今観るべき作品は、これだ!
どんなホラーよりも恐怖を感じる
製作年:2024年
監督:アレックス・ガーランド
時間:109分
アメリカ大統領選のある、この時期に公開するいやらしさ。いやでも、アメリカの分断を描いたリアルな政治派ドキュメンタリー風映画に感じるだろう。ところがどっこい、そんな甘っちょろいもんではなかった。
ホラーよりも
怖い映画に初めて出逢った
ゾンビや終末期、戦争のヒトコワなど様々あるけれど、世の中の恐怖を全部詰め込んだような恐怖体験が出来る。それが、この作品だ。
そもそも、なぜアメリカが東西に分かれることになったのか、は余り描かれない。事実、世の中で本当に起きてる戦争も、本当の理由なんかほとんどわからない。それと同じだ。
レジェンド的な写真家リー(キルスティン・ダンスト)にジェシー(ケイリー・スピーニー)は内戦で自爆テロの瞬間に出逢う。もうキルスティンダンストンには貫禄さえ感じる。レジェンド写真家というのも納得の演技と風貌。様々な修羅場を乗り越えたんだろう顔に見えてくるんだから、凄い。
そしてケイリー・スピーニー。今年は凄いね、この子。『プリシラ』だし『エイリアン』だし。きっと今年最後の彼女だろうけど超売れっ子だわ。どこか昔のナタリーポートマンの雰囲気がある。ジェシーはこのリーに憧れ、戦場カメラマンになりたくてPRESSが集まるホテルにまで現れた。14ヶ月もインタビューを受けず、一方的に都合の良い話ばかりを垂れ流す大統領から、コメントを引き出すためにD.Cへ向かうリーとジョエル(ヴァグネル・モウラ)そこにリーの師匠にあたるサミー(スティーヴン・ヘンダーソン)そして、出逢ったばかりのジェシーが乗り込む。
ジャーナリスト達4人の
ロードムービー
ロードムービーという時点で間違いなく良い作品なんだが、途中の街並が何かに襲われ時が止まったようだったり、そうかと思えば内戦なんて知らん顔で日常を過ごす街もある。車が乗り捨てられてる場面は『クワイエットプレイス』や数あるゾンビ映画の一場面の様相もある。
最前線のように戦車があったり、政府軍との闘いを目の当たりにもする。ジャーナリストはその惨状を伝えて、常に自国へ警鐘を鳴らして来たのだ。しかし、今目の前で起きてる事はなんなんだ。ペンは剣より強かったんじゃないのか?ジャーナリズムとは何だ?
無力さも感じながら、ジェシーに昔の自分を見る。怖いもの知らずでアドレナリンが溢れて、シャッターが止まらない。最初はガソリンスタンドでビビって、カメラの存在すら忘れていたと言うのに。D.Cへ向かいながらジェシーの成長物語も描いていた。
最初に触れたが、これは恐怖の映画であり、それを最も顕著に描いたシーンがある。それは、何やら死体を山程埋めようとしている男(ジェシー・プレモンス)のシーンだ。
全部持ってく男、ジェシープレモンス
我々はPRESSだ、と言おうと何も関係ないと言わんばかり。いとも簡単に目の前で射殺。戦場に興奮していたジョエルでさえ、言葉に詰まる。そんな時に彼がふいに尋ねた。
どの種類のアメリカ人だ?
問われたジョエルは南米系だったし、たまたま冷やかしでその場に居合わせたジョエルの旧友達は、アジア人だった。このジェシーがイカれてて凄く良い。変なピンクの眼鏡も良かった。多分この風貌は『憐れみの3章』の「RMFはサンドイッチを食べる」あの時と似てる(髪型ね)。奥様(キルスティン・ダンストン)との共演でしたが、かなりヤバかったなぁ。ちなみにこの夫婦って、共演他でもしてますよね(『パワーオブザドッグ』)。このキャラクターですが、イスラムのISとか宗教で闘う人に似ていた。話が全く通じない恐怖だ。それにソックリで、何も心が動かない人間を演じていて、本当に強烈で素晴らしかった。
A24史上、1番の製作費
またこれは、A24作品だと言う事も言っておきたい。おまけに今までで1番の製作費を投じて作られたという。このクセは使用された楽曲センスにも表れている。恐らく後半の激戦は、音響の良い劇場なら物凄い臨場感だろう。まるであなたもリー達と一緒に、その場にいるように感じるはず。もしも観るなら、可能な限りDolbyやIMAXなどをオススメします。
逃げたくなっても責任持ちませんけどね。