タイトル通り、ロマン・デュリスの人気作品「タイピスト! (Populaire)」
[概要:ロマンティックコメディ]
「タイピスト!(POPULAIRE)」(2012)は、ロマン・デュリス(ルイ)が主演のコメディで、1950年代のフランスを舞台に“タイプライター早打ち世界大会”に挑むヒロインを描くエンターテインメント作品。監督は本作が長編映画デビューとなるレジス・ロワンサル。
ヒロインと助演には、「譜めくりの女」のデボラ・フランソワ(ローズ)と、「アーティスト」の個性的なベレニス・ベジョ(昔のルイの恋人、マリー)がキャスティングされている。
フランス語の原語タイトル(POPULAIRE:人気のある)はタイプライターの機種名になる。またタイピストは当時の花形職種でもあった。
[サクセス・ストーリー(概略)]
田舎から都会へ出てきたローズは、ルイが経営する保険会社に秘書として採用された。ドジで不器用なローズはたった一週間で解雇の危機を迎えるが、ルイは彼女の特技である“タイプの早打ち”に注目し、タイプライター早打ち世界大会への出場を持ちかける。地方予選であっさり敗退してしまったローズに対し、ルイは鬼コーチと化して特訓を開始。厳しいトレーニングに耐えたローズは地方大会を一位通過し、パリで行われる世界大会の本戦に挑むのだが…。
[作品の特長①ストイックで繊細な男性<ロマン・デュリス>]
ローズを自宅に住みこませて特訓するルイは、生活時間を共有して、スポーツ競技同然にコーチをするが、自分にも相手にもストイックさを求める(その様は映画だからこその非日常感あり)。一方で昔の恋人のマリーは友人にとられたものの、双方の気持ちは少し微妙で、戦争を経験したが故の昔の傷をかかえて繊細な男性でもある。★「PARIS(パリ)」(2008)等に出演していたロマン・デュリスは暗いイメージがあったが、この頃の作品から、陰・陽を備えたキャラクターが活かされる俳優であると高く評価できる、フランス俳優のファンでもある。
[作品の特長②脳天気で普通の女の子はキュートで輝く存在に変身!]
「マイ・フェア・レディ」(1964)とまではいかないが、どこといった秀でた才能がなかった平凡な女の子が、一躍有名人になり注目されるというシナリオは、視聴者にも勇気や共感を与えるし、夢見ることも大事に思わせる。
ロワンサル監督は、デボラ・フランソワに1950年代の女性たちの体型と立ち居振る舞いを理解させるため、『麗しのサブリナ』『パリの恋人』『昼下りの情事』『マイ・フェア・レディ』に出演しているオードリー・ヘプバーンを参考にするよう指示したということで、衣装もタイプライターのデザインも、可愛らしくキュート。
[作品の特長③トレーニングのツール]
今でこそ、ワープロのブラインドタッチは当たり前だが、タイプライターの早打ちのために、『赤と黒』『ボヴァリー夫人』等の文学作品の打ち込みによる練習や、ピアノの演奏、ランニング等のトレーニングの素材が用意されている。また、色で使う指がわかる様にしたタイプライターへの工夫等も、何ともポップで可愛らしい。
[使用された楽曲達]
ピアノを教わる時にはドビュッシーの「月の光」がながれている。また世界大会に出場するためにパリに移動する時には、ジャズの「I love Paris」が流れていて、一貫してはいないが音楽も意識して使っている様に思われる。
また、オープニングは「タイプライター」の作曲者であるルロイ・アンダーソンの別の曲、エンドロールにはジルベール・ベコーの「タイプライター(La machine à Ecrire)」が流れ、愉快な演出になっていて、余計、この作品の魅力度が上がる。
「タイプライター」の曲も、楽しすぎる!