【実話】彼女が「戦場」を撮り続けた理由
2025年5月9日公開の映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』は、華やかなモデル時代を過ごし、その後報道カメラマンとして活動したリー・ミラーについての伝記映画
撮られる側から撮る側への転身を果たし、戦場に向かった背景において、計り知れない情熱と覚悟が存在したというのは想像に難くないが
その情熱の起因は何なのか、命をかけてでも彼女が成し遂げたかったことは何なのか
今回は、写真を通して戦争の記憶を辿るだけでなく、彼女が“戦争”を撮ることを選んだ理由、また、そこに込められた、叫びとも言える強いメッセージを紐解くと共に、一人の女性の人生を丁寧に描いた映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』をご紹介する

『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』
2023年製作 116分 イギリス
原題:LEE
監督:エレン・クラス
製作:ケイト・ウィンスレット、ケイト・ソロモン
出演:ケイト・ウィンスレット、アンディ・サムバーグ、
アレクサンダー・スカルスガルド、マリオン・コティヤール、ジョシュ・オコナー、アンドレア・ライズボロー、ノエミ・メルラン

【あらすじ】
「傷にはいろいろある。見える傷だけじゃない」
1938年フランス、リー・ミラー(ケイト・ウィンスレット)は、芸術家や詩人の親友たち──ソランジュ・ダヤン(マリオン・コティヤール)やヌーシュ・エリュアール(ノエミ・メルラン)らと休暇を過ごしている時に芸術家でアートディーラーのローランド・ペンローズ(アレクサンダー・スカルスガルド)と出会い、瞬く間に恋に落ちる。だが、ほどなく第二次世界大戦の脅威が迫り、一夜にして日常生活のすべてが一変する。写真家としての仕事を得たリーは、アメリカ「LIFE」誌のフォトジャーナリスト兼編集者のデイヴィッド・シャーマン(アンディ・サムバーグ)と出会い、チームを組む。1945年従軍記者兼写真家としてブーヘンヴァルト強制収容所やダッハウ強制収容所など次々とスクープを掴み、ヒトラーが自死した日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室で戦争の終わりを伝える。だが、それらの光景は、リー自身の心にも深く焼きつき、戦後も長きに渡り彼女を苦しめることとなる。
『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』公式サイトより引用

🐈リー・ミラーと、彼女の生きた時代

モデル仲間と一緒に酒とたばこと裸でピクニック
アバンチュールな午後を楽しむシーンから幕を開ける本作
その中にひと際、高飛車な態度の女性がいる
それが、リー・ミラー
「撮られるより撮る方が好き」
受け身ではなく、能動的傾向の強い女性だったことが垣間見える彼女が残したこの有名な言葉は、後に彼女の生き方そのものを象徴するものだったとわかることになる
それが、第二次世界大戦の勃発だ
今まで“惰性的な日々”をとにかく自由奔放に過ごしていたようにみえた彼女だったが、このことを機に、彼女の中の何かが目覚め、あっという間に戦地へ導かれていく
大切な人と離れ、危険な場所にわざわざ行ってまで、なぜそんなにも必死で爆風の中を突き進んでいくのか
そして、彼女が“戦地に辿り着くまでの距離”から見えてくる当時の時代色もまた、観客は多くのことを感じることとなる
🐈ケイト・ウィンスレットがリー・ミラーを演じるということ

本作を観て、真っ先に浮かんできた言葉は「勢い、突進」
物語の大部分において、リーが、前へ前へと果敢に突き進んでいく姿が描かれていたからというのが理由の一つだろう
しかし、ここまで作品に対して「力強い」イメージが根付いたのにはケイト・ウィンスレットが製作・主演を務めたことが圧倒的に影響していたと考えずにいられない
ビジュアル的な面でも、役作りとしてリーに相似したケイトではあるが、それだけでなく、彼女の普段からのテレビのインタビューやスピーチにて垣間見えるケイト自身のインデペンデントなキャラクターが、映画の中で描かれているリーの振る舞いそのもののように感じたからだ
また、「完全に心を奪われてしまうほどの憧れの存在」だと表現するほどに、ケイトはリー・ミラーの生き方に強く惹かれていると語っており、彼女にとって、リー・ミラーという女性を描く、演じるということがどれほど格別で挑戦的なことだったのか計り知れない
「リーの声を世に届けたい」と今作の実現に向けて8年もの歳月をかけたケイト
「戦場のありのままを伝えたいという情熱で動いたリー」のように、戦地で勇敢にも行動しつづけた姿が、ケイトに投影して見えたのがとても印象的だった
🐈なぜ、戦場でなければならなかったのか

さらに、注目すべきなのは、リーが命をかけてまでなぜ戦場へ行き、写真を撮りたかったのかという部分
「真実を伝えるため」「現場で起きていることを世に知らせるため」
という使命感に加えて、彼女自身が経験した辛い過去が大きな原動力になったと連想せざるを得ない描写になっていたのが、幾度にも渡って映画化の話が出ていた中で本作だけが実現に至った理由の一つなのではないかと感じた
自分が封印し続けてきた、苦しく、憎い経験
その出来事そのものだけでなく、それを誰にも知らせず内に秘めることの苦しみ
シチュエーションは違えど、戦争ではたくさんの人が犠牲となり、非人道的な行為がはびこり、これに抗えない人が大勢いる
リーは、彼らの代弁者になり、一緒に闘いたかった
その気持ちが多大なるエネルギーとして
彼女を戦場へ運ばせ続けたのだと
しかし―。

映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』は、戦争の記憶を辿るだけでなく、写真の中に埋め込まれた感情と覚悟、そして一人の女性がどのようにして自らの過去と向き合わせ、世界と向き合ったのかを描いた物語
彼女の瞳を通して、もう一度戦争を“見る”こと、そしてリー・ミラーという一人の女性の人生との向き合い方を知る事で見えてくる、圧倒的な勇気や強さを、ぜひ多くの方に目の当たりにしてほしい
映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』は2025年5⽉9日(⾦)公開
リー・ミラーが見た世界、そして彼女がシャッターを押す“瞬間”が訴えたかったメッセージをぜひ劇場でご覧ください
『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』
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2025年5⽉9⽇(⾦) TOHOシネマズシャンテほかROADSHOW
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© BROUHAHA LEE LIMITED2023
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
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