カンヌ映画祭 新作「首」公開記念。北野監督初の時代劇「座頭市」
座頭市 平成15年 2003年 公開
「音」にこだわった従来の「座頭市」とは別物の作品。
北野監督作品初の時代劇・リメイク作品。
座頭市制作のオファーを受けた時には監督自身があまり乗り気ではなかった。名優「勝新太郎」の「座頭市」として定着していること。男はつらいよで言えば山田洋次監督でない監督、車寅次郎を他の役者が演じることに等しい。浅草ロック座の会長、故斎藤智恵子氏からのたっての希望で制作することになる。
斎藤氏は監督が修業時代にあこがれの存在でやくざに寝込みを襲われる事もあった「女傑」といわれた「浅草のママ」である。
そんなママに「勝さんの座頭市とは違うもので良いのか」と尋ねると「仕込み杖と盲目」の設定であれば良いと快諾され、金髪で朱色の仕込み杖の設定した。
女傑・・豪快な女性の事。類義語で女帝
座頭市と北野武監督。
監督は座頭市を題材としたコントを深夜番組「北野ファンクラブ」のコーナーで行っていた。
追われてる娘がいて、座頭市(たけし)が敵を斬って行くうちに(見えていないため)、助けるはずの娘も斬ってしまう。途方に暮れた敵方の親分だけ残る。そのあと座頭市が「娘さん、行きましょう」といって手をつないだのは親分。ばれていけない!と思わず声色を使い「はい」とか細い声で歩いていくブラックなオチのコントだった。
その数年後に※本寸法の座頭市を映画で関わる。
※本寸法・・・言葉通りもともとの長さ、内容。
・北野監督が勝新太郎、十八代中村勘三郎と飲みに行った時に座頭市をみんなでやろうと勝が提案。
「いいか!座頭市は俺(勝新太郎)座頭二がたけしで、座頭三が勘三郎でやるんだ!」との話もあった。実現していたら勝の座頭市対金髪の座頭二、歌舞伎者の座頭三との対決が見られたかもしれない。
音楽監督はムーンライダーズの鈴木慶一。
音楽監督はあの夏いちばん静かな海から前作のDOLLSまでは久石譲氏が担当をしていたがこの座頭市から鈴木慶一氏へバトンが渡された。起用についてはギター好きのちょんまげプロデューサーの森氏が以前からムーンライダーズのファンでもあり、音楽・効果音のオファーを出した。
農民がクワで畑や田んぼを耕すシーンでの効果音で耳に印象を持たせ、クライマックスの下駄タップと神楽のシーンに繋げている。これまでのミニマムからリズムカルな音の世界へ。北野作品との相性も良く、第27回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞、海外の映画祭では第36回シッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン)最優秀音楽賞を受賞する。
浅草の修業時代を活かしたチャンバラシーン。
フランス座の修業時代にストリップとの合間にコントの時間があった。その時にチャンバラコントで切られ役も演じていた。また監督の師匠、深見千三郎は時代劇俳優の片岡千恵蔵のもとで若手の時に殺陣(たて)の稽古もしていたため弟子である監督も殺陣の素養・経験を今作品で活かした。今作の殺陣師は二家本辰巳氏で格闘系の強いウルトラマンレオのスーツアクターの人。
浅草時代に培った殺陣(たて)のシーン
The Blind Swordsman: Zatoichi (9/11) Movie CLIP - Zatoichi Kills Everyone (2003) HDより
座頭市の観て欲しいポイント!
- 常に盲目の市のそばにいるストーリーテラー的なガダルカナルタカの存在。
- ドラマ「ビートたけしの学問ノススメ」で共演した的屋の主人役柄本明の不気味さとボス感。
- 勝新太郎の座頭市とは違う作品に位置つけた「金髪と朱色の杖」衣装もこぎれい。
- 的屋の老人役の樋浦勉がまさかの○○○○。
- 時代劇と「下駄タップ」の爽快感な融合。
- 大衆演芸(三味線・踊り・神楽、悠玄亭玉八(ゆうげんてい たまはち)の太鼓もち芸)から浅草の匂いが漂う。
鑑賞後に思ったのは座頭市(ビートたけし)対丹下左善(豊川悦治)あたりがいいかも。
そして・・・令和5年(2023年)秋に時代劇「首」が公開予定。
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投稿を表示タップシーンの圧巻と最後の市の言葉がコミカルで好きですね
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