2024年に観た映画(43) 「スオミの話をしよう」
三谷さんの舞台を初めて観たのは1997年に上演された「君となら〜Nobody Else But You '97」。以後、入手困難なこの人気作家の舞台のチケット争奪戦には毎回参戦する事となりました。
一方で三谷さんが脚本・監督を担当する映画はというと、監督1作目の「ラヂオの時間」を観て以降間が空いて「ステキな金縛り」「記憶にございません!」の計3本のみ。映画館に足を運ぶ回数が今よりも少なかった頃は、足切りの対象になる事が多かった。
本作は当初観る気満々だったものの、公開後随分と時間が経ってからの観賞となってしまった(おかげでガラガラの入りで観る事に)。
失踪したスオミを巡って繰り広げられる、5人の夫+元夫のドタバタ劇。
三谷作品の重要成功要因は、彼が用意したキャラクターを演じる役者達。彼の脚本を生かすも殺すも演じる役者次第。これほどまでに役者に依存する作品ってなかなかないように思えます。本作においては、最も大変な役回りの長澤まさみさんをはじめ、彼女を愛する男達がいずれも三谷コメディの可笑しさを体現出来ている。中でも4番目の夫役、西島秀俊さんが最高でした。三谷ワールドの申し子的な役者さん達のような染まり方をするわけでもなければ、コメディに向いているキャラクターという訳でもないのにこのハマり方は見事過ぎる。今回の出演者全員が総じて気張り過ぎや場違いな空気感を生じる事無く、纏まりのある三谷ワールドが生まれていた印象です。
宮澤エマ演じる薊がシスターフッドな役どころだと判った時点で謎解きが終了。メインステージとなる5番目の夫、寒川の大邸宅のリビングで繰り広げられるシットコム的シーンは、カメラワークが随分と忙しなく感じましたが、舞台演出が本業の三谷さんにとって、舞台と映画の境界線が最もなくなるシチュエーションであり、その違いを最も意識せざるを得ないプロットでもある筈。そこは観客も同じで、つい比較もしちゃいます。
カーテンコール風に提供される最後のダンスは・・・思ってた以上に歌は上手だし踊りも達者で、付け焼刃感は感じられなかった。舞台演出家に戻ったかのようなこういう締め方は、三谷さんだから許されるような。
エンドロールのクレジットは何か意図があるのか気になっちゃいました。
某サイトでは随分低評価且つ心ない感想コメントの数々が見受けられますが、私的にはこの4本目も十分満足のいく“当たり”な作品でした。
№43
日付:2024/10/25
タイトル:スオミの話をしよう
監督・脚本:三谷幸喜
劇場名:シネプレックス平塚 screen3
パンフレット:あり(¥990)
評価:6
<CONTENTS>
三谷さんのお芝居の公演パンフを思わせる充実した内容。
・イントロダクション
・長澤まさみインタビュー
・遠藤憲一インタビュー
・松坂桃李インタビュー
・小林隆インタビュー
・西島秀俊インタビュー
・坂東弥十郎インタビュー
・瀬戸康史インタビュー
・宮澤エマインタビュー
・戸塚純貴インタビュー
・その他キャスト
・三谷幸喜監督インタビュー
最後に全員で歌って踊る「ヘルシンキ」は、「フィンランド礼賛にしてほしいと、石井隆プロデューサーに言われて書きました」と書いてあった。なんじゃそりゃ?プロデューサーの真意が気になりました。
・対談 三谷幸喜 × 長澤まさみ
・三谷幸喜監督の撮影日記(8/13~9/24)
・美術:棈木陽次
・衣装デザイン:宇都宮いく子
・撮影:山本英夫
・録音:瀬川徹夫
・「ヘルシンキ」作詞:三谷幸喜、作曲:荻野清子
・音楽:荻野清子
・クレジット