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私の好きな映画

じょ〜い小川
2024/07/01 19:37

「ゲームストップ株騒動」の盛り上がりっぷりが伝わる『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

〈作品データ〉

アメリカで2020年から2021年に起こった「ゲームストップ株騒動」を題材にしたベン・メズリックのノンフィクションを『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』や『クルエラ』を手掛けたクレイグ・ギレスピー監督が映画化したコメディ&ヒューマンドラマ。2020年に個人投資家でユーチューバーのキース・ギルは「ローリング・キティ」名義でYouTubeやネット上で倒産寸前のゲーム小売の会社ゲームストップの株を買うことすすめ、これを見た素人の個人投資家達がゲームストップの株を飼うようになり、株式市場界隈がにわかに騒ぎ出す。主人公キース・ギル役をポール・ダノが演じ、他ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セバスチャン・スタン、シャイリーン・ウッドリー、セス・ローゲンが出演。

 

・2月2日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー

・上映時間:105分

・配給: キノフィルムズ

 

【スタッフ】

監督・製作:クレイグ・ギレスピー/脚本・製作総指揮:ローレン・シューカー・ブラム、レベッカ・アンジェロ

【キャスト】

ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セバスチャン・スタン、シャイリーン・ウッドリー、セス・ローゲン

原題:Dumb Money/製作国:アメリカ/製作年:2023年

公式HP:https://dumbmoney.jp/

 

〈『ダム・マネー ウォール街を狙え!』レビュー〉

基になった「ゲームストップ株騒動」は知らなかったが、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』や『クルエラ』を手掛けたクレイグ・ギレスピーの監督作品ならいくらか面白いだろうと思って見てみたポール・ダノ主演、クレイグ・ギレスピー監督作品『ダム・マネー ウォール街を狙え!』。株取引の用語で一部分かりにくい所はあったが、ポール・ダノが演じる「ローリング・キティ」ことキース・ギルが中心となった「ゲームストップ株騒動」の顛末をキース・ギル&個人投資家目線とヘッジファンド目線を交互に交えた展開で空気感が伝わり、わりと楽しめた。

 

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』の時もそうだったが、クレイグ・ギレスピー監督はその時代の空気感を作り出すことが上手い。それを今回は2020年後半から2021年4月に蒔き起こった「ゲームストップ株騒動」を軸に、当時のコロナ禍の様子と音楽・ファッションなどをまぶして作り上げた。それも主人公となるキース・ギルのみの物語にせず、ゲームストップ株を買った何人かの素人個人投資家の視点と、被害を被ったヘッジファンドらの視点を交えた群像劇で展開し、「ゲームストップ株騒動」がよりムーブメントとして見る者に伝わる。

 

これにポール・ダノが演じた「ローリング・キティ」ことキース・ギルの変なキャラクターもいい。一応、家庭も持ち家もあるそこそこのサラリーマンでありながら、安いビールを愛し、なぜか猫がプリントされた上着をいつも着ているボンクラユーチューバーで、ほとんどの持ち金を倒産寸前のゲーム小売の会社につぎ込むというギャンブラーでありながら、悲壮感ゼロでユーチューバーにありがちなノリで楽しんでいる。むしろ、彼の動画を元にゲームストップ株を買ったり、保有を続ける女子大生や看護師などの素人個人投資家の方が「どうする?まだ売らない?」とか「売らないと大損するんじゃない?」という焦燥感があり、そこがまた「ゲームストップ株騒動」の一つの風景になっている。

 

それはやがて株取引のプロのはずであるウォール街のヘッジファンド連中にもふりかかり、彼らのアッパーな暮らしと、「ゲームストップ株騒動」を受けての「実は…」みたいな状態になる様子も面白く、まさしく騒動になっている。キース・ギル&素人個人投資家らとヘッジファンド連中の直接的な交わりはなくとも個人投資家VSヘッジファンド連中の構図は徐々に出来上がっている。

 

さらに映画を見ていて気がついたが、オリバー・ストーン監督作品の『ウォール街』ではニューヨークの証券マンが大物投資家一人に対して極秘裏に情報をもたらして成功しようとしたのに対して、『ダム・マネー ウォール街を狙え!』では不特定多数の素人の投資家に対してYouTubeやネットなどオープンな情報で株価が上がり、逆に大物投資家達がとんでもない損害を被るという真逆の現象が描かれている。ここまで真逆だと、ひょっとしたら本作は『ウォール街』を意識して真逆に描いた可能性も考えられる。

 

実話ベースだから実在の人物や音楽を知ってたらより楽しめたのかもしれないが、そうでなくてもキース・ギルのボンクラぶりと「ゲームストップ株騒動」の盛り上がりっぷりは伝わり、そこはクレイグ・ギレスピー監督の手腕と言えよう。

株取引に興味がある方もそうでない方も「ゲームストップ株騒動」を味わえる作りになっている。

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