キャノン・フィルムズによるスタローンのトラック野郎&アームレスリング映画『オーバー・ザ・トップ』
■オーバー・ザ・トップ
《作品データ》
『デルタ・フォース』シリーズや『地獄のコマンド』、『燃えよNINJA』シリーズなど、80年代のアクションやB級映画を手掛けてきたキャノン・フィルムズの総帥メナヘム・ゴーランが監督・製作、ヨーラム・グローバスが製作のシルベスタ・スタローンが主演のアームレスリング大会を軸にしたアクション映画!トラック運転手のリンカーン・ホークは元妻で病床のクリスティーナから陸軍幼年学校を卒業しら寮生活を終えた息子マイケル・カトラーを迎えに行き、トラックに乗せて、遠く離れたクリスティーナが入院する病院へ。リンカーン・ホーク役をシルベスタ・スタローンが演じ、他デビッド・メンデンホール、ロバート・ロッジア、スーザン・ブレイクリー、リック・ザムウォルト、クリス・マッカーティ、テリー・ファンク、ボブ・ビーティー、アラン・グラフ、マジック・シュワルツ、ブルース・ウェイ、ジミー・キーガン、ジョン・ブレイデン、トニー・ムナフォ、ランディー・ラニー、ポール・サリヴァン、ジャック・ライト、サム・スカーバー、スコット・ノートンが出演。
・公開日: 1987年2月14日
・配給:東宝東和
・上映時間:94分
【スタッフ】
監督・製作:メナハム・ゴーラン/脚本・主演:シルベスタ・スタローン/脚本:スターリング・シリファント
【キャスト】
シルベスタ・スタローン、デビッド・メンデンホール、ロバート・ロッジア、スーザン・ブレイクリー、リック・ザムウォルト、クリス・マッカーティ、テリー・ファンク、ボブ・ビーティー、アラン・グラフ、マジック・シュワルツ、ブルース・ウェイ、ジミー・キーガン、ジョン・ブレイデン、トニー・ムナフォ、ランディー・ラニー、ポール・サリヴァン、ジャック・ライト、サム・スカーバー、スコット・ノートン
《『オーバー・ザ・トップ』考察》
「渥美清の泣いてたまるか」以外はすっかりアラフィフおじさんの80年代orアラウンド1990年回顧録となってしまっている。これは筆者としてはあくまでも好きなものの一つではあるが、ま、いいかなという感じで、今、書いている。ということで、今回はシルベスタ・スタローンの主演映画で、『ロッキー』シリーズ、『ランボー』シリーズにも劣らない代表作の一つ、『オーバー・ザ・トップ』である。
なんと、あろうことか、筆者はこのシルベスタ・スタローンの代表作を見ていなかった。これまでの『摩天楼はバラ色に』や『ブルーサンダー』なら見ていなかったというのもある意味まだ分かるが、この『オーバー・ザ・トップ』は当然見てた人もボクの周りにはわりといた。ましてや、テリー・ファンクやまだプロレスラーになる前のスコット・ノートンが出ているなど、跡追いでも十分に見るチャンスはいっぱいあった。なのに見逃している。
これは筆者だけでなく、当時小学生〜中学、高校生だった方にあるあるな現象なんだけど、例えば80年代のビッグタイトルの『ロッキー』シリーズや『ランボー』シリーズ(あ、見てないやつある…)、『トップガン』などシルベスタ・スタローンやトム・クルーズといったビッグスターのヒット作を見てないという方が意外と少なくない。しかも、筆者と同じく映画に関わる仕事をしている人でも、だ。
それと、レンタルビデオ屋に行っても『男はつらいよ』シリーズや『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ、『トラック野郎』シリーズといった邦画かWWF(現WWE)の「レッスルマニア」シリーズなどアメリカンプロレスに流れたりするので、『オーバー・ザ・トップ』を微妙に見逃していた。
それに筆者が本格的に映画にのめり込んだのは27になってからなので、それまではそれなりにでしか見てなく、当然ほとんど後追いになる。名作と言われる映画や監督、映画賞受賞作品でだいたいはカバー出来るが、中にはカバーしにくいものがある。その一つがメナヘム・ゴーランとヨーラム・グローバスによるキャノン・フィルムズの作品である。チャック・ノリス主演の『デルタ・フォース』シリーズや『地獄のヒーロー』シリーズ、『ロマンシング・アドベンチャー/キング・ソロモンの秘宝』、『ニンジャ』シリーズなど、よほどチャック・ノリスやショー・コスギやマイケル・ダグラスのファンでなければ見ないんじゃないかというリストだが、そんな中にシルベスタ・スタローンの主演映画もあり、それが『コブラ』とこの『オーバー・ザ・トップ』になる。
『オーバー・ザ・トップ』はキャノン・フィルムズのトップだったメナハム・ゴーランが監督と製作を、相棒のヨーラム・グローバスが共同の製作となり、スタローンは「お金のためにやった」と言い、脚本と主演で1200万ドルでやっている。なので、ゴーランとグローバスが主導のスタローン映画となる。
映画は前半後半で大きく違う。最初はこまっしゃくれたマイケル少年とどこから見てもワイルドなトラック運転手のリンカーンの凸凹コンビのロードムービーで、中盤からアームレスリング大会が中心となる。この前半パートのノリは『トラック野郎』と『子連れ狼』を併せたようなヒューマンドラマ&コメディなのでこのままの展開でも良かったが、アームレスリング大会を中心にすることで今度はアームレスリング版『ロッキー』のような展開に様変わりをしている。
後半をアームレスリング大会中心にすることで、いい意味でスカッとシンプルな展開にし、よりスタローン映画らしいものにしている。というのも、前半のアメリカ版『トラック野郎』もそれはそれで悪くはないし、このスタローンによる生意気な子供へのワイルド教育も面白い。まさしく80年代の丸大ハムのCMの「わんぱくでもいい逞しく育ってほしい」を地でいったようなワイルド教育はシルベスタ・スタローンらしくていいんだけど、確かにこのノリのままで最後まで行ったらワイルドな人が主演のヒューマンドラマになってしまうからアームレスリング版『ロッキー』にしたのは正解と言えよう。
そのアームレスリングのシーンでは世界大会5連覇のリック・ザムウォルトを堂々と使う他、カメオではスコット・ノートン、さらにジェイソン・カトラーの用心棒役としてテリー・ファンクがわりと出ている。
今ではSpotifyで『オーバー・ザ・トップ』のサウンドトラックも聴けるが、ロビン・サンダーやサミー・ヘイガー、ケニー・ロギンスといかにも80'sなサウンドでどれも良い。特にロビン・ザンダーの「In this country」はアップテンポではないが、ワイルドな男と少年のヒューマンドラマのテーマ曲としてはピッタリ。
わりと見たまんまの映画なので、昔見たとしても今見直したとしても、印象は然程変わらないかと。80年代に隆盛を極めたゴーラン&グローバスらキャノン・フィルムズの作品と考えれば脚本もキャスティングも音楽の使い方もまとまりがいい。