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趣味は洋画
2025/01/05 02:35

懐古 アメリカ映画の1968年

昔の時代を慕い、アメリカ映画の名作を年度別に振り返っている。
「1960年」を初回に、前回「1967年」まで8回にわたって当時の名作に触れてきた。

 

今回は  ‘宇宙SF映画の傑作’   や  ‘刑事アクション映画の名作’  がヒットした「1968年」(昭和43年)の話題作を御紹介したい。

 

 

「2001年宇宙の旅」 監督:スタンリー・キューブリック

 

 

‘皆さん、こんにちは。 私はハル9000コンピュータです。 イリノイのHAL工場で生まれました。 1992年1月12日でした...。’

 

宇宙に進出していく人類の運命、宇宙の知的生命体の存在など、難解な描写と科学性に裏打ちされた綿密なリアリズムで描かれたSF映画の金字塔

 

人類の夜明け、荒野に棲む猿人の群れの前に、黒い石碑(モノリス)が出現、人類へと進化するきっかけを作る。それから400万年経った2001年、月面でモノリスが発掘され、調査していたフロイド博士(ウィリアム・シルヴェスター)らの前で突然、木星へ電波を発信した。探査のため木星へ向かった大型宇宙船ディスカバリー号の内部では、コンピュータHAL9000が反乱を起こす。1人生き残ったボーマン船長(ケア・デュリア)は、木星軌道上に巨大なモノリスを発見。その彼方に ‘異次元への扉’ が開くのだが...。

 

本作のセリフは極端に少なく、時空を超えて何度も登場する‘モノリス’の存在は謎めいている。

登場人物は感情の起伏がなく、最も人間的な‘行動’をとるのがコンピュータHAL9000である。

そしてクライマックスの迫力あるシーンも、何の説明もされない。

 

壮大に鳴り響くリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」が耳に残るばかり。

 

 

 

「ブリット」 監督:ピーター・イェーツ

 

 

映画史に燦然と輝く刑事映画の最高傑作で、スティーヴ・マックィーン(1930.03.24 ~ 1980.11.07 米・インディアナ州生まれ)の魅力が際立つ1本。

 

サンフランシスコ。仲間を裏切って200万ドルの金を持ち逃げしたシカゴのギャングが潜入した。ある裁判の証人として、この男の証言を必要としている野心政治家のチャルマース(ロバート・ヴォーン)は、男の護衛を一匹狼の刑事ブリット(スティーヴ・マックィーン)に命じる。ところが、ブリットが恋人のキャシー(ジャクリーン・ビセット)に会いに行っている最中、その男は2人組の悪漢に撃たれて重傷を負った。当然の如く、チャルマースはブリットの失態を責める。だが、ブリットは研ぎ澄まされた刑事の感性から、チャルマースの行動に疑問を抱く。医師の手当ても空しく、重傷を負った男は死んでしまうが、ブリットは、男が生きているように見せかけて、敵をおびき出そうとする...。

 

スタントなしで、マックィーンが運転する1968年型フォード・ムスタングGT390と、敵の1968年型ダッジ・チャージャーによるサンフランシスコの急斜面を利用したカー・アクションは、映画におけるカー・チェイスの歴史を変えたといわれる屈指の名場面だ。そして、そこに流れるラロ・シフリンのジャジーなサウンド、撮影監督のウィリアム・A・フレイカーの自在なカメラワークも大きく貢献している。

 

濃紺のタートルネック・セーターを着て、行動的な刑事をクールに演じるマックィーンは、映画における ‘刑事’ のイメージをも一新したのだ。

 

又、ジャクリーン・ビセットは、当時ワーナー・ブラザース副社長だったフランク・シナトラの推薦で本作出演が決まり、彼女がトップ女優となった出世作でもある。

 

 

 

 

「ローズマリーの赤ちゃん」 監督:ロマン・ポランスキー

 

 

悪魔主義者の儀式によって、知らないうちに悪魔の子を宿してしまった若妻の恐怖を描き、オカルト映画ブームのはしりとなったロマン・ポランスキー監督の傑作。
 

売れない俳優のガイ(ジョン・カサヴェテス)と妻のローズマリー(ミア・ファロー)は、ニューヨーク・マンハッタンの古いアパートに引っ越して来た。ある日、隣人のおせっかいな老夫婦の養女が、アパートの窓から飛び降り自殺した。翌日、老夫婦は養女が身に着けていたペンダントをローズマリーにプレゼントする。やがて妊娠したローズマリーは、喜びも束の間、夜ごと悪夢をみるようになる。彼女はいくつかの事件から、夫やアパートの住人が悪魔主義者かもしれないと疑う。そんな中、出産したローズマリーは医者から死産と告げられるが、隣室から赤ん坊の泣き声が聞こえてくる...。

 

繊細で傷つきやすいローズマリー役は強烈な印象を残し、本作のヒットにより、ファローの女優としての将来が約束された。だが、様々なトラブルが付いてまわったのも事実。

本作2年前に、30歳年上のフランク・シナトラと結婚していたものの、不仲で離婚、撮影に悪影響を与えてしまう。

更に、本作の音楽担当のクシシュトフ・コメダが37歳の若さで急死したうえ、プロデューサーのウィリアム・キャッスルが尿毒症で入院し、神経衰弱となった。そしてポランスキー監督の妻シャロン・テイトがマンソン・ファミリーに惨殺されたのである。

果たして、悪魔に呪われてしまったのか...。

 

ルース・ゴードンが、親切な隣人、実は悪魔族の一員という怖い役を余裕で演じ、アカデミー助演女優賞を受賞している。

 

 

 

 

 

「荒鷲の要塞」 監督:ブライアン・G・ハットン

 

オープニング、雪深いアルプス上空の山間部を縫うように飛行する、偽装されたドイツ空軍輸送機。
間を置かずしてロン・グッドウィンの勇壮なテーマ曲が流れてくる。
真っ白な雪渓をバックに、スタッフ・キャストの名前が真っ赤な文字で次々とクレジットされていく...。

 

1943年冬。ドイツ南部アルプス山中の町・ヴェルフェンには、要塞化した ‘鷲の城’(ドイツ軍情報本部)があり、ここに米軍のカーナビー准将が捕われていた。准将はノルマンディー上陸作戦の詳細を知る人物であり、イギリス軍情報部のローランド提督(マイケル・ホーダーン)とターナー大佐(パトリック・ワイマーク)は、カーナビー救出作戦を決行する。スミス少佐(リチャード・バートン)率いる6名の諜報員に加え、米陸軍レンジャー部隊のシェイファー中尉(クリント・イーストウッド)が加わった部隊は、空路アルプスへ向かい、吹雪の森林地帯にパラシュート降下した。だが諜報員の一人で通信士の軍曹が首を折られて死んでいた。スミスは軍曹が他殺であることを確認すると、女性諜報部員のメアリー(メアリー・ユーア)に接触し、今後の行動を指示した。同じ頃、ドイツ軍のローゼンマイヤー将軍(ファーディ・メイン)がヘリで鷲の城に到着、親衛隊のクラマー大佐(アントン・ディフリング)が出迎えるが、将軍はゲシュタポのフォン・ハッペン少佐(ダーレン・ネスビット)の行動に懸念を示す。一方、ドイツ将校の制服に身を包んだスミス少佐とシェイファー中尉は酒場に入り、現地スパイのハイジ(イングリッド・ピット)に接触する。ところが、部下の諜報員がまたひとり暗殺されてしまう。

 

オープニングからエンディングまで緊張感の連続で、サスペンスフルな展開に目が離せない。
なかでも、ドイツ軍情報本部内の一室で繰り広げられる心理戦(騙し合い)は、本作最大の見どころである。スミス少佐の一言一句、細部の動きまで、一体だれが味方で誰が敵なのか、混乱してしまうほどだ。

もう一つのヤマ場(見どころ)は、ヴェルフェン山麓と鷲の城を結ぶロープウェイでの戦いである。
CGも無い時代に、このアクションシーンは実にリアルに撮っており、まさに手に汗握る場面だ。
そしてラストは、まるで図ったかのようにどんでん返しが待っている。

 

 

 

 

 

「猿の惑星」 監督:フランクリン・J・シャフナー

 

 

地球にそっくりな星に辿り着いた宇宙船の乗組員が見たものは、猿が人間たちを支配する世界だった。奇想天外な着想と、優れた特殊メイクが人気を呼んだ傑作。

 

ケープ・ケネディから打ち上げられた宇宙船は、1年6カ月後に不思議なくらい地球によく似た惑星に不時着した。船から脱出した飛行士のテイラー(チャールトン・ヘストン)たちは、高度な文化を持って発達した猿が、原始人のような姿の人間を支配している光景に愕然となる。猿のジーラ博士(キム・ハンター)はテイラーの知能指数が高いことに驚き、同じ猿である考古学者コーネリアス博士(ロディ・マクドウォール)に伝える。この猿の2人はテイラーに好意的だが、惑星の最高頭脳であるザイアス博士(モーリス・エヴァンス)はテイラーを嫌い、テイラーの脳波切除の手術を命じるのだが...

 

本作を語るうえで避けて通れないのが「メーキャップ」である。
担当したのは本作によって世界的に有名なメーキャップ・アーティストとなったジョン・チェンバース。俳優自身の唇がメイクアップの唇とシンクロし、台詞がきちんと話せること。又、俳優が呼吸しやすいように猿の鼻を上向きにし、上唇に呼吸穴を作る。さらに、俳優の熱や汗を吸収するために開発された特殊な塗料が施されているという。
つまり、チェンバース氏は、「猿」そのものではなく、限りなく人間に近い猿を違和感なく映画に登場させたのである。この功績は、作品の大ヒットの大きな下支えとなり、見事アカデミー賞・名誉賞を受賞している。

 

驚愕のラストシーンあっと驚く結末は、単なる映画の面白さだけではなく、地球のあらゆる環境破壊への苦言を呈したとも感じ取れる。

 

 

 

 

 

「マンハッタン無宿」 監督:ドン・シーゲル

 

一連のマカロニ・ウェスタンで大スターとなったクリント・イーストウッドが、現代の大都会を舞台に暴れまわる、「ダーティ ハリー」の原型ともいえるアクション。

 

アリゾナで殺人を犯し、ニューヨークで逮捕された男リンガーマン(ドン・ストラウド)の身柄を引き取るため、保安官補のクーガン(クリント・イーストウッド)は、生まれて初めて大都会を訪れた。複雑な警察機構に業を煮やしたクーガンは、独断で病院に乗込むと、LSD中毒で入院中の犯人を強引に連行した。しかし、クーガンは男の仲間に空港で襲撃され、犯人を奪われてしまう。怒りを爆発させたクーガンは、見知らぬ土地で単身追跡を始める。

 

イーストウッドが初めてドン・シーゲルと組んだ作品であり、数多くのB級映画でならしたシーゲル監督のアクションが冴えわたる。

 

ニューヨーク市警のマクロイ警部に扮したリー・J・コッブをはじめ、シーモア・カッセルスーザン・クラークベティ・フィールドジェームス・エドワードらが共演している。

 

ラストのバイクの追跡シーンが実にいい。

 

 

 

 

 

「おかしな二人」 監督:ジーン・サックス

 

1965年にブロードウェイで大ヒットした、ニール・サイモン原作の喜劇「おかしな二人」を映画化したもの。

 

マンハッタンに住む腕利きのスポーツ記者オスカー(ウォルター・マッソー)は無類の不精者で、それが原因で女房に逃げられ、今は独り暮らしである。そこへ、同じく妻に愛想をつかされたニュース記者フェリックス(ジャック・レモン)が転がり込んで来た。フェリックスは几帳面な性格で、家事が大の得意。そんな彼のせいで居場所がなくなった妻は、子供を連れて家を出たのだ。悲嘆にくれるフェリックスを、親身になって慰めてくれたのがオスカーである。そして、男2人の奇妙な同居生活が始まった。

 

とにかくウォルター・マッソーとジャック・レモンの魅力が存分に生かされている。

価値観のギャップが引き起こす笑いを、絶妙の台詞と筋運びで描いているのだ。

彼らに演出は不要の如く...。

 

この名優2人は、ビリー・ワイルダーの「恋人よ帰れ!わが胸に」(66年)で共演、記念すべき名コンビ誕生となった。

本作の大ヒットにより、以後もレモンとマッソーの共演は度々企画されている。

2人は実生活でも大の親友同士であった。

 

 

 

 

 

 

「華麗なる賭け」 監督:ノーマン・ジュイソン

 

スティーヴ・マックィーンがそれまでとはガラリとイメージを変えて、粋でおしゃれな泥棒に扮した犯罪サスペンス。

 

洗練された紳士で知られる大実業家のトーマス・クラウン(スティーヴ・マックィーン)は、ただ一つ盗みに関してだけは異常なほどの欲望と才能を持っていた。ある日、彼は部下を使って自分のビルの前のボストン銀行から260万ドルもの大金を盗ませる。早速、ボストン警察のエディ・マローン刑事(ポール・バーク)が捜査に乗り出すが、手掛かりは一向に掴めない。実業家のクラウンが犯人だとは夢にも思わなかったのだ。一方、被害を受けた銀行の保険会社は、ビッキー・アンダーソン(フェイ・ダナウェイ)に調査を命じる。彼女は早速マローン刑事を訪ね、共に協力しながら調査を進めるうち、次第にクラウンに疑念を抱くようになる。ビッキーは手始めに、美術品の競売会で目指すクラウンに近づいた...

 

高級なスーツに身を包み、犯罪を楽しむ大富豪という異色の役どころを演じたマックィーン。

対するダナウェイ演じるビッキーは、 ‘自分は銀行強盗の犯人を調査している’  とクラウンに名乗り、彼の反応を確かめるのだが、クラウンはまったく動じない。むしろ彼女の挑戦を歓迎するかのような余裕である。やがてビッキーは疑念を深めつつも、クラウンへの愛情を感じ始める。そしてクラウンは、再び「盗み」に挑み、まんまと成功する...かにみえたのだが...

 

ラストのオチへの展開がサスペンスフルで、なかなか見ごたえがある。

 

上述以外の作品では、「ファニー・ガール」、「レーチェル レーチェル」、「アルジャーノンに花束を」、「愛すれど心さびしく」、「刑事(デカ)」、「グリーンベレー」といった作品が印象深い。

 

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2 件の返信 (新着順)
飛べない魔女
2025/01/05 15:01

洋画さん♪明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致しますm(__)m
1968年も興味深い作品のオンパレードでしたね。
【猿の惑星】はこの年でしたか!今見ても全然遜色なのない面白さ。
結末が判っていてもドキドキします。
後に沢山本シリーズは作られましたが、やはりこの第1作目が一番面白かったです。
【華麗なる賭け】はたぶんTV放映されたのを見た気がするのですが
全然覚えてないので、また見てみようと思っています。


趣味は洋画
2025/01/05 22:47

魔女さん、明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。

いつも「懐古」シリーズを読んでいただきありがとうございます。
「猿の惑星」、確かに結末が分かっていてもドキドキしますね。
やはりオリジナルの面白さは別格だと思います。

「華麗なる賭け」、レビュー広場でまたご感想をお聞かせ下さい。

オーウェン
2025/01/05 13:10

「マンハッタン無宿」は、クリント・イーストウッドとドン・シーゲル監督が初めてコンビを組み、後のダーティハリー・シリーズのきっかけとなった作品ですね。

この映画「マンハッタン無宿」は、アリゾナで人を殺しニューヨークで逮捕された男を引き取るため、生まれて初めて大都会ニューヨークを訪れたアリゾナの田舎の保安官補クーガン(クリント・イーストウッド)は、複雑な警察機構に業を煮やし、独断で病院へ乗り込み、LSD中毒で入院中の犯人を強引に連行してしまいます。

しかし、空港で犯人の仲間に襲われ彼を奪取されて、クーガンの怒りが爆発。
アリゾナの荒野を駆ける勢いそのままに足で、オートバイで、摩天楼の街を駆け巡り、遂に犯人を逮捕するのです。

このアリゾナの田舎の保安官補クーガンは、アリゾナでは腕利きだが、ニューヨークでは単なるおのぼりさんにすぎず、茶色のスーツを着て、テンガロン・ハットをかぶり、ブーツを履いた野暮なウエスタン・スタイルは、市民たちから好奇の目で見られます。

中には、露骨にからかう者もいて、彼らは口を揃えて「テキサスか?」と尋ねます。
すると、そのたびにクーガンはうんざりしたような顔で「アリゾナだ」と応えるという、このシーンには思わずニヤリとしてしまいます。

とにかく、このクーガン、からかわれても、馬鹿にされても、眉ひとつ動かさず、平然とアリゾナの荒野で犯人を追い詰めた時と同じやり方で、黙々と自分流の捜査を推し進めて行くのです。

そして、犯人を護送の途中、不覚にも逃げられたという屈辱に耐える事は、西部男の誇りが許さないのか、ニューヨーク市警の警部(リー・J・コッブ)に、「ここでは君はひとりの市民にすぎないのだ。さっさと、OK牧場へ帰れ」と、冷やかし半分の言葉を投げられても、彼は頑として受付けず、あくまでも、たったひとりで勝手知らないニューヨークの街を歩き回って、犯人の行方を追いかけるのです。

それは、警官としての職業意識とも言えるし、犯罪者への怒りとも言えるかも知れません。
しかし、ドン・シーゲル監督が、この映画で一貫して描くのは、”これこそ西部男の誇りであり、血と汗を流して未開の大地を開拓した人々の血を受け継いだ男の生き方なのだ”という事なのです。

そこが、この作品の醍醐味でもあり、いかにもドン・シーゲル監督らしい、ひねりの効いた演出だなと強く感じました。

一連のマカロニ・ウエスタンで国際的スターになったクリント・イーストウッドの個性を、大都会の追跡劇に生かそうとした試みは大成功を収め、この映画をきっかけに、あの映画史に残る”刑事もの”の傑作「ダーティハリー」シリーズは誕生したとも言えるのです。