監督・ばんざい! 「映画監督のキャリア」を破壊する。
監督ばんざい! 平成19年(2007年)公開
ストーリー
北野武監督が脚本・編集・主演も兼ねて映画への想いを凝縮した異色コメディ。ひとりの映画監督がお得意のギャング映画を封印、様々なジャンルの作品に挑むもののことごとく頓挫を繰り返していくさまを、巨匠へのオマージュや自虐的ギャグなどを織り交ぜ奇想天外に描く。ギャング映画を得意とする映画監督キタノ・タケシ。彼はある時、“ギャング映画は二度と撮らない”と宣言してしまい、これまで撮らなかったタイプの映画に挑戦することに。そして、片っ端から色々なジャンルに挑むが、いずれも中断に追い込まれる…。
(TSUTAYA DISCASより引用)
「北野武監督のキャリアを破壊する作品。」
タイトルはopus19/31だった。
※opus19/31が今作のタイトルだったが、スタッフから「訳が分からないからやめませんか?」と言われて、監督ばんざいになった。素数はいいのに数学的になりすぎてしまう。
「フェリーニの81/2」(1963年公開)フェリーニ監督の自伝的な映画みたいにものすごいむずかしい映画と思われてこんなのが(監督ばんざいの内容)出てきたら笑うに笑えないだろうし。とインタビューで語っていた。
※opusは作品、19はこれまでの映画製作数(短編含む)31は映画製作の最終的な本数(目標)
映画監督として「歩み」を壊す
「その男凶暴につき」は初監督作品で話題、他の異業種監督の効果もあり商業的にもヒットし映画評論家からも一定の評価を得た。その後、3-4X10月、あの夏いちばん静かな海、ソナチネとヒットに繋がらず批評もあまりされなかった。しかし黒澤明監督や評論家の蓮見教授、山根貞男は好評価し、「さよなら~さよなら」でおなじみの淀川長治からは「あんたセンス良いね~」と言われた。
そして7作目となる『HANA-BI』がベネチア国際映画祭(1997年)で金獅子賞を受賞したことでそれまでは「お笑いのビートたけしが撮る映画」から「映画監督 北野武」へと風向きが完全に変わった。その後、バイク事故で一時芸能活動を休止するも「キッズリターン」「ドールズ」「BROTHER」を撮り映画製作を意欲的に行う。そして最大のヒット作「座頭市」を公開する。
しかしこのままでは終わらないのが北野監督。
ここで「一回壊そう」と思い「自分の撮りたい映画」「本来の映画の形である※アポロン的に対するアンチテーゼ」「権威なんて嘘っぱち」が今回の「監督ばんざい!」のテーマで自らの映画監督の歩みを破壊した。
※アポロン的・・・ニーチェが「悲劇の誕生」で説いた芸術衝動の一つで、主知的傾向をもち、静的で秩序や調和ある統一を目ざすさま。
ディオニュソス的・・・陶酔的、創造的、激情的などの特徴をもつさま。(Google調べ)
監督ばんざいの「お笑いの質」について
学校の教室でそのクラスでしかわからない、たいして面白くもないけど、下を向いてわらってしまう感じにしたと語る。監督は大勢に「うける」よりも「わかる奴」に笑ってもらえればと思っている節をこの作品から感じることが出来る。
キャスティングについて
キャストとして 江守徹を起用する。演じる江守徹のオン・オフのテンションがあまりに滑稽。演台に立った姿で「笑」がこみ上げる。もう一人の大物俳優として宝田昭が登場する。成金役、軽薄さ、うさん臭さ役をさせたらポール牧と双璧。今作のシーンでは交通事故を起こすも、もちまえの成金キャラでお金で解決する姿がブラックな笑いを引き起こす。
俳優がまじめにコメディを演じると芸人が出せない「おかしさ」がたまらない。下ネタばかりだけど(笑)
高円寺親子について
映画後半部分で突如として登場する高円寺親子は監督自身が頭が「おかしくなる」設定のため「ミスキャストなんだかよくわかないことにした」(ストーリーとして)つながりもいらない。
たけし人形について
身代わりでこの人形がでた時点(映画監督として)でおわりなんだよね!と監督談。
監督・ばんざい!の正しいミカタ。
「またこんなこと(北野監督は)しちゃってと思ってみてね。
続きが観たくなるショートフィルム
この作品はオムニバス作品としてショートフィルム風な演出もしている。1つの作品で7つの作風に触れることが出来るグリコのアーモンドキャラメルのような作品でもある。
なにより豪華なキャスト陣。
冒頭の自虐全開のナレーション(伊武雅刀)のスネークマンショー風な雰囲気により
進行していく。
・ギャング映画 (従来の北野映画風) 寺島進 國本鍾建 久松 : 菅田俊 久松組若頭 : 石橋保
・『定年』 (小津映画風) 妻:松坂慶子・娘:木村佳乃
・恋愛映画 「追憶の扉」 恋人:内田有紀
・男が女に尽くす編 運転手の恋編 運転手とお嬢様編 ブティック店員とギャング編
・『コールタールの力道山』 (3丁目の夕日(残酷バージョン)妻:藤田弓子
・『蒼い鴉 忍 PART2』 (活劇時代劇風)
・『能楽堂』 土曜サスペンス劇場・ホラー風 柳ユーレイ・渡辺哲(NG集最高)
後半本編
『約束の日』 (みんなやってるかの北野武バージョン)
江守徹、吉行和子、宝田明、大杉漣、岸本加世子、鈴木杏、六平直政、井出らっきょ等
おまけコーナー
監督ばんざい!には本当のショートフィルムが収録されている(このあたりがDVDの良い所)
このショートフィルムはカンヌ国際映画祭60周年を記念した企画。選ばれた35人の監督により
テーマを「劇場」約3分の短編としたもの。日本から北野武監督が選出され「素晴らしき休日」(One Fine Day)を制作した。監督はこの作品についてインタビューで「3分の(短編)映画は、予算は少ないが、2時間分の映画を作る労力がかかる。」と話した。内容については「KIDSReturn」を観た後で観る事をおススメします。
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投稿を表示一度ぶっ壊す!ってのはなんとなくわかる気がします。そして、わかる奴にわかればいい、下を向いてクスッと笑ってしまう‥まさにそんな作品だと思います。
豪華なキャストもそれまでにない演出ですよね!
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投稿を表示北野ユーモアを散りばめた作品で構成も好きでしたね!江守徹の起用や活かし方がクスリと笑える作品です。原題の話題は知りませんでしたがopus19/31の方がいま観るとしっくりきます。今後アポロン的アンチテーゼを使いこなしたいです。いつも鋭い考察に感動します。今後も引き続きがんばってくださいね
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