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私の好きな映画

じょ〜い小川
2024/07/04 16:57

考えうる不幸が全部盛り!己の過去と母親との関わりを自己総括した唯一無二のアドベンチャー映画!『ボーはおそれている』

■ボーはおそれている

(c)2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

〈作品データ〉

『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』を手掛けたアリ・アスター監督の最新作は精神疾患を患った中年独身男性による母親と己にまつわるブラックコメディ調のアドベンチャー映画!かかりつけの精神科医を受診し終えた後、自宅に戻ったボウは翌日夕方に母親の実家に帰郷する予定だったが、同じアパートに住む住人の騒音などで寝付けず翌日夕方まで寝過ごしてしまい、さらには精神科医から処方された薬を飲み間違え、さらなるパニックを引き起こしてしまう。主人公をボウをホアキン・フェニックスが演じ、他パティ・ルポーン、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ゾーイ・リスター=ジョーンズ、カイリー・ロジャース、パーカー・ポージー、ヘイリー・スクワイアーズ、ドゥニ・メノーシェ、マイケル・ガンドルフィーニ、リチャード・カインドが出演。 

・2月16日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー【R15+】

・上映時間:179分

・配給: ハピネットファントム・スタジオ

【スタッフ】

監督・脚本・製作:アリ・アスター

【キャスト】

ホアキン・フェニックス、パティ・ルポーン、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ゾーイ・リスター=ジョーンズ、カイリー・ロジャース、パーカー・ポージー、ヘイリー・スクワイアーズ、ドゥニ・メノーシェ、マイケル・ガンドルフィーニ、リチャード・カインド

原題:Beau Is Afraid/製作国:アメリカ/製作年:2023年

公式HP:https://happinet-phantom.com/beau/

〈『ボーはおそれている』レビュー〉

前作『ミッドサマー』でホラー映画の枠を超えた恐怖を作り上げたアリ・アスター監督の最新作『ボーはおそれている』。精神疾患を患った中年独身男性ボウの帰郷をブラックコメディたっぷりにいろどり、ボウ自身に降りかかるトラブルの連続とパラノイアを映像化し一見虚実交わる奇妙さが目を引くが、

己の過去と母親との関わりを自己総括した唯一無二のアドベンチャー映画に仕上がっている。

(c)2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

構成はプロローグとエピローグと本編を精神科医の受診&自宅編、ロジャー&グレース宅編、森編、帰還編の4部構成で展開。精神疾患を患っている中年独身男性ボーが母親の元に帰郷するというだけの話だが、寝坊や薬の飲み間違えという己のやらかしと、盗難やボロアパートの設備不慮や変質者が多い住居環境という外的要因による巻きこまれからパニックを引き起こし、さらなるトラブルを積み重ねて、単なる帰郷がアドベンチャーと化している。ボウは精神疾患患者で、極度の心配症と思い込み&せん妄によるイマジネーションから生み出されたブラックコメディは時に過激で、見慣れない方には悪夢に映りかねないが、この手の作風が好きな方にはひたすら面白いブラックコメディに仕上がっている。

 

(c)2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

 その手触りはモンティ・パイソンやテリー・ギリアム監督作品のような皮肉めいたもので、時折ボウの少年期のエピソードや森の中に住むコミュニティによる演劇が挿入されてはいるが時間軸自体はいじらずストレートなので、難しくはない。ただ、いきなりドゥニ・メノーシェに襲われたり、見ている演劇の演者がボウに入れ替わったりする捻りの演出があったり、ロジャー&グレース宅編、森編と帰還編のエレインとのエピソードをわざと冗長に作っていて、見る側を映画の核心から遠ざけ振り落とすような意地悪な作りではある。が、母親との関係、亡くなったという父親、一見無職の精神疾患者のボウがなぜ生活出来ているかなど様々な伏線が全て回収されていて、エピローグまできちんとやっている。

 

(c)2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

 また本作は飛行機なら1時間ぐらいで長距離バスなら半日近くかかる距離の話である。前作『ミッドサマー』と比べれば比較的近い距離で起こった出来事で、本来なら主人公の意思で選ばなければ避けられる巻き込まれ式の地獄を体験した前作『ミッドサマー』から考えると、多少の巻き込まれ事案はあれど大半は主人公本人が引き起こしたミスやドジであり、こうした意味では『ミッドサマー』とは対極の映画である。考えてみれば己の母親のこと、ましてやその母親の不幸は避けられないことなので、エピソードが進めば進むほどボウは己と自分の過去、家族と向き合う。

 

よく見るとセラピストや母親のモナ、大怪我を負ったボウを助けるロジャー&グレース夫妻など主人公に対する愛と施しが凄い作品だが、それをボウのせん妄&思い込みと物凄いミス&ドジで無にしてしまうカオス理論とちゃぶ台返しが凄まじく、そこを楽しめるかがこの映画最大のポイントになる。向き・不向きが両極端な映画ではあるが、奇妙&冗長な演出に振り落とされなければ

見る者の脳と心の奥底に深く突き刺さる最凶の傑作である!

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2 件の返信 (新着順)
椿五十郎 バッジ画像
2024/07/06 11:34

アリ・アスターがあまり得意ではないので本作がまともに見られるか(しかも長いし)心配していましたが、正直、一番面白かったです。不条理劇というより、コメディとして楽しめたからかなあ・・。個人的にはネイサン・レインとリチャード・カインドが出てたのもポイント高かったです(笑)


じょ〜い小川
2024/07/06 11:41

『ミッドサマー』はそこそこ良かったけど、納得いかない部分もあってので、
本作のテンションの高さは素晴らしかったですね。
それとこの映画で見せるブラック・コメディの感覚はモンティ・パイソンに近いと感じましたね。ネイサン・レインとリチャード・カインド、渋いですね。

U子
2024/07/05 13:45

見てるこちらが変になりそうでしたねw
こういう役もやれるんだな〜と思いました。


じょ〜い小川
2024/07/05 15:54

コメントありがとうございます。
しかしながら、よく考えるとアラフィフの独身男性の里帰りなんですよね、これ。
ホアキン・フェニックスは直近が『ナポレオン』でのナポレオンでしたから振り幅の大きさを感じるかもしれませんが、『her/世界でひとつの彼女』でも独身男性を演じてたし、それこそ『ジョーカー』のアーサー・フレック(=ジョーカー)だから、そう考えますとホアキン・フェニックスらしいんですよね。