村八分スリラー&サスペンスの傑作『理想郷』
※2024年8月2日よりTSUTAYAにてレンタル開始!
■理想郷
〈作品データ〉
『おもかげ』を手掛けたスペインの新進気鋭のロドリゴ・ソロゴイェン監督の新作はスペインで実際に起こった事件を基にしたスリラー&サスペンス映画。フランス人のアントワーヌとオルガは夫婦でスペインの山岳地帯ガリシア地方の小さな村に移住するが、風力発電所誘致の意見の食い違いから隣人のシャンとロレンソの兄弟を中心とした地元民と対立し、嫌がらせを受けるようになる。主人公アントワーヌを『悪なき殺人』や『苦い涙』のドゥニ・メノーシェが演じ、他マリナ・フォイス、 ルイス・サエラ、ディエゴ・アニード、マリー・コロンが出演。
・11月3日(金・祝)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下他全国ロードショー
・2024年8月2日よりTSUTAYAにてレンタル開始!
・上映時間:138分
・配給:アンプラグド
【スタッフ】
監督・脚本・製作:ロドリゴ・ソロゴイェン
【キャスト】
ドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイス、 ルイス・サエラ、ディエゴ・アニード、マリー・コロン
原題:As bestas/製作国:スペイン、フランス/製作年:2022年
公式HP:https://unpfilm.com/risokyo/
〈『理想郷』レビュー〉
邦題とポスターと公開ヘッド館であるBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下のイメージから「地味なヒューマンドラマかな?」と勘違いをして見るのが遅くなったスペインのスリラー&サスペンス映画『理想郷』。スペインの田舎村での地元民と余所者のトラブルを描いてるんだけど、人間の怖さと大人たちの引くに引けない意地を存分に堪能出来る
田舎村スリラー&サスペンスの傑作である!
いわゆる地域コミュニティ、村社会の話で隣人トラブル・嫌がらせから事件、サスペンスに発展していく。序盤の近所の居酒屋のシーンから主人公アントワーヌが村八分状態になっていて、後半に差し掛かるまでありとあらゆる手段で隣人の独身中年兄弟を中心とした地元民から嫌がらせを受けまくる。道を塞がれたり、アントワーヌが妻と一緒に育てた野菜をダメにさせられたり、無視されたり、フランス人夫妻が余所者というだけで地元民からやられたい放題。
展開として上手いのはそうなった経緯を順序立て見せず、いきなりフランス人夫妻が村八分状態になっている所から見せ、なぜそういう状況になったかを小出しで見せていく。風力発電所誘致の件での意見の食い違いが発端ではあるがそれだけではない。スペインとフランスの何世紀にも渡る数々の戦争による歴史的な国同士の仲の悪さにも触れたり、万国共通で語れそうな地元民と余所者に対する心理もそこに入れている。
さらに後半は妻オルガ目線の別のミステリーになっていて、ここでは前半ほど揉め事は少ないが嫌がらせは相変わらずで、直接的な揉め事が少ない分、不穏さと得体が知れない不気味さが際立っている。特に後半の不協和音やパーカッションを使ったBGMを効果的に使い、不安さをより煽っている。
それと主人公アントワーヌも決して聖人君子ではない所も見逃せないポイント。確かに、アントワーヌが言うやりかたの方が後の地域発展にはいいかもしれないが相手への伝え方が上手くなく、己の意見を押し付けがち。見ていて「そりゃ揉めるよね」と思いつつ、そこに加えてアントワーヌ個人の引くに引けないプライドも見え隠れする。妻との田舎暮らしのスローライフを望んでいながら自分の性格と不器用さからその真逆の方向に進んでいく皮肉が悲劇的で面白い。
加えて、隣人の独身おじさん兄弟も理不尽でとことん嫌な奴というのも見どころ。普通のヒューマンドラマなら見た目は下品そうでも奥底は知的でやや高圧的という地元民リーダーとか牢名主がよくあるが、見た目通りに下品で粗野で意地が悪い、「ドラえもん」のジャイアンが大きくなっただけの地元民リーダーというのがまたいい。つまり、逆らうとひたすら面倒な奴。リアルにいたらなるべく避けるように居酒屋に行かなかったり、極端にすれば引っ越せばいいんだけど、そこをあえてぶつかり、夫婦共々意地でも村にいるという方向なので、映画作品として見ている分には非常に面白くなっている。
これ、地域コミュニティ、村社会の話だけど、グループコミュニティの話と置き換えると会社の部内・職場のコミュニティ、幼稚園や小学校のクラスのママ友コミュニティ、近所の行きつけの居酒屋の常連コミュニティなど、田舎村の地域コミュニティでなくても同じようなことが言えそうな人間心理、集団心理の話で、田舎限定の話に限らず都会にもありそうな話だし、それこそスペインというだけでなく万国共通の話で、各国の映画祭で高評価というのもかなり頷ける。
夫婦と地元民が揉めれば揉めるほど面白く、地元民が陰湿な仕打ちをするほど不気味さが増し、田舎暮らしスリラー&サスペンスの傑作に仕上がっている。同種の作品ではマーティン・マクドナー監督作品『スリー・ビルボード』や『イニシェリン島の精霊』、トマス・ヴィンターベア監督作品『偽りなき者』などの小さなご近所トラブルから発展した傑作に通じるものがあるし、あとラース・フォン・トリアーの『ドッグヴィル』とか日本映画なら今年の春先に公開した『ヴィレッジ』なんかも雰囲気が近く、
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投稿を表示「理想郷」大好きな作品で、昨年のBest3の2位に挙げました😄
田舎暮らしvs都会暮らし、生活格差があるためお互いに相手の考え方を理解できないところ。奥さんの髪の長さで時間の移り変わりを表現する所など、細かい演出がすごく良かったです😊
レンタル開始されたんですね♬多くの人に観てもらいたいなぁ。
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