<キッズが主役の映画> 5選
印象に残る「子供が主役の映画」を振り返ってみました。
「子供」≒「キッズ」の上限は12~13歳までといったところでしょうか。
「赤い風船」のパスカルは10歳未満。
「小さな恋のメロディ」のダニエルとメロディは11~12歳。
「ムーンライズ・キングダム」のサムとスージーは12歳。
「ハロー!純一」は小学生。
「ジョジョ・ラビット」は10歳。
たとえ子役の名前を憶えていなくても、作品が輝けばその眩しさは永遠。愛すべき佳作として心に残り続けます。
※()内は私が劇場で観た年
①赤い風船(2008年)
幼い頃に観て、記憶に残り続けている作品って誰にでもあると思います。題名さえ判らないまま、大人になって偶然再会できる作品もあれば、この「赤い風船」のようにとても有名な作品でありながら、長年DVDさえ出ておらず観る機会のなかったものも。
2008年にデジタルリマスター版でリバイバル公開されたこちらの作品、前作「白い馬」に続いて1956年カンヌ国際映画祭の短編部門でグランプリに輝いています。
少年パスカル(アルベール・ラモリス監督の息子だそうです)が手にした風船の、なんと大きくて色鮮やかでまん丸な事!
パリの街並みを背景に詩情たっぷりに描かれる二人(?)の友情と、街の人々との交流が本当に素敵です。「白い馬」同様に、二人の間を引き裂こうとする無邪気な悪者達により束の間の楽しい日々は破られてしまいますが、有名なラストシーンは観る者の夢も乗せて行ってくれているような気持ちになります。やはりあの立派な風船は、風船界の王子様だったに違いありません。
ただ数十年振りに観ると、ラストに集まった風船の数に少々物足りなさを感じました。記憶の中ではあの何倍もいたような気がしたのですが・・・
何度も観たくなる名作なのでしょうが(実際機会あれば再度観るのでしょうが)、時を経てからの印象は、幼い頃の記憶には敵いませんでした。
②小さな恋のメロディ(1971年?)
小学生の時にこの作品に出逢っていなかったら、きっと今ほど映画という表現手段を愛していなかっただろうと。父さん母さん、あの時映画館に連れて行ってくれて本当にありがとう~!
③ムーンライズ・キングダム(2013年)
少々"規格外"な男の子と女の子が二人で企てた脱出劇。子供達を持て余す大人連中を面白おかしくステレオタイプに配置しておきながら、どんどん人間味が増してゆく。この世界を確かなものにする為に、名優達が脇に徹する。中でも唯一の理解者であるシャープ警部を演じるブルース・ウィリスが、本っっ当に良い味出しまくっている。
この年頃だとどうしても女子の方が心も体も成長が早い。メロディがダニエルよりも大人びていたように、この作品でもスージーに比べてサムは随分と幼い。にもかかわらず彼女を必死にリードする、その様子を真面目に描けてるかどうか、これが肝心なのです。
そのクライマックスは東映アニメ「長靴をはいた猫」を思い出してしまった。映像も演出もかなりクセがあって最初戸惑いました。けれどこの物語の住人にさえなれれば、とても楽しい作品。エンディングの音楽も素敵でした。
④ハロー!純一(2014年)
小学生が放課後の道草でたわむれるシーンがだらだらと続くオープニング。この作品の目線と距離感が如実に表れてもいる。
ここで飽きる事なかれ、イジられキャラの"モジモジBOY"純一君の日常を中心に、小学3年生がいっちょまえに恋と友情と将来に悩む姿が微笑ましい本作品。子供たちのキャラも立ってるし、各エピソードのオチのつけ方も上手い。
破天荒な教育実習生、アンナ先生の本気のビンタが爽快。満島ひかりさんが和製ミシェル・ファイファーに思えてきた。素敵な女優さんだ!
終始おちゃらけながらも大人の責任をちゃんと盛り込んでいて、子供達への正しい刺激の与え方も描いた快作。たしかに"痛快キッズ・ムービー"だ。「団地ともお」より好きかも。
クライマックスのライブ演奏、ボーカルまでアフレコなのがかなり残念。
それでも上映終了後には拍手をしたくてウズウズしてしまった。私が小学校の先生なら、クラスの生徒全員引き連れて観に行きます。
⑤ジョジョ・ラビット(2020年)
いきなりビートルズの独版ヒット・ナンバーが流れて世代的にテンションが上がる。D・ボウイの独版「ヒーロー」も聴ける。全編英語だが、第2次大戦下のドイツのお話。
何を書いてもネタバレになってしまいそう。ヒトラーに心酔する少年ジョジョ。人間の姿をした恐ろしい“エイリアン”、ユダヤ人を殲滅せんと奮闘するが、実は心優しい少年。そんな彼を温かく包み込む母親(スカーレット・ヨハンソン)。
この一家が抱える秘密と「アンネの日記」的なシチュエーションに気が気でない思いで観続けるのですが、物語は終盤胸を締め付けられるような展開を迎えます。
子供を主役に据える場合、周りの大人達の役回りが重要になりますが、その点において母親役のスカーレット・ヨハンソン、大尉役のサム・ロックウェルが重要な役どころを快演。
ある意味ものすごく正統派の、真っ当な戦争映画。監督は決して必要以上に情緒的にならず、ヒューマニズムと共にユーモアの精神も忘れない。米国版「ライフ・イズ・ビューティフル」というべきか。日本人もこんな反戦映画を作れるようになったらと思います。
エンドロールでジョジョの友人「アドルフ」の正体を知って驚いた。
この年のアカデミー作品賞はなかなかの激戦の中「パラサイト 半地下の家族」が受賞しましたが、私がアカデミー会員なら本作に1票投じました。