2024年に観た映画(16) 「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章」
まず最初に、私は浅野いにお氏の漫画が苦手である。大学時代からコロナ禍までの云十年間スピリッツ愛読者だった私が彼の作品に触れたのは「おやすみプンプン」と「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」。どちらの作品も読み続ける意欲が湧かなかった。基本、連載作品の読み飛ばしをしない私なのですが、彼の作品はいつしかパラパラと、「読む」というよりも眺めて終わるようになった。当時のスピリッツ連載陣の中で数少ない、うざくて敬遠したくなる「苦手な」作品に違いなかった。
そんな私が本作を観に行ったきっかけは、予告編を観てその世界に確かな躍動感を感じたから。
「あ、なんか面白そう」。ものすごく真っ当にアニメ化している予感もした。何故だか観賞意欲が猛烈に湧きました。原作嫌いと言っておいて矛盾していますが。
予感は的中しました。原作の苦手な部分はトリミングされ、登場人物は生き生きと原作そのまま(?)に躍動し、なんというか、「魅力的で誰もが楽しめる浅野いにおの世界」と化していた。原作では面倒臭い会話劇に思えたセリフの数々はリズミカルにすら感じ、門出と凰蘭のやりとりに思わずクスクスと笑っている自分がいた。りら&あのの声優っぷりも絶妙に思えた。
世界中をコロナ禍が覆う中でスピリッツの定期購読を終了した私にとって、前編で描かれた物語は原作を眺めていた頃のお話なので、断片的に記憶に残っている。今回本作を観てそれが繋がりもした。
「読む」から「観る」へ。セリフを追いかける面倒臭さとテンポの悪さから解放され、目の前で「デデデデ」の世界の要点がダイジェストで繰り広げられたかのような。そこにアニメーションの醍醐味も加わった上で。浅野氏の写実的な背景描写はそもそもアニメ化に向いてもいる。私のような読者をも楽しませてくれた本作を、果たして原作のファンはどう評価しているのだろう。原作との高い親和性を保ちつつ、忠実にその魅力を再現してきた昨今の大ヒットアニメたち同様、こちらも成功例の1つに加えてしまってよいのでしょうか?
“アンチ浅野いにお”だった私がどうしてすんなりと本作を受け入れられたのか未だ整理不十分ではありますが、とりあえずは後編公開の前に、原作に再挑戦してみたいと思います。
№16
日付:2024/4/20
タイトル:デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章
監督(アニメーションディレクター):黒川智之
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン1
パンフレット:あり(¥1,100)
評価:6.5
<CONTENTS>
・イントロダクション×ストーリー×相関図
・キャラクター
・スペシャル・インタビュー 幾田りら&あの
・キャラクター
・キャスト・コメント
・キーワード
・漫画イソベやん
・ガジェット
・黒川智之(アニメーションディレクター)
・吉田玲子(脚本)
・アート・ボード
・西村美香(美術監督)
・テーマソング
・原作(者)
・スタッフ・プロフィール
・クレジット