フランス映画と女たち特集から 「海賊のフィアンセ(La Fiancee du Pirate)」のご紹介
◆はじめに
2023年にアテネ・フランセ文化センター、映画館Strangerで開催された特集上映「フランス映画と女たち」を、東京日仏学院で「フランス映画と女たち Part. 2」として、8/23 ~9/1の6日間、日本未公開作を含む5作品が上映された。同時開催のアヌーク・エーメの「モデル・ショップ」(1968)も鑑賞を予定していたが、既に申し込みが終了していて残念だったが「落下の解剖学」のジュスティーヌ・トリエ監督の「ソルフェリーノの戦い」(2013)の方は、かろうじて観ることができた。
・アラン・タネール「サラマンドル」:未鑑賞
・ネリー・カプラン「海賊のフィアンセ」
・ジュリエット・ベルト、ジャン=アンリ・ロジェ「雪」 :未鑑賞
・ジャン・シャポー「盗むひと」<前回、Strangerでかろうじて鑑賞できた。>
・ジュスティーヌ・トリエ「ソルフェリーノの戦い」
◆◆[海賊のフィアンセ(La Fiancee du Pirate)](1969)
シュルレアリスト、アベル・ガンスの共同制作者としても知られる女性監督ネリー・カプランによる「現代の魔女狩りの物語」。田舎で周囲の者たちから搾取され続けてきたマリーは、売春によるこれまでの復讐を企てるという、武勇伝のお話になる。
主演のマリーはベルナデット・ラフォンで、ジョルジュ・ジェレ、ジュリアン・ギヨマール、ミシェル・コンスタンタン、ルイ・マル等の俳優が助演する。
今回の映画は、簡単に再度、観れる演目ではないので心苦しいが、仏語の動画だけでも、観て頂けると幸いです。
◆水々しいバルバラのシャンソンで小気味良い
日本でもあまり歌われない様に思われる、「Moi, je me balance」というシャンソンをバルバラが歌っていて、売春を行う際にも、レコードから、軽やかなバックミュージックとして流され、主人公が、自由気ままに行動できている様子が伺われ、聴いていて心地良い。
一応、ジョルジュ・ムスタキの曲の様だ。歌詞は「私はスイングします、風に身をささげて・・」といった内容。<バルバラの曲は1曲位しか歌っていないが、楽譜集には、この曲が入っていてラッキー>
シャンソンが映画にパワーを与えている事がよくわかる。
◆本作品の感想
ベルナデット・ラフォンは、まずしいジプシーの娘として暮らしていたが、どんどんリッチになり洋服も洗練されたものを着る様になり、美しくなっていく。家財道具などもそろえ、ポップな色合いで楽しそうに暮らすようになった。村人との諍いはエスカレートしても、そんなのは気にしない。したたかといっても、老人や貧乏人、まともな実業家の紳士にはちゃんとふるまっているのが立派。
男性俳優には、ベルモンド映画によく登場するジュリアン・ギヨマール、ミシェル・コンスタンタンが登場し親しみがわく。特にミシェルは感じよい紳士役として登場する。また有名なルイ・マル(監督)も登場し、若い貧乏人の役かと思うが見ごたえがある。
関連映画でご紹介する、ラフォンが主演のトリュフォー監督の「私のように美しい娘」はしたたかさが半端ではなかったが、本作では、復讐において、あくまでもコミカルに皮肉っているシーンは、むしろ爽快感を感じる。
ネリー・カプラン監督に関しては、エキセントリックなヒロインを取り上げた作品が多く、唯一無二の存在の様に思う。同じく関連作品で、「シビルの部屋」をご紹介する。
◆◆関連作品
◆ラフォンの懲りない悪女ぶり:「私のように美しい娘(Une Belle Fille comme Moi)」(1972)
トリュフォーの天才的映画話芸が堪能できる、悪女をめぐる懲りない男たちのおとぎ話。女性の犯罪心理を研究するため刑務所を訪れた社会学者スタニスラフは、そこでカミーユという女性をサンプルにすることにした。だが彼女のこれまで男性遍歴や犯罪の話を聞くうちに、いつしかスタニスラフはカミーユの魅力に囚われていた。
社会学者スタニスラフ役は、最近も「すべてうまくいきますように」等の多くの作品に出演している、アンドレ・デュソリエであったことを、後で知った。若いころの二枚目ぶりに納得する。
◆ネリー・カプラン監督の尖った作品:「シビルの部屋(Nea)」(1976)
16歳の少女シビルはポルノ小説を書こうと思い立つ。憧れの中年男に性の手ほどきを受け、その体験を本にしたところベストセラーになってしまう。執筆に協力してくれた男を真剣に愛するようになったシビルは、巧妙な罠をしかけて、男を陥落させようとするが……。多感な少女の性をユーモラスに描いた青春ドラマ。サミー・フレーやミシュリーヌ・プーレールがキャストを務めている。原作は「エマニエル夫人」のE・アルサン。