【蔵出しレビュー】1978年の少年少女の等身大スリラー『ブラック・フォン』
※7月12日からペドロ・アルモドバル監督作品『 ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』の公開にあわせて、主演のイーサン・ホークの過去作品のレビューをUPしました。尚、文章は公開当時のものを一部加筆・訂正したものです。
■ブラック・フォン
《作品データ》
『ゲット・アウト』や『ザ・ハント』、『ザ・スイッチ』など新感覚のスリラー映画を世に送るブラムハウス・プロダクション製作、イーサン・ホーク主演のスリラー映画! 1978年にコロラド州のとある町で少年が次々と謎の失踪をする事件が起こっていた。ある日、フィニーは学校帰りに車の近くでもたつく男を助けるが、黒い風船に包まれ誘拐されてしまう。謎の男・グラバー役をイーサン・ホークが演じ、他メイソン・テムズ、マデリーン・マックグロウ、ジェームズ・ランソンが出演。
・TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー中!【PG12】
・配給:東宝東和
・公式HP:https://www.universalpictures.jp/micro/blackphone
《『ブラック・フォン』レビュー》
フライヤーからはなにやら怪しげな怪人が出てくるスリラー映画かなという匂いがあったイーサン・ホーク主演の『ブラック・フォン』。見てみると黒電話を使った奇妙な演出はあれど、誘拐犯スリラーと少年の監禁脱出劇を組み合わた良質スリラーに仕上がっている。
よく考えてみれば、アングルを変えた『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のようであり、そこから探検要素を引いて、よりキュッとシャープにした感じである。少年4、5人グループの『IT/イット』とは違い、基本的にフィニー少年単独視点が多く、地下牢からの脱出劇がメインになる。そこに謎の黒電話があり、そこに心霊的演出で見せるあたりが独特な部分で味がある。
もう一つ、フィニーの妹もメインキャラの一人で、予知夢を見る彼女の描写も若干ホラー気味で悪くはない。ただ、『マリグナント 狂暴な悪夢』のような派手さはないので、この部分にはあまり過剰な期待はしない方がいいかも。
それよりも、フィニーの父親による妹への虐待描写やフィニーの少年野球、学校でのいじめっ子らとのやり取りなど、アメリカの少年少女らの日常風景にリアリティがあって良い。フィニーのメキシカンの友達とのやり取りも当時の小学生らしさもあり、そこに出てくる映画がこの映画のフォーマットのヒントになっている。
イーサン・ホークが演じる怪人グラバーも中途半端なマスクと薄らでかさに不気味さがあり悪くない。クセが強いホラー描写は薄いが、1978年の少年少女の等身大スリラーとしては味があり、見逃すには勿体ない。