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2024/10/29 19:26

「道を狭めないことで、挑戦できる」東京国際映画祭 「Nippon Cinema Now」部門・入江悠監督 独占取材

10月28日(月)~11月6日(水)に開催される第37回東京国際映画祭(TIFF)のNippon Cinema Now部門で入江悠監督の特集上映が行われる。際して、入江監督ご本人に心境と、今後の展望を聞いたー(取材・文 / はじめ、rin2)


 はじめ:Nippon Cinema Nowの特集が入江監督に選ばれたこと、改めておめでとうございます。まずは選ばれた心境をお聞かせください。

入江:自分でいいのかな?という思いが率直な感想ですが、フィルモグラフィーを振り返ると、メジャーからインディペンデント作品まで様々な映画を撮ってきました。どういう作品を撮ろうか、いつも迷いながらではありますが、“監督の作品”を特集していただける点においては、東京国際映画祭の「懐の広さ」を感じました。このような機会は人生に何度もあることではありませんので、今までやってきたことやこれからの方向性を考えるきっかけにしたいと思います。

 

はじめ:ありがとうございます。入江監督は海外でも撮影していたり、旅行も好きだという記事を拝見しました。今後も海外での撮影が視野に入れていますか?

入江:そうですね。海外の撮影はとても楽しくて、機会があればいつでも行きたいと思っています。海外のスタッフの方やキャストの方と仕事すると、今まで自明だったことが、再確認する必要性に迫られることもあります。「なぜこのシーンを撮るのか」や、「このシーンはどういう意図があるのか」を全て言語化しなければならないなど、新しい発見が生まれます。外国で映画を撮るのは、自分で気づかなかったことを教えてもらえる点もあり、単純に旅行が好きなので、今まで知らなかった場所に行って、一緒にものづくりする純粋な楽しさもあります。SR埼玉ラッパー以降、約15年間日本の映画界をみてきて、日本の映画作りの制度や慣習が身についてきてしまいます。対して、一歩海外に行くと全く当たり前のことではなくなります。特に「聖地:X」を韓国で撮影したときは、韓国の労働環境・映画界の豊かさを感じ、日本の映画人も学ぶ点がいっぱいあると感じました。そういった発見に出会えるのはやはり大きいですね。

 

rin2:入江監督の作風やジャンルは多岐にわたる印象がありますが、今後どのようなジャンルに挑戦したいですか?

入江:様々なジャンルに興味があります。子供の頃から映画の世界に入ろうと決めるまでに、アクションやSFも観てきたので、あまり狭めずに挑戦しています。2025年1月に公開の「室町無頼」は時代劇ですが、時代劇も好きでよく観ていました。時代劇は映画として撮るのは初めてで、撮影中はずっと京都に滞在していました。京都の撮影所で、京都の映画人と一緒に作品を作るのは新しい挑戦で、「何か新しい時代劇をみんなで作ろう」という気持ちで取り組んでいました。

 

rin2:作品を撮る中で、一貫して心がけていることはありますか?

入江:今、改めて考えるとパッと思いつかないっていうのが率直なところです。自身でも時々考えることはありますが、それは自分で決めてしまうとつまらない気もしていて。結果的に自分が死ぬ時に、誰かが「この監督はこうやりたかったんだな」のように気づいてくれたらそれでいいかなと思います。道を狭めないことで、様々なジャンルを横断したり、題材にふれたり、挑戦ができると思っています。

 

はじめ:コロナ禍の当初、ミニシアターに客足が減ってしまった問題を解決すべく、我先に手を挙げてクラウドファンディングへの声掛けをされたかと思います。ミニシアターは入江監督はどのようなものでしょうか。

入江:今までの経験や訪れた先の人々との関係性によって異なりますが、もともと映画監督として認めてもらった最初の作品が「SRサイタマノラッパー」で、日本全国ミニシアターで上映していただいたからこそ、道を開けました。今ほどインディペンデントの映画を上映してくれる映画館は多くありませんでした。今まで15年間様々な映画を出てきましたが、約半分はミニシアターで上映していただけるような作品で、ミニシアターという“文化的な価値”は守っていきたいと思います。舞台挨拶で訪れる映画館に面白い館長やスタッフさんが沢山いて、顔が見える映画館はまたシネコンとは違った良さがあります。
「あの人がこういう気持ちで作った映画館なんだ」というような、愛着を感じます。

 

はじめ:以前はビフォーコロナとコロナ禍、今はポストコロナになっていますが、今後ミニシアターと考えている取り組みはありますか?

入江:一昨日、名古屋のミニシアターに舞台挨拶した際にお聞きしたのは、結局ミニシアターが抱えている問題や課題はそれぞれ違うんですよね。個別に各映画館の人と話して、「最近はどうですか?」「どういうことをやりたいと思っていますか?」と、直接聞き回る活動に変わってきています。共通するのはコロナ前のお客さんの数によって戻らない現実があるので、ミニシアターの抱えている問題はまだ何も解決はしていません。焦らずに、少しずつできることをしていきたいなと思いました。

 

はじめ:来年1月公開「室町無頼」は「あんのこと」とは全く異なる印象だと感じました。「あんのこと」は社会的問題である”トー横問題”なども触れている印象もありましたが、「室町無頼」も社会的問題に何か関係しているのでしょうか?

入江:社会的問題は作品を撮れば、勝手に映るものだと思います。「室町無頼」は時代は室町時代ですが、主演の大泉洋さんやスタッフさんが作る以上、“今”というものが反映されることは必然かと思います。意識をしなくても現代社会の“何か”が映画に映り込んでしまうものだと思います。東京国際映画祭の特集上映の一作に選んでいただいた「太陽」は、SFで近未来の日本の社会を描いてますが、コロナ禍で分断があったという点に置いてもリンクするところがあります。SFであろうと時代劇であろうと、“今”が反映されるものなんだという感じがしています。

 


開催概要

名称       第37回東京国際映画祭

期間       2024年10月28日(月)~11月6日(水)[10日間]

開催会場              シネスイッチ銀座、丸ノ内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS...、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用

URL https://2024.tiff-jp.net/ja/


 

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