【蔵出しレビュー】令和版にアップデート『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』
※8月23日から公開の永瀬正敏主演、白石晃士監督作品『サユリ』にあわせて、白石晃士監督の過去作品のレビューをUPしました。尚、文章は公開当時のものを一部加筆・訂正したものです。
■戦慄怪奇ワールド コワすぎ!
《作品データ》
2012年から不定期ながらシリーズ作品が作られ、2014年以来9年ぶりの劇場公開映画になったフェイクドキュメンタリー&ホラー映画! ある日、怪奇系ドキュメンタリープロデューサーの工藤の元に1本の動画が送られる。それは若者3人が廃墟に訪れ、動画撮影をしている時のもの映像で、その映像に可能性を感じた工藤はかつての仲間を集め、動画撮影をした若者3人と自らが依頼した霊能者の鬼村伊三と共に廃墟に向かう。
工藤役の大迫茂生やディレクター市川役の久保山智夏、カメラマン役の白石晃士監督などシリーズお馴染みのキャストに加え、福永朱梨、小倉綾乃、梁瀬泰希、南條琴美、木村圭作、桑名里瑛、吉田悠軌が出演。
・新宿ピカデリー他全国ロードショー中!
・配給:アルバトロス・フィルム
・公式HP: https://kowasugi.com/
《『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』レビュー》
昨年も夏の終わり頃にWOWOWで放映していた「オカルトの森へようこそ」の劇場版『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』を公開して健在ぶりを発揮した白石晃士監督。その白石晃士監督の代表作「戦慄怪奇ワールド コワすぎ!」の久しぶりの新作となった今回の『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』。怖さ・不気味さは旧作と同様ながら、素人動画作成者やパワハラ、セクハラ等のコンプライアンスを押し出した作りなど、令和バージョンを強く意識した「戦慄怪奇ワールド コワすぎ!」シリーズに仕上がっている。
不気味な廃墟で目撃した「赤い女」の取材を軸に、動画撮影をする若者3人組と怪奇系ドキュメンタリー制作班3人の邂逅からのやり取りを中心に展開。大迫茂生が演じる工藤のやや上から目線な態度といかにも素人っぽいYoutuber(TikToker)3人組とのやり取りは同シリーズでは新しい味わいながら、シリーズの雰囲気に不思議と馴染んでいるし、市川の妙なジェンダー意識高めな物言いも令和の時代性と工藤のキャラを上手く絡ませた演出で、これらの令和バージョン要素から同シリーズのアップデートが感じ取れる。
これに加えて、クセが強い霊能者・鬼村伊三を入れてオカルト番組らしさを強めた。織田無道と宜保愛子とスプーン曲げで一世風靡した清田益章の雰囲気をミックスしたような鬼村を使えば使うほどかつての霊能者・オカルト番組オマージュたっぷりなコメディに仕上がっている。ただ、こういうキャラを使いすぎるとより作り込んだ劇映画っぽくなってしまい、同シリーズらしさが薄れてしまう。
肝心の「赤い女」は都市伝説というには微妙だし、その恐怖はやや強引。中盤以降からいくつか見られる場面演出も力技。今のところはシリーズのファンや白石晃士監督作品のファン向けといった趣だが、メジャー配給会社で作られるメジャー俳優を使った怖くないホラーもどきよりは確実に良い作品は作れている。