「自分の人生を生きたい」と願った影武者の物語
「SHADOW/影武者」
2018年公開 116分
監督:チャン・イーモウ
脚本:チャン・イーモウ
音楽:Loudboy
キャスト:ダン・チャオ
スン・リー
残虐な戦や権力抗争で命を脅かされていた王や貴族は
密かに身代わりを仕立て、それを「影」と呼んだ
「影」は命懸けで主君に仕えたが、史書に記されることはなく
その生も死も抹消され、知られることはなかった
(映画冒頭より引用)
今回は、チャン・イーモウ監督作品の中でもアクションシーンが特に大好きで、登場人物たちそれぞれの「混乱」の演出・演技に魅了された映画「SHADOW/影武者」をご紹介します
8歳の時に拾われ、「影」の人生を過ごしてきた男
親と生き別れとなり、孤児として彷徨っていたところを拾われた主人公
寝食に困らない生活を与えられるのと引き換えに、
彼は軍で最も強いツー・ユイの「影武者」としての役割を果たすことを命じられる
本物と何一つ変わらない振る舞い、話し方などを叩き込まれ、
本物が傷を追えば、血を流し、同じ場所に傷をつくる
厳しい訓練の甲斐もあり、
主人公は「影」として周囲の人々を完璧に欺いていた
そんなある日、ツー・ユイが申し込んだ敵国との決闘へ挑むことになる
「この闘いに勝てば、お前は自由の身だ」
という言葉を受け、主人公は闘いに向けて腕を磨いていく
影武者だとわかっているのは、妻たったひとりだけ
ツーユイに瓜二つの主人公
召使でさえも、影武者だということは気づかず、知らされてもいない
しかし、唯一ツー・ユイの妻シャオ・アイだけが影武者の存在を知っていた
「自分が何者なのか、混乱してしまう」
と思い悩む主人公に対し、
妻シャオアイは、ツーユイの影武者としてではなく、
1人の人間として優しく扱ってくれるたったひとりの存在
主人公が、そんなシャオ・アイに惹かれていくのは、ごく自然な流れだった
しかし、それは決して許されない想いでもあった
そんな気持ちを胸に秘めたまま
いよいよ「自由」をかけた、命懸けの決闘の朝を迎える
🐈ここミロポイント🐾
カラー映画なのに白黒(光と影)映画だと錯覚してしまうほど
徹底的に統一された色彩によって描かれた世界は、まるで動く水墨画
ひらひらと動きに合わせて舞う服の袖や、風になびく細い髪の毛も優美で哀しく
そのひとつひとつから、「影」として生きることへの主人公の恐怖や苦しみが伝わってくるようでした
また、決闘シーンでの、水を巧みに味方につけたアクションの美しさは
劇場で観なかった事を心から悔やんだほど湧き立つ場面で、
武器として使った鉄傘のこすれる音も含め、生々しく血みどろな名場面となっているので必見
「自分は一体何者なのか」と悩み苦しむ影武者の葛藤と、
その影武者に気持ちがうつろうツー・ユイの妻の混乱もまた、美。
後半にかけて畳みかけるスピード感溢れる展開には、
どんどん早まっていく自分の鼓動についていけなくなってしまうほど興奮しました
チャン・イーモウ監督が描く、光と影の世界、ぜひご堪能ください!
ミロシネマ🐾
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