召使はみた、マフィアの女の悲劇
「上海ルージュ」
原題:揺啊揺,揺到外婆桥
1995年公開 109分
制作国:中国・フランス
監督:チャン・イーモウ
音楽:チャン・クワンティエン
キャスト:コン・リー、リー・パオティエン他
「あの人は私の歌を好きだと言った」
はじめに言っておくと、ラブストーリーではありません
ただし、この台詞はとても重要な言葉で、“あの人”が誰なのか、“どんな歌”なのかが、
物語の歯車が大きく動くカギとなっています
今回は、一味違ったエンドロールの演出により、他では味わったことのない“静かな恐怖”を体験した映画「上海ルージュ」をご紹介します
少年の目から見た、“大人の世界”
主人公である少年の「目線」で繰り広げられるストーリー
まだ幼いながらも、叔父の紹介で上海マフィアの下で働くことになった少年は、「お嬢」と呼ばれるボスの情婦の召使としての役割を命ぜられる
「女と寝た事あるかい?」
初対面から容赦ない質問を投げかけるお嬢に対し
「あります。幼い時に、母と。」
と何の穢れもない答えをする純情な少年
答えを聞いたお嬢がクスっと笑った理由はわからないまま、
彼女の身の回りのお世話をすることに
華やかだけど、どこか寂しそうなお嬢の「裏切り」
少年が働きはじめてとりあえずわかったことはお嬢が性格がきつくわがままなことと、
ボスには絶対逆らってはいけないということ
召使である自分を、文字通りこき使う彼女にヘトヘトになりながら働くも
ショーで煌びやかなドレスを着て歌うお嬢の美しさは、少年の目にもしっかりと映る
華やかな脚光を浴び、裕福な暮らしをしているのにもかかわらず、
どこか寂しそうで、あんまり幸せそうには見えない彼女は
実は水面下でボスの手下と親密な仲だった
ボスの女でありながらも、お嬢の心の中には別の男性がいたのです
抗争が激化、島への避難が予想外の結末へと走りだす
マフィア同士の闘いが激化し、逃げるように島へと一時避難することになった一行
そこには島の住民である親子(母娘)がひっそりと暮らしており、
彼女たちが、マフィアの食事などの面倒をみることになっていた
部屋にこもりっきりで退屈になったお嬢は、召使である少年とともに
島の周辺を散歩し島民である親子と会話をするうちに仲良くなっていく
「私も本当は田舎出身なの」
初めておだやかでのびのびした表情を浮かべるお嬢に親しみを感じ、少年は次第に彼女を慕っていくが、そんな平和なひとときも束の間、恐ろしい出来事が、彼らを待ち受けていた
🐈ここミロポイント🐾
最初は性格のきつさが目立ったお嬢が、島へ移動してから人間味溢れる姿を見せた瞬間、
少年と同じく観ている側も、とてつもない親しみを抱いてしまうところに、この作品のあたたかみを感じます
また、お嬢を演じたコン・リーが、静かに泣くときの表情は必見
どこか懐かしさを感じさせる音楽は、後に訪れる恐怖とミスマッチになっており余計に怖さが強調されて、ぞくぞくしました
監督ご本人は本作を、あまり気に入っていないと明言されているそうですが、
スモッグのかかったようなキャバレーのレトロな空気感や、きらびやかな衣装、
そこでうごめくゾッとする人間模様などが味わい深く、
私は初めて観た時から大好きな作品です
なかなか他の映画では観たことない、エンドロールのとある「演出」で静かな恐怖を味わってみてください
ミロシネマ🐾
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