私の好きな映画

「フォレスト・ガンプ/一期一会」から30年以上も経ったと思うと、
まさに「光陰矢のごとし」😮
（↑本作「HERE 時を超えて」の主人公リチャードもつぶやいていました）

再集結した「ガンプ」の監督ロバート・ゼメキス×脚本エリック・ロス、そしてトム・ハンクス＆ロビン・ライトから届けられたのは、定点カメラで描いた異色作。現在60代後半のハンクス、50代のライトは、VFX技術により数千枚のアーカイブ画像をもとにデジタルメイクを施し、ティーンから老齢の役を演じています。

ある地点「HERE」の太古～現代

生まれ故郷から、都会へ、海外へとダイナミックに舞台が変化した「ガンプ」に対し、本作は地理上のある地点（近代以降はそこがアメリカ北東部のペンシルベニア州内に位置するとわかる）で、同じ向きに視点を据えたまま進行します。
それこそ、大地が誕生し、氷河期、原始時代などを経てネイティブ・アメリカンが登場し‥
とその地点を太古の昔から描いており、ＣＧに負う部分は大きいのかもしれないと思いつつ、とても面白くみることができます。

1900年になるとその場所に住宅が建てられ、以降はリビングルームにおける室内劇に。
ただ一つ所といってもグランド・ホテル形式のようなドラマとも違い、メインのアングルは引くことも寄ることもなく、常に静観するかのように、全編ほぼ固定されたままです。役者をはじめとする被写体が近づいたり遠のいたりすることによってのみ、引き・寄りの画が生み出されます。
それでも単調な映像とはならず、むしろ次から次へと時代を行き来して変貌する世界に目が離せません✨

人間の感情を含む万物流転の美

本作には、この地点で生きた幾つかの家族が登場します。
なかでもメインとなるのは、第二次世界大戦の帰還兵アル（ポール・ベタニー）と妻のローズ（ケリー・ライリー）、その息子リチャード（トム・ハンクス）と彼の妻マーガレット（ロビン・ライト）の2世帯一家です。彼らは一般的な中流家庭で、その姿に多くの人が自身を重ねられそうな、ごく普通の人物たちです。

リチャードが18歳の時、ガールフレンドであるマーガレットの妊娠が判明。彼女を迎えた、2世帯の暮らしが始まります。
画家を志すことを諦めサラリーマンになったリチャード、義理の両親と同居し子育てや介護にまで励んだマーガレット、ともに生活のために夢を封印して数十年。彼らだけでなく、彼らの親世代も家族のために身を捧げてきたことでしょう。
一家の中心であるリビングルームは、喜び悲しみ、うれしさやいらだち、怒り‥あらゆる感情、言葉が発せられた愛すべき場所ながら、マーガレットは長年「ここを離れたい」という思いを抱いて止みません。そんな彼女がラストに発した一言に、万物流転の美しさが集約されているかのようで、Black Cherryは号泣してしまいました。

真正面席からの鑑賞がオススメ

本作はイラストレーター、デザイナー、コミック・ブック・アーティスト、ミュージシャンなど、多岐にわたり活動するリチャード・マグワイアのグラフィック・ノベル「HERE」を原作としています。アメリカ発祥のグラフィック・ノベルは、マンガ形式のビジュアルブックで、文学に近いものも多いようです。

原作「HERE」はリビングルームの角を見開きの中央に見据えたイラストから成るもので、本作はその角を若干右に動かし、アングルを変更しています。
メインのアングルは固定されながら、画面に大小複数のフレームが浮かんでは消え、過去・未来を行き来する演出は、原作同様。リチャードによる絵も、小さなフレームのごとく彼の心象を描いているのかもしれず（再度みて確認したいです）‥そうしたディティールは、スクリーンでみるとより掴みやすいかもしれません。また、全編ほぼ同アングルの画面は、真正面からとらえてこそ、と感じますので、映画館で鑑賞する場合は真ん中のシートがオススメです‥！