座頭市(2003年版)
座頭市 平成15年(2003年)公開
第60回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞
北野監督作品「初の時代劇・リメイク作品」
座頭市制作オファーを受けた時には監督自身があまり乗り気ではなかった。名優「勝新太郎」の「座頭市」として定着していること。
男はつらいよ!で言えば山田洋次監督でない監督、車寅次郎を他の役者が演じることに等しい。
浅草ロック座の会長、故斎藤智恵子氏からのたっての希望で制作することになる。
斎藤氏は監督が修業時代にあこがれの存在でやくざに寝込みを襲われる事もあった「女傑」といわれた「浅草のママ」である。
そんなママに「勝さんの座頭市とは違うもので良いのか?」と尋ねると「仕込み杖と盲目」の設定であれば良いと快諾され、金髪で朱色の仕込み杖の設定した。
浅草の修業時代を活かしたチャンバラシーン。
フランス座の修業時代にストリップとの合間にコントの時間があった。その時にチャンバラコントで切られ役も演じていた。また監督の師匠、深見千三郎は時代劇俳優の片岡千恵蔵のもとで若手の時に殺陣(たて)の稽古もしていたため弟子である監督も殺陣の素養・経験を今作品で活かした。今作の殺陣師は二家本辰巳氏で格闘系の強いウルトラマンレオのスーツアクターの人。
ノワールからエンタメ路線へ
座頭市以前の作品ではどちらかと言うとノワール(虚無的・悲観的・退廃的)の作品が多かったが
今作ではエンターテインメントに振り切ったことで、コアなファン層以外からも支持を受け、興行的に大成功した。監督の分野である「笑い」の要素も魅力。
北野武監督作品 興行収入ランキング
第1位:『座頭市』(03年9月6日公開) 28.5億円
第2位:『龍三と七人の子分たち』(15年4月25日公開)16億円
第3位:『アウトレイジ 最終章』(17年10月7日公開)15.9億円
「圧倒感」と「高揚感」が同居した下駄タップシーン
劇場で観た時、「本来の映画の魅力」が詰まっていたシーン。 誰よりも一番、タップダンスの練習をしていた監督が出演していないエピソードもこのシーンを際立たせた。 最高!下駄タップ。
こだわった「音」
音楽監督は「あの夏、いちばん静かな海」から前作の「DOllS」までは久石譲が担当をしていたがこの座頭市から鈴木慶一へバトンが渡された。
農民がクワで畑や田んぼを耕すシーンでの効果音で耳に印象を持たせ、クライマックスの下駄タップと神楽のシーンに繋げている。
これまでのミニマムからリズムカルな音の世界へ。
北野作品との相性も良く、第27回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞、海外の映画祭では第36回シッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン)最優秀音楽賞を受賞する。