アメリカ最初の国際的な音楽家バーンスタインの伝記映画 「マエストロ:その音楽と愛と」
音楽映画「マエストロ:その音楽と愛と(MAESTRO)」
「アリー/ スター誕生」のブラッドリー・クーパーが、アメリカを代表する世界的指揮者・作曲家のレナード・バーンスタインを演じ、自ら監督として、その生涯を描いたNetflix映画。女優でピアニストの妻フェリシア・モンテアレグレ(キャリー・マリガン)との関係を軸に、2人が歩んだ紆余曲折に満ちた愛と葛藤の人生を情熱的に描き出していく。
レナード・バーンスタインはどんな音楽家?
映画でも、その半生がリアルに表現されている。レナード・バーンスタイン (Leonard Bernstein、1918年- 1990年)はユダヤ系アメリカ人の指揮者・作曲家で、ピアニストとしても知られている。カラヤンと並び、20世紀後半のクラシック音楽界をリードしてきた音楽家(ちなみにアメリカの音楽ではサミュエル・バーバーがいる)。愛称はレニー。妻はチリ出身の女優でピアニストのフェリシア(1978年に逝去)。
彼は1951年に結婚したフェリシア夫人との間に3児をもうけ、病床に伏した夫人が癌だと判明すると献身的に看護するなど、妻を深く愛していたが、その一方で自らの同性愛傾向を隠さなかった。
1943年11月に病気のため指揮できなくなった大指揮者ブルーノ・ワルターの代役としてニューヨーク・フィルを指揮した。先ごろ逝去した小澤征爾や佐渡裕など多くの弟子を世に送り出したことでも知られる。
作曲家としての功績
指揮者としてのみではなく、初期はブロードウェイ・ミュージカルで音楽活動の基盤を築き、その分野で人気作曲家になっていた。一方で、シリアス・ミュージックの作曲家としては、交響曲第1番『エレミア』、交響曲第3番『カディッシュ』など、ユダヤ教の影響を受けた宗教的作品を残している。ミュージカルシアター作品として書き上げた『ミサ』は大衆性と宗教的モティーフとの両面を統合した点で、作曲家バーンスタインを象徴する作品。ミラノ・スカラ座をはじめトップクラスの歌劇場で上演されるようになった。
SNSでの作曲家紹介シリーズ(2020・21) 2020年6月から1年間、フランス等の主な作曲家のメモリアルに合わせ、Facebookで、月4名位の作曲家と作品の紹介を継続していた。その中の8月のバーンスタインの投稿と画像を引用する。 【8/25 レナード・バーンスタイン(1918.8.25–1990.10.14)の誕生日】 声楽コンサートを聴きに行くと、どなたかが必ず『キャンディード』のゴージャスなアリアを歌われるので知ってはいるがミュージカルの一つ位に思っていた。 ■原作「カンディード」(ヴォルテール)/オペレッタ(1956年初演/1989年最終改訂) 原作がフランス古典文学となれば看過できない(笑)。哲学的というか、作品は面白い。YouTubeでバーンスタイン指揮のロンドンの演奏会形式のコンサート(1989)を聴いてみて、恋の相手のクネゴンデの歌うアリアの意味は辛らつだが「Glitter And Be Gay」は華やか。その前の“Paris Waltz”も素敵な曲★逝去直前の演奏会形式のコンサートは、かえってオペレッタ形式よりマエストロの指揮と熱い音空間にインパクトがあった。 ■交響曲第2番『不安の時代』(1947-48) マエストロ自身作曲の3つの交響曲のうち、戦後のこの作品は、まさに現下のコロナ禍に符合した曲。暗い曲だけでなく、「仮面舞踏会」は楽しく、「エピローグ」はラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」に似ていて郷愁と哀愁を誘う曲で終わる。 ■映画音楽「波止場(On the Waterfront)」(1954) 比較的尺が短く聴きやすい。やはり哀愁があり日本的な感じがする。今年になりマーロン・ブランドの映画を5本観たが、機会があれば鑑賞してもよいかな・・。 ■歌曲「La Bonne Cuisine(おいしい料理法)」(1948) フランスのデュモン作詞の仏(英)語の小品。ポエティックではないミヨーの「花のカタログ」の様な作品だが、プーランクものの様に早口言葉でまくし立てて歌っている。YouTubeでも料理の場面でうたわれている。 |
この作品の印象
伝記ものなので事実に忠実ではあるが、レニーとフェリシアとの出会いと幸せな生活が描かれるも後半は双方の気持ちにずれが生じていたが、私生活では最後迄、愛を貫いた様子が描かれ、一人の芸術家の豊かな感性と音楽活動をとどめた良い作品として仕上がっている。ミサが出来上がった時の歓びの描写は印象的だった。欧州ではなく、昔のクラシック作曲家とも違うので、より身近に感じられた。
映画に登場する楽曲
映画全体では、バーンスタイン自身の指揮による楽曲が使用されている様だが、「ベニスに死す」にも登場するマーラーの交響曲第5番の第4楽章「アダージェット」が使用されており、この曲も得意にしたことがわかる。
関連映画
(1)「愛と哀しみのボレロ」(1981、クロード・ルルーシュ監督)
バーンスタインと比較されるというカラヤンの方は作曲より指揮者としての活動がメインで、日本では最も知られている海外の指揮者といえる。「愛と哀しみのボレロ」に登場するドイツ出身の指揮者はカラヤンをモデルにしている様だが、NYでの公演は聴衆者がなく、ヒトラーの前で御前公演をしたことでユダヤ人に報復されたシーンを、皮肉にも思い出した。
(2)「波止場」(1954、エリア・カザン監督)
フランス映画の鑑賞を優先してはいるが、是非、映画音楽といっしょに、鑑賞したい。
その他
それにしても、特殊メイクによりバーンスタインとフェリシアにそっくりな俳優・女優がキャスティングされ、超リアル感が高い。芸術家同志のカップルという意味では、会話等も文化的な香りがする。
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投稿を表示関連作品との関係まで、鑑賞して分からなかったのでとても勉強になります☺️機会があれば観てみます✨