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私の好きな映画

じょ〜い小川
2024/09/05 02:06

真の主演は「ラストマイル」で蠢く阿部サダヲや火野正平と宇野祥平『ラストマイル』

■ラストマイル

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

《作品データ》
TBS系「金曜ドラマ」枠で放送された石原さとみ主演のテレビドラマ『アンナチュラル』及び綾野剛&星野源主演のテレビドラマ『MIU404』と世界観を共有するシェアード・ユニバース作品で、満島ひかり主演のサスペンス映画。11月のブラックフライデー前日に都心近くで連続爆発事故が起きる。そんな中でアメリカに本社を持つ世界最大のショッピングサイトのDAILY FAST(略称・デリファス)の日本支社・西武蔵野ロジスティクスセンターに福岡の支社から舟渡エレナが新センター長としてやってきて、早速、連続爆発事故の被害者たちがデリファスの西武蔵野ロジスティクスセンターから配送された宅配物を受け取っていたという共通点から部下の梨本孔と共に対応に追われることに。主人公の船渡エレナ役を満島ひかりが演じ、他岡田将生、ディーン・フジオカ、大倉孝二、酒向芳、宇野祥平、安藤玉恵、丸山智己、火野正平、阿部サダヲ、石原さとみ、綾野剛、星野源が出演。

・2024年8月23日(金)より、TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー!
・上映時間:129分
・配給:東宝
【スタッフ】
監督:塚原あゆ子/脚本:野木亜紀子
【キャスト】
満島ひかり、岡田将生、ディーン・フジオカ、大倉孝二、酒向芳、宇野祥平、安藤玉恵、丸山智己、火野正平、阿部サダヲ

公式HP:https://last-mile-movie.jp/


〈『ラストマイル』レビュー〉

予告編やフライヤーからはどう見ても満島ひかり主演映画としか思えないが、TBS系「金曜ドラマ」枠で放送された石原さとみ主演のテレビドラマ『アンナチュラル』及び綾野剛&星野源主演のテレビドラマ『MIU404』と世界観を共有するシェアード・ユニバース作品という挑戦的なサスペンス映画『ラストマイル』。その売りのシェアード・ユニバース作品としては「どうよ?」と思えてならないクオリティーだったが、阿部サダヲが演じる運送会社の現場を回す中間管理職や火野正平と宇野祥平の「Wしょうへい」が演じる下請け的な運送会社など、まさしく物流の流れ「ラストマイル」を描いた映画としては評価出来る映画である。

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

ストーリーは満島ひかりが演じる福岡から西武蔵野ロジスティクスセンターに新センター長としてやって来た舟渡エレナ視点の連続爆発事件解決と、阿部サダヲが演じる運送会社「羊急便」の関東局局長・八木竜平視点の爆弾事件によるデリファスと会社の上層部に板挟みになる中間管理職視点、その「羊急便」の仕事を最終的に請け負う「佐野運送」の佐野親子視点、さらに事件解決に当たるテレビドラマ『MIU404』の警視庁刑事部第4機動捜査隊刑事の伊吹と志摩視点、そしてテレビドラマ『アンナチュラル』のパートになる現場の遺体を検視する不自然死究明研究所(UDIラボ)関係者視点、と群像的なサスペンスになっている。それを「シェアード・ユニバース作品」と謳ってはいるけど、どうにもぎこちない。

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会
(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

そもそも、この連続爆発事件のデリファス関係者や羊急便の担当刑事は酒向芳が演じる警視庁刑事部捜査第一課の刈谷と大倉孝二が演じる警視庁西武蔵野署の刑事・毛利のバディだから、『MIU404』コンビの伊吹と志摩はサブなんだよね。『アンナチュラル』のUDIラボはさらに検視パートになるからさらにサブというかオマケ感が強い。それに酒向芳も市川崑監督の「金田一耕助」シリーズに出てくる加藤武が演じる警部みたいで味があるというか、ひょっとしたらダブらせたかも。

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会
(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

この作品はタイトルの『ラストマイル』が示しているように真の主演は阿部サダヲが演じる八木や火野正平と宇野祥平が演じる佐野親子らのこのラインだったりする。なので、満島ひかり主演というのもかなり違和感を感じざるを得ない。まぁ、阿部サダヲや火野正平、宇野祥平といった中年・初老のおっさんを主演にするよりも綺麗な満島ひかりを主演にした方が見てくれもいいし、宣伝しやすいというのは分かるんだけどね。

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会
(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

それと、おそらくデリファスことDAILY FASTのモデルって誰がどう見てもAmazonだろう。ディーン・フジオカが演じるDAILY FAST日本支社の統括本部長の五十嵐やアメリカ本社の会議の様子や本社と西武蔵野LCの現場を繋ぐ舟渡と梨本を描いているのは良かったけど、それならばさらにその下の倉庫のピッキング係の西武蔵野LCの契約社員や派遣・パートのラインにもメインキャストを配置してほしかった。そこも絡むには絡むんだけどデリファス側の「ラストマイル」としてもっと見せてほしかったし、フリーター役というかフリーター視点として2人ぐらいメインキャストに組み込んでほしかった。

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会
(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

こうした会社組織における上の流れや下の階層の流れってフリッツ・ラング監督作品『メトロポリス』やチャップリンの『モダンタイムス』にも通じるし、それこそ佐野親子のエピソードはケン・ローチ監督作品『家族を想うとき』を彷彿とさせるものがあるし、日本の下流社会を表すにはいい作品なだけに、満島ひかりをメインにした売り方や無理矢理に感じられるシェアード・ユニバース作品にしたせいで作品全体というか脚本がごった煮状態になっている。こういうのって『ゴスフォード・パーク』を手掛けたロバート・アルトマン監督や現役なら三谷幸喜監督が多重群像劇として上手くまとめているけど、塚原あゆ子監督と脚本担当の野木亜紀子はハッキリ言って上手くまとめきれていない。商売上、満島ひかり主演やテレビドラマ関連作品の方が引きが良さそうなのは分かるし、結果は出しているからその選択肢は正解なのだろう。

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

まぁ、石原さとみ主演のテレビドラマ『アンナチュラル』及び綾野剛&星野源主演のテレビドラマ『MIU404』のファンならシェアード・ユニバース作品として味わえるんだろうけど、「羊急便」のシーンや佐野親子のシーンといった本来の「ラストマイル」達のエピソードもしっかりしている。この際、シェアード・ユニバース作品云々は忘れて、『ラストマイル』が誰を指すのか考えればそこそこ楽しめる。

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会
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1 件の返信 (新着順)
飛べない魔女
2024/09/05 12:51

こんにちは。私も観てきました。
これ私はかなり面白かったです。物流のことも勉強になりました。
火野正平さんが言う「俺たちが日本の物流支えてるんだ!」という言葉にほんとにそうだよね、って思いました。
簡単にポチっとしてお買い物した先にはいろいろな人の汗と努力があるのだなって再認識しました。ドライバーさん、有難う!って思いました。
最初から最後までハラハラしっぱなしで、楽しめた作品です。


じょ〜い小川
2024/09/05 19:30

ちょっと辛口で描きましたが、Wしょうへいのパートはまさしく和製『家族を想うとき』なんですよね。この二人の物語はまた見てみたいですね。