フィッツジェラルドが草葉の陰で思うことは
【2025-No.20】
"米国文学の至宝はどう映画化されたか" vol.2
(Cover photo: © Bazmark Film Ⅲ Pty Limited)
華麗なるギャツビー
アメリカ 143分 2013年
監督ジャック・クレイトン&主演ロバート・レッドフォード版のプロデュース後40年の時を経てリメイクされた本作は書籍に例えるならば現代風の解釈を施した新訳に相当する。確かに文明の利器たるCGを最大限活用のうえ享楽の20年代を再現し当世の楽曲を重ね合わせた映像はクラシックな装いを脱ぎ捨てコンテンポラリーモードへシフトチェンジしたNEW「グレート・ギャツビー」と捉えられるものの、その余りに外連味たっぷりな語り口がこのストーリー本来の姿とはかけ離れ、結果的に至高の文学作品を空虚なソープオペラへ貶めたと云う印象は否めない
デジタル加工は上手く駆使すれば大変有効なツールだがそれに頼り過ぎると現実味を失いフィクション性ばかりが強調されたまるっきりの絵空事になってしまう。俳優たちの演技も含めて全てがまるでビデオゲームみたいに映るこのバズ・ラーマン版はそうしたCG偏重の負の側面が如実に示された
上流を目指すべく若い頃より自らに様々なカリキュラムを課し海難事故に遭った資産家を救う運までも味方につけ戦後出逢ったひとりの令嬢に対する一途な想いを糧として中西部出身の貧乏白人から東部の豪邸に住まう億万長者へ華麗なる変貌を遂げた男ギャツビー。アメリカンドリームを手にする過程においてダーティな連中とも付き合いはしたが彼の本質は決して穢されてはいない。だからこそグレートなのだ。しかしながらディカプリオ扮するギャツビーは品位を欠いたギャングまがいのゴロツキ成金にしか見えず私個人はミスキャストのように思えてならなかった
74年版フィルムに少なからず窺えたフィッツジェラルドへ向けての敬意がこちらには何も感じ取れない。小説に奏でられた哀切な調べを隅へ追いやりセレブのゴシップを暴くタブロイド紙然とした仕上がりに留まったのは誠に残念。改めて原作本を開き著者が意図するところを自分なりに確認したい
★★★★☆☆☆☆☆☆
原題 The Great Gatsby
監督 バズ・ラーマン
脚本 バズ・ラーマン,クレイグ・ピアース
撮影 サイモン・ダガン
編集 ジェイソン・バランタイン,マット・ビラ 他
音楽 クレイグ・アームストロング
出演 レオナルド・ディカプリオ,キャリー·マリガン
劇場公開日 2013.05.10 (米)/ 2013.06.14 (日本)

