本日は、「エフィ・ブリースト(Effi Briest)」(1974) と、ファスヴィンダーの代表作の「マリア・ブラウンの結婚 (Die Ehe der Maria Braun) 」(1979)を、2本鑑賞した。
◆「エフィ・ブリースト(Effi Briest)」(1974)
19世紀ドイツの作家テオドール・フォンターネの小説を原作に、社会の抑圧のなかで破滅の道をたどる若い女性の姿を美しいモノクロ映像で描いた文芸ドラマ。ブリースト家の娘エフィは20歳上のインシュテッテン男爵と結婚するが、男爵は年若い彼女をしつけようとする。エフィはそんな男爵に違和感を抱き、彼の友人である若く魅力的なクランパス少佐と浮気をする。数年後、エフィと友人の裏切りを知った男爵は、クランパスに決闘を申し込む。
◆「マリア・ブラウンの結婚 (Die Ehe der Maria Braun) 」(1979)
戦時下で結婚式を挙げたマリアとヘルマンだったが、ヘルマンはすぐに東部戦線へと送り出される。戦争が終わってもヘルマンは戻らず、マリアは夫の戦死を知らされる。やがてマリアは黒人兵士ビルと結婚し平穏な生活を手にするが、そこへ死んだと知らされていたヘルマンが戻ってくる。
ハンナ・シグラは、この入魂の演技でベルリン映画祭主演女優賞を獲得し、一躍有名になった。

◆◆感想
「エフィ・ブリースト」の方は、地味ながらも、モノクロ画像のクラシカルな印象であったが、その静止画的な画像の捉え方と、長く続かない断片的な会話で、アラン・レネの「去年マリエンバートで」と似た印象を受けた。また、断片的な柔らかい音楽の使い方には、詩情のある甘やかさを感じた。
若々しい丸顔のハンナ・シグラなのでアクの強さを感じなかったが、「マリア・ブラウンの結婚」の方は、感情がなく冷淡な強い女性を演じており、その凄みには、とにかく驚いた。(最後も衝撃的だった。)
18日には、ジャンヌ・モロー主演の「ケレル(Querelle)」(1982)を鑑賞する予定なので、モローの凄みとも比較してみたい。