Discover us

私の好きな映画

じょ〜い小川
2024/06/29 06:02

見どころはX JAPANの「紅」へのこだわり『カラオケ行こ!』

〈作品データ〉

2019年8月25日に行われたオリジナル同人誌即売会「COMITIA129」で頒布された同人作品が元で、KADOKAWAから単行本化され、コラボカフェまで展開した「カラオケ行こ!」を山下敦弘監督によって映画化したヤクザと中学生が織りなすコメディ映画。森丘中学校の3年生で合唱部部長の岡聡実はある日突然、四代目祭林組の若頭補佐の成田狂児と出会い、カラオケボックスに連れて行かれた聡実は成田の歌の先生になることに。成田狂児役を綾野剛が演じ、他齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、チャンス大城、RED RICE、八木美樹、後聖人、井澤徹、岡部ひろき、米村亮太朗、坂井真紀、宮崎吐夢、ヒコロヒー、加藤雅也、北村一輝が出演。

 

・1月12日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー

・上映時間:107分

・配給: KADOKAWA

 

【スタッフ】

監督:山下敦弘/脚本:野木亜紀子

【キャスト】

綾野剛、齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、チャンス大城、RED RICE、八木美樹、後聖人、井澤徹、岡部ひろき、米村亮太朗、坂井真紀、宮崎吐夢、ヒコロヒー、加藤雅也、北村一輝

 

公式HP:https://movies.kadokawa.co.jp/karaokeiko/sp/

 

〈『カラオケ行こ!』レビュー〉

原作はまるで知らなかったが、山下敦弘監督の新作だし綾野剛主演なので気になっていた『カラオケ行こ!』。変声期で悩みを抱える合唱部の部長の中学生としての話も、四代目祭林組のカラオケ同好会のようなヤクザコメディもキレの悪さを感じたが、X JAPANの「紅」に対するこだわりの一点に妙に納得する映画だった

 

基本的には真面目で中学の合唱部の部長を務める主人公・岡聡実と、組の組長主催のカラオケ大会の最下位を避けるために強引に聡実にコンタクトを取るヤクザの成田による真面目中学生とヤクザが織りなすおかしさはコメディ映画として十分に楽しめる。

 

合唱部のエピソードは山下敦弘監督作品で言えば『天然コケッコー』のように思春期のウネウネした悩みが満載。作中、聡実が箸休め的に「映画を見る部」でモノクロ映画を見るシーンはほっこりしていていい。それと綾野剛が演じる成田周りのヤクザエピソードはノリとしては金子修介監督作品『恐怖のヤッちゃん』に通じるヤクザコメディ。この映画はこの2つを見事に融合させているような感じだ。

 

しかしながら、中学や高校の合唱部の映画としては夏帆主演映画『うた魂♪』と比べると他の対戦校の描写がない部分で物足りないし、合唱部の曲自体あまり印象に残らない。あくまでも合唱部というより合唱部に所属する岡聡実のみを映しているので、彼の行動上やむを得ないが中途半端になっている。

加えて、ヤクザサイドも成田や四代目祭林組の面々の聡実による指南シーンは面白いが、大会自体はどうでもいいと言わんばかりに盛り上げりに欠ける。

 

その代わり、X JAPANの「紅」に対するこだわり、深堀りがちゃんとしている。冒頭パートを無理やり大阪弁翻訳したり、歌詞をより深堀り解釈したり、この曲を歌う上での正攻法の歌い方とやりがちな勘違いの歌い方、曲中の難しいポイントを完璧に把握しており、カラオケでこの曲をよく歌う筆者はかなり頷け、この映画の評価を持ち直している。

 

中学生のパートのオフビートな感覚に山下敦弘監督らしさを感じるが、中学生とヤクザの友情に終始したことでこじんまりとした映画になってしまった。が、X JAPANの「紅」や数々の歌謡曲カラオケソングのおかげでそこそこ楽しめる映画になっている。

コメントする