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私の好きな映画

昭和・平成シネマ画報 「愛の嵐」「タクシードライバー」

『愛の嵐』(1975)

イラスト 志賀コージ

ユダヤ人の少女がナチスの収容所時代に味わった恥辱の日々。戦後、幸せな結婚をした彼女は、かつて自分をもてあそんだナチス残党の男と思いがけず再会してしまう。運命の歯車が逆回転する。理解不能の衝動に抗えずに再びの性の海に溺れる2人。その背後では、ナチスの悪行の事実を抹消せんとするかつての党員らによって、2人に死の影が迫っていた。
全編を貫く倒錯の美学に心が戸惑う。これを監督したのが女性というのも、公開当時大いに驚かされました。劇中に流れる、この世のけだるさを全て背負ったような唄声は、身震いするような何とも言えぬ空気に包まれてしまいます。

 

 

『タクシードライバー』(1976)

イラスト 志賀コージ

これは幻覚か⁉  それともニューヨークの現実なのか⁉   理屈では追いつけない不思議な体験をしてしまったような魔性の魅力いっぱいの怪作‼   公開から半世紀近くが過ぎた今もなおカルト的人気を誇る、スコセッシ&デ・ニーロの出世作のひとつです。
70年代でしか作りえない、時代が吐き出した異物のようなこの作品は、後に続く数々の映画に多大なる影響を与えながら今に至るのです。繰り返し流れる印象的なアルトサックスの響きに酔わされながら、デ・ニーロの鬱々とした歯噛みの表情に不吉の影を読み、暗闇からぬうっと現れる黄色のボディのタクシーに不気味の風を嗅ぎ、″12歳の娼婦″のジョディ・フォスターの毒気を帯びた化粧に不意の官能を呼び起こされて、猥雑で不穏な街に、衝撃の結末が口を開けて待っていた!

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