【本編内容あり】『マリウポリの20日間』あなたの名前を教えてください
前回の追記。
僕のコラムやYouTubeはいつも「メタ視点」で捉える。
つまり、それを観ている私たちを取り巻く世界はどうなんだ?ということだ。
「マリウポリの20日間」がアカデミー賞を獲って、世界に届けて欲しい、は良いが、
上映する映画館は少ない。お金と時間を作って観に行く人はどれだけいるだろう?
映画の内容はかなり記録映像的である。
ドキュメンタリーといえど普通は構成など恣意的にならざるを得ないが、この場合、本当に
順を追って世界に映像を届け続けようとした奇跡が映っている。
戦争が終わってないことはみんな知ってるし、これに心を痛めていないわけではない。
見ていられないほどの、映像が続く。
カメラを向けて市民に
「名前を教えてください」
と結構頻繁にいう。
「下の名前も」と
なぜかフルネームを訪ねる。それも何度も・・・
なんで?、普通名前なんてプライベートなものを全部カメラに言わないよね。
一晩、置いて目が覚めた時、急に腑に落ちた。
もう帰らないかもしれない人を、
その惨劇の証人を、「記録」を撮っておきたかったのだ。
そう、だから逆に名前だけで良いのかもしれない。
名前こそが、あなたの証であり、それを収めることが、あのカメラクルーにできる最大限の
矜持だったのだろう、と思い至った。
では、ネタバレありで、という言葉は不適切ですが
どれほどのものが映っているか、物理的に観られない人も多い作品である現状に
対するようにここに言葉にしてみたい。
ご遺体を溝に放り投げて埋葬する人々、
これを撮ってくれ、と地下にたくさんの遺体が並ぶ。その中には変色している赤子がいた。
映画的なフレーズは序盤に流れる医師の言葉
「プーチンにこれを見せろ、この子の目を見て、それを言えるか」
自分の店から商品が略奪され、市民が盗難をしていくのを嘆き怒る女性。
それをみた兵士はいう
「なんでだ!何でもっと協力し合えない。自分たちの街だろう」
これは戦争で良く聞く話だし、日本の震災でもある話。
もう一つの視点として、情報を遮断させられたイラつきにより人の精神を
破壊していく、という側面があり、
基地局の破壊はこうして相手にダメージを与えていくという。
クルーは映像を細切れにして携帯電話の電波の届くところへいき、
毎日、送信し続ける。
この映画で流れた映像はかなり世界中のニュースで断片的に流れたものである。
(日本の実際のニュース映像も少し出る)
妊婦が負傷して、運ばれていく映像。
すぐに、ロシアのメディアと高官が
「あれはフェイク映像です。これは映像テロである」
と報道する。
⇧こうしたやり取りだって、僕たちはニュースで見てきたはずだ。
一人が言う。
「もしもロシアに捕まってみろ。
私たちの映像はすべてフェイクでした、と言わされるぞ。」
電気もネットも、
消耗品も尽きる中、救われない患者を前に
座り込み、虚ろな瞳で絶望する医師、というのを初めて見た。
すさまじい絶望感。
嘆く市民、それを見ていられない看護師は背を向ける、
これがこの映画である。
要衝だ、となんだといっても、なんでこんなに丁寧に破壊して
マリウポリを狙うのか、ピンとこないけれど、
後の情報を照らしてみると、
壊滅的に破壊して、
市民や病院を攻撃した戦争犯罪を隠蔽するために
破壊しつくすのが目的であるらしく、
今は(2024年)、解体が進んでいる。
映画を見進めるほど、これを観て欲しい人ほど見ないのだろう、と思ってしまう。
カメラの前で語る
「いつか娘にこの戦争の話を聞かれたとき、
じゃあ、父さんはこの戦争を止めるために何をしたの?
そう聞かれたとき、答えを持っていたい。」
この映画を観ている私たちに、何ができるだろうか。
今年のアメリカのアカデミー賞の授賞式の最後に追悼の時間があり、
亡くなった「ナワリヌイ」氏のインタビュー映像が流れる、
「邪悪なるものが勝利するために必要な唯一のことは、善良な人々が何もしないことだ」
それを考えさせられる。
映画を観た、自分を考えて考えて、やっと
あぁ、これは「献花」だったんだ、と気が付いた。
しょぼい正義感で映画の前売り券を買ったような人間だからこそ、
正義感なんてものがいかに瞬間的で力のないものであるかがよくわかる。
現場にいる当事者たちは今も苦しみ続けているのに。
なにも卑下しているわけではなく、事実を正確に捉え、前に進みたい。
これ映画として普通に上映するだけで良いのかな~、
前にマイケル・ムーアの映画を民主党が
どこかで流す会みたいのをやっていたけれど、あんな感じでイベント上映してほしい。
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