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Kie
2023/03/11 21:27

女性から共感の声が絶えない『セイント・フランシス』の魅力

(c)2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

 

34歳の迷える独身女性を等身大で描き、高い評価を受けた映画『セイント・フランシス』がいよいよ3月24日からレンタルスタート!

脚本も手掛けたケリー・オサリヴァンが主人公を演じ、女性として生きるうえで抱えざるを得ない怒りや、考えれば考えるほど消化しきれない不毛な感情を包み隠さず表現したこの映画には、救われた女性も多いはず。アメリカの映画批評サイト「ロッテン・トマト」でも驚異の満足度99%を記録した本作の魅力を、この記事でたっぷりお届けします。

 


 

(c)2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

 

あらすじ

34歳独身のブリジットは大学中退で定職もなく、レストランのウェイトレスとして働いていた。本人としては一生懸命に生きているのに、独身で子どももいない彼女に対する世間の同情的な眼差しが大きなプレッシャーとしてのしかかってくる。

そんな中、夏の短期仕事として、レズビアンカップルの6歳の娘フランシスの子守をすることになったブリジット。子どもが好きなわけでもない彼女は、おませでちょっと生意気なフランシスに手を焼いてしまうが…。

 


 

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最近少しずつ、生理・妊娠・中絶といった、これまでタブー視されていた事柄に触れる映画を見かけるようになってきました。たとえば『17歳の瞳に映る世界』では、予期せぬ妊娠をした17歳の少女が親の同意なしに中絶手術を受けるためにニューヨークへ向かう様子を描き、『あのこと』では中絶が違法だった時代のフランスを舞台に予期せぬ妊娠をした女子大生が、自ら中絶をしようとする姿が描かれています。

本作『セイント・フランシス』でも、生理・妊娠・中絶を美化することなく、忠実かつユーモラスに描いていますが、主演・脚本を務めたケリー・オサリヴァン自身が中絶を経験し、それらの話題が公の場でタブーとされる現状にうんざりしたことが、本作を執筆した動機だそう。

 

本作があまりに好きすぎて、2時間にも及ぶTwitterスペースを開催したこともある筆者が、なぜ本作にここまで惹かれたのか、順番にご紹介していきます。

 


 

①登場人物が不完全な人間だからこそ感情移入しやすい

(c)2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED

主人公ブリジットが子守をすることになる6歳の少女フランシス。赤ん坊の弟が生まれたことによる嫉妬や不安を抱え、時に図書館で暴れたりもする彼女にブリジットは手を焼きます。一方、主人公のブリジットも子守としては半人前。勤務中にスマホに没頭して子供から目を離してしまったりすることも・・・。

映画の世界では、登場人物が完璧なタイミングで完璧な選択・決断をして、ストーリーがスムーズに進むことも多々ありますが、日常生活ではそう上手くはいきません。"あの時行動しておけばよかった" "今日はこうするべきだった" といった後悔も多いのが現実ですよね。本作の登場人物は、そんな完璧じゃない私たちとの距離が近く、だからこそ感情移入もしやすくて応援したくなるのです。


 

②これこれ!これでいいのよ!と完璧な行動を示してくれる登場人物もいる

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主人公ブリジットは映画冒頭のパーティーでジェイスという年下の男性と出会い、結果的に妊娠しますが、その後中絶することを決めたブリジットに対してジェイスは「病院に同行しようか?」と提案したり、処方された経口中絶薬による副作用を調べるなど、彼がとる行動がまさにパーフェクト。別にこれ以上は求めていないけど、ここまでしてくれると本当にありがたいだろうな、と感じる教科書のような対応で、私もパートナーが体調を崩したら見習いたいと強く思いました。


 

③女性を詳細に描きながら、決して男性を悪者にしない

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本作は女性にとってはどこかしら共感する部分のある作品ですが、もしかすると男性にとってはあまりにも赤裸々すぎて理解できない部分もあるかもしれません。たとえば中絶後、何度も不正出血を繰り返すブリジットの姿に驚いた男性も少なくないと思います。しかし、本作を観て、自分が攻撃されているように感じる男性はあまりいないのではないでしょうか。それについて、主演・脚本のケリーは、グレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』に触発されて本作を執筆したといいます。『レディ・バード』でグレタが描いたのは、母親も娘も決して悪役でない、対等な人間関係そのもの。"立場や関係が違うというだけで、誰も悪役ではない"という点が印象的な『レディ・バード』の作風が、『セイント・フランシス』の穏やかな脚本に強い影響を与えたのは間違いないでしょう。


 

④様々なマイノリティーについて心地よいバランスで描く

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フランシスの両親がゲイカップルであること、未だに人種差別的な発言に直面することも少なくないこと、産後うつに陥ったマヤの思考回路が手に取るようにわかること、といった要素もこの映画の素晴らしい部分だと思います。更に、フランシスはブリジットとの最初の散歩で「彼氏いるの?」と聞き、ブリジットは「いいえ」と答えますが、その後すぐにフランシスは「じゃあ彼女は?」とも聞くのです。このフランシスの感覚が、もっと世間に浸透していくことを願わずにはいられません。


 

⑤分かり合えない相手とどう折り合いをつけるか

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ブリジットやフランシスが花火にいくシーン。マヤが公園で授乳していると、近所の女性が「配慮が足りない」と怒り、それに対しマヤは「気を悪くしたなら謝るわ」と言います。本来ならここで会話が終わるはずが、近所の女性は「あなたの娘に同情するわ」と悪意むき出しの言葉をぶつけてきます。その後、そうきたか!と胸が熱くなる重要なシーンが待っています。すれ違う登場人物たちが、この重たいやり取りにどう折り合いをつけるのか、ぜひ本編でご覧ください。


 

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SNSが普及し、色々な人の生活が嫌でも目に入って来る現代。「35歳 何をするべきか わからない」とググる主人公のように、34歳という年齢や独身であるということが悪いことであるかのようにプレッシャーに感じることも多いですよね。

結婚、出産、経済力など、可視化できるステータスだけが果たして本当の幸せなのか?あなたはあなたの人生をどう受け入れ、どう肯定していく?そんなメッセージがたっぷりと詰まった映画『セイント・フランシス』。ぜひ今作が多くの方に届きますように・・・!

 

『セイント・フランシス』のレンタルはこちら

 

 

 

今後も様々な映画をご紹介していきますので、お楽しみに・・・!

 

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