1960年代半ばまでのアメリカン・フォーク界隈入門のボブ・ディラン自伝映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
■名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN

《作品データ》
イライジャ・ウォルドの著「Dylan Goes Electric!」を原作に、ティモシー・シャラメ主演、ジェームズ・マンゴールド監督・脚本によるボブ・ディランの自伝映画!1961年、19歳のボブ・ディランはニュージャージーの病院で病床のフォーク歌手ウディ・ガスリーの見舞いに行き、そこでピート・シーガーと出会って、ライブハウスに出る機会を得る。そして、ジョン・ハモンドやジョーン・バエズに実力を見出され、アルバムを出し、ボブ・ディランは瞬く間に時代の代弁者へと押し上げられる。ボブ・ディランをティモシー・シャラメ、ピート・シーガーをエドワード・ノートンが演じ、他エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック、ダン・フォグラー、ノーバート・レオ・バッツ、スクート・マクネイリー、P・J・バーン、初音映莉子、チャーリー・ターハンが出演。
・2月28日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
・配給:サーチライト・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・ジャパン
・上映時間:141分
【スタッフ】
監督・脚本:ジェームズ・マンゴールド/脚本:ジェイ・コックス
【キャスト】
ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック、ダン・フォグラー、ノーバート・レオ・バッツ、スクート・マクネイリー、P・J・バーン、初音映莉子、チャーリー・ターハン
原題:A Complete Unknown/製作国:アメリカ/製作年:2024年
公式HP:https://www.searchlightpictures.jp/movies/acompleteunknown
《『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』レビュー》
個人的には物凄く好きというわけではないが、代表曲をだいたい聴いてたり、バイオグラフィーぐらいは押さえているという程度にはボブ・ディランを嗜む、といった具合いで見たボブ・ディランの自伝映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』。1960年代半ばまでのボブ・ディランを描いたもので、ジョーン・バエズとの共演やフォークフェスティバルの様子、エレキ論争など、伝聞で見聞きしていたボブ・ディランを映像で見る作品で、
1960年代の時代の空気も素直に味わえる気持ちがいいボブ・ディラン自伝映画である!

本作はボブ・ディランがニューヨークにやって来てから、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルまでを描いている。この4年間で無名の少年から瞬く間にスターダムにのし上がりつつ、「Blowin' in the Wind」や「The Times They Are a-Changin'」、「Mr. Tambourine Man」、「Like a Rolling Stone」など代表曲を次々とヒットさせ、しかもアコギ&ハーモニカのフォークからエレクトリック・ギターとバンド編成への変更などもあり、こうした濃厚な時期のボブ・ディランを描いているから全く飽きない。

さらにキーになるのはボブ・ディランの周りにいた人物で、エドワード・ノートンが演じたピート・シーガーやフォーク歌手のウディ・ガスリー、一緒にライブで回るジョーン・バエズ、さらにはフェスティバルで共演するジョニー・キャッシュなどもしっかりと出て来る。加えてビートルズやブリティッシュ・インヴェイジョンの台頭といった時代の波も押さえていて、それを感じつつ終盤のニューポート・フォーク・フェスティバルのシーンを見ると味わい深くある。そんな中でエル・ファニングが演じるシルヴィアの扱いがやや雑ではあるが、そこで音楽・仕事に没頭とも見えるし、ジョーン・バエズとの仲も仕事を超えたようにも見えるし、その放蕩というか自由さがボブ・ディランらしさとも見える。



LSDや大麻との関わりといった負の部分は一切シャットアウトし、公民権運動との関わりの描写もあまり感じられなかったので、かなり綺麗な映画に仕上がったことに関しては若干違和感を感じはする。
そこを何も考えずに見れば普通に良質な音楽自伝映画である。

