2023年に観た映画(13) 「コンパートメントNo.6」
№13
日付:2023/4/8
タイトル:コンパートメントNo.6 | HYTTI NRO 6
監督・共同脚本:Juho Kuosmanen
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン1
パンフレット:あり(¥800)
評価:5.5
2021年のカンヌ映画祭グランプリ受賞作です。考古学を勉強する為にモスクワの大学に留学中のフィンランド人ラウラが、古代壁画を見る為に訪れるムルマンスクまでの寝台列車での一人旅。このムルマンスクという場所、モスクワから北へ約2000km(!)も離れた北極圏内にある都市でした。
JRのホスピタリティの素晴らしさを再認識できるロシアの鉄道事情。見知らぬ酒浸りの男リョーハとの相部屋で始まるラウラの旅は最初から踏んだり蹴ったりなのですが、旅は道連れ世は情け。2人の微妙な関係は監督の意図の表れなのでしょうが、少々じれったい。気の利いたラストは、本作への好感度を上げてくれました。
NATO加盟が地政学的に大きなニュースとなっているフィンランドですが、本作を観ると隣接するロシアとの関わりの深さも見て取れます。ただ主人公のラウラはフィンランド語とロシア語を操るのだけれど、ロシア語のコミュニケーション・レベルが日本人にはもう一つ伝わらない。当時のフィンランドやロシアへの留学事情といった時代背景も。
パンフレットにはその作風がアキ・カウリスマキ監督を思い起こさせると記していますが、オープニングやエンディングのタッチもそんな感じ。同じプロットで日本人が撮ったら、まず主人公がもっと華のあるアイドル上がりか、伊藤彩利ちゃんみたいな好感度高めの女優さんになりそう。そういう作品ならもう少し感情移入できたかなとも。最近の自分が少々商業映画に毒されているなとも感じてしまいました。
カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した作品で記憶に残る作品というと、「タクシードライバー」「木靴の樹」「ブリキの太鼓」と1970年代の作品が並びます。銀賞にあたるグランプリはというと、小学生の時父に連れられて観た「ジョニー時は戦場へ行った」にリバイバルで観た「惑星ソラリス」と、こちらも古い作品ばかり。逆に最近観た作品となるとあまり印象に残っていない(アキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」くらいか)。1990年代の遠い異国の旅日記である本作も、なんとも微妙な感じです。
<CONTENTS>
・イントロダクション
・ショート・ストーリー
・ロング・ストーリー
・監督インタビュー
・スタッフ&キャスト
・列車という母性 酒井順子(エッセイスト)
・かじかんだ身体。その奥に眠る感情を揺り動かす北極圏への旅 久保玲子(映画ライター)
・コメント
・レビュー
・レール・マップ
・クレジット