Discover us

私の好きな映画

はじめ バッジ画像
2025/01/14 14:30

【ネタバレ】実は、始まりは四姉妹ではない”もう一人の阿修羅”『阿修羅のごとく』

Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』が1月9日(木)から配信開始され、"阿修羅"に隠された意味や昭和時代の”趣”にフォーカスした考察を綴る。「懐かしいヒューマンドラマ」「昔はこうだったのか」など、それだけでは終われない奥ゆかしさと、人間同士の距離感についても是非体験して欲しい。

※以下ネタバレを含みます


目次
事の発端は4人の姉妹ではない、”もう一人の阿修羅”
3つの顔(反抗期・思春期・青年期)を阿修羅の如し
人間同士の距離の近さと、ことわざや懐かしい行事の数々


■作品概要
宮沢りえ x 尾野真千子 x 蒼井優 x 広瀬すず。原作:向田邦子 x 監督:是枝裕和 x 企画:八木康夫
昭和を代表する家族劇の傑作「阿修羅のごとく」、時を経ても色褪せない魅力がそのままに令和に甦る!幸せそうに見えた四姉妹に突如訪れた家族の不穏。阿修羅のように、ときに争い、ときに笑う ーー 四姉妹それぞれが、本当の幸せに向き合っていく現代版ホームドラマ。

 

■あらすじ
ある冬の日。竹沢家の四姉妹が久しぶりに集まった。生け花を教える長女・綱子、専業主婦の次女・巻子、図書館で司書として働く三女・滝子、そしてウエイトレスの四女・咲子。滝子の話では、母・ふじと暮らす老齢の父・恒太郎には愛人と子どもがいるという。信じられないとは思いつつ、母の耳には入れないことを誓い合う4人。しかしこの騒ぎをきっかけに、女性たちの日常に潜む、さまざまな葛藤や秘密が明るみに出る。


事の発端は4人の姉妹ではない、”もう一人の阿修羅”


本作のメインで登城するは宮沢りえ・尾野真千子・蒼井優・広瀬すずの四姉妹だが、事の発端を担うのは父・恒太郎だ。1979年と1980年にNHK総合テレビで放送された向田邦子脚本のテレビドラマで、後に脚本が文庫化され、2003年に映画化(森田芳光監督)、2004年に舞台化された作品を知らない限りでは、てっきり四姉妹が起こすドラマかと思うだろう。特に本作のキーパーソンである母・ふじについても”阿修羅のごとく”様々な一面を発揮する。

「火のないところに煙は立たない」

作中でも上記台詞が登場するように、父・恒太郎を発端に四姉妹それぞれの人生の中で成長する。静かで落ち着いた母・ふじは四人姉妹と父・恒太郎の中でも最も起伏が穏やかなキャラクターだが、煙が立ち上る”父親の不審な行動”から、火が出た瞬間の"おもちゃの車"のシーンは全7話通して観ても、最も印象的だったと言える。ここだけでは一種の人間ドラマとしてとらえられるが、”阿修羅”に着目して更に作品を深堀りをしてみる。


3つの顔(反抗期・思春期・青年期)を阿修羅の如し


”阿修羅”とは三面六臂(さんめんろっぴ)、つまり顔が3つに肘(腕)が6本ある阿修羅像を指します。インド神話で戦闘を好む鬼神・仏法の守護神としても有名だが、今回は三面(3つの顔)について考察してみる。

■生け花を教える長女・綱子
~反抗期~
不倫状態を知る次女・巻子から指摘を受けるも、自分のやりたいように人生を生きる。
~思春期~
一度は自身で不倫を解消しようとするも、思いのままに不倫を続けて人生を謳歌する。
~青年期~
お見合いを試み、男性と人形浄瑠璃の鑑賞する第一歩を踏み出す。

専業主婦の次女・巻子
~反抗期~
夫・鷹男が秘書と不倫関係にあると思い込み、自暴自棄になる。
~思春期~
母・ふじが隠し持っていた性描写のある用紙を発見し、自己投影する。
~青年期~
夫・鷹男の秘書が結婚式を終えつつも、疑いを晴らさない。(ある意味反抗期)

■図書館で司書として働く三女・滝子
~反抗期~
四女・咲子への劣等感や新しく出会う主人への周りからの視線や思い込み。
~思春期~
男女関係に恥じらいを持ち、自信を持てない恋愛期。
~青年期~
子どもを授かったときの安定感と、四女・咲子との仲が戻る成長。

■ウエイトレスの四女・咲子
~反抗期~
ボクサーを目指す陣内を信じるも、周りから反対され葛藤する時期。
~思春期~
ボクサーで一喜一憂していた陣内の敗北により、瞬間的な他人との不倫。
~青年期~
強がりや傲慢さを捨て、夫・陣内と子どもに目を向け再出発する。
 

それぞれの成長と共に、主題である”阿修羅”の3面性が垣間見える本作は、分解して四姉妹それぞれにフォーカスして鑑賞するのも一興だ。
 


人間同士の距離の近さと、ことわざや懐かしい行事の数々


今の時代は報告・連絡・相談など痴話喧嘩までスマホや電話で何度もやり取りできる世の中。本作の時代設定は昭和であるが故に、情報伝達が固定電話と噂である。家にいるかいないか、職場にいるかいないかでその人が何をしているのか”不安やネガティブな妄想”が繰り広げられる。また、噂話でさえ本当に起きたかのように一気に広がるため、今の時代とのギャップを大きく表現していると言える。

そして、何と言っても四姉妹の掛け合いの上手さ。掛け合いといった順序や決め事では決して表現しきれないほど、巧妙で息の合った姉妹トークは感心させられる。台詞同士が被っていながらもお互いが内容を理解し合ったり、”余計な一言”に反応する演技力?対応力?が自然に行われているのは如何に役者が高度な技術と経験を持っているかが分かる。

さらに、人間同士の距離の近さもこの時代の特徴として描かれている。探偵を依頼した先の男と結婚、職場の秘書との不倫疑惑、生け花を飾る料亭の旦那との不倫など限られた行動範囲と人間関係もこの時代ならではの出来事と言っても過言ではない。
 

また、各話でサラッと出てくることわざや比喩表現があることにお気づきだろうか。
エピソード1では「桃太郎」、エピソード2では「国定忠治」、その他にも夏目漱石『虞美人草』や女の人用の性描写の用紙など昔の出来事や行事・ことわざなども散りばめられているところも、時代背景を忠実に再現しているように思える。


■出演
【キャスト】
宮沢りえ
尾野真千子
蒼井 優
広瀬すず
本木雅弘
松田龍平
藤原季節
内野聖陽
國村 隼
松坂慶子

【スタッフ】
原作・脚本  向田邦子
監督・脚色・編集  是枝裕和
企画・プロデュース  八木康夫
プロデューサー  福間美由紀 北原栄治 田口聖
音楽  fox capture plan
撮影 瀧本幹也  照明 藤井稔恭  録音 冨田和彦
美術 三ツ松けいこ 布部雅人  装飾 龍田哲児 羽場しおり

衣裳デザイン 伊藤佐智子  ヘアメイク 酒井夢月
音響効果 岡瀬晶彦 長谷川剛  助監督 松尾崇  スクリプター 押田智子
制作担当 後藤一郎  ラインプロデューサー 菊地正亮
制作プロダクション  分福
製作  Netflix

Netflix話数:全7話(一挙配信)
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/jp/title/81759233
Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』1月9日(木) Netflixにて独占配信開始

コメントする
1 件の返信 (新着順)
U子
2025/01/14 17:45

向田邦子のドラマ、物悲しくてなんか好きなんですよね☺️
昔は長女は必ずと言っていいくらい田中裕子さんが演じていました。
一番控えめで落ち着いているけど、一番ドロドロした過去を持っていて…今は、宮沢りえさんが引き継いで、ハマり役だな〜と思ってます。田中裕子さんも宮沢りえさんも恋多き女優で波瀾万丈なので、そういう部分も演技に深みが出そうだとキャスティングされたのかな??
それにしても、これだけ繊細な女心を映し出したドラマをはじめさんが解説するのがなんだか不思議w🤭


はじめ バッジ画像
2025/01/14 23:43

昨年から『極悪女王』や『さよならのつづき』を観て、ガッと一気見する楽しさにハマって、『阿修羅のごとく』もやってみようと☺️ 過去作を観れてないので、比較考察ができない分、新鮮な解説を書いてみました♪確かに!笑 どちらかというと旦那側ですからね😂