2023年に観た映画(12) 「シン・仮面ライダー」
№12
日付:2023/4/2
タイトル:シン・仮面ライダー
監督・脚本:庵野秀明 ※脚本協力:山田胡瓜
劇場名:シネプレックス平塚 screen4
パンフレット:あり(¥1,200)
評価:6.5
観に行って良かった?:観に行って良かった
小4の春に始まった「仮面ライダー」に最初は馴染めませんでした。あのフォルムがグロテスクに見えて、ヒーローとしてのカッコよさを感じなかった。
Wikiで調べてみると、「痛快SF怪奇アクションドラマ」として放送開始するまでの製作段階において、ライダー自身のグロテスクさの是非も随分議論されたらしい。当時の大人達のそんな心配をよそに、当代きってのヒーローとしてあっという間に大人気となり、仮面ライダースナックは爆売れし、ライダーカードはめんこ勝負での取り合いが日常と化した。かくいう私も夢中になりました。
「ゴジラ」「ウルトラマン」と続く「シン」シリーズで庵野監督がかつて憧れたヒーローや怪獣を主人公に描く世界の魅力は、当時人気を博したオリジナルへのリスペクトと、その魅力の再生能力にあると思います。
今回もTVシリーズのエピソードと登場人物を巧みに再配置し、更には石森章太郎(我々の世代にとって「ノ」は不要なのだ)の世界も取り込んで、「仮面ライダー」の世界を令和に蘇らせた。
初代の「ウルトラマン」が全39話を通じて「ウルトラマン」であったのに対し、「仮面ライダー」は98話。当初のグロテスク感は徐々に薄れ、風を受けないと変身出来なかったライダーは変身ポーズだけでいつでも可能となり、ライダーも入れ替わりストーリーもパターン化した。
要は、対象とすべきオリジナルの長尺さと世界観の変化が「シン」化を難しくするのではないかと感じていたのですが、庵野監督は原点を放送開始時のスタイルに据えたまま、本郷猛&一文字隼人のシリーズ全体を網羅しつつ「仮面ライダー」の魅力のエッセンスを121分に詰め込んでいる。緑川ルリ子役の浜辺美波に至っては、石森章太郎の描くヒロイン像そのままに思えます。そして今回はこれまでの作品にもまして、監督の脚本力に冴えを感じました。
ただ今回監督が最も注力した筈のアクション・シーンには、大量生産型ライダー達を蹴散らすシーンやボスキャラとのクライマックスのシーンを始め、失望感が優先。「キューティハニー」以降、進歩が見られない。というよりも実写作品における庵野さんの美学の中で、唯一アクションだけが共感出来ない。全然ワクワクしません。
テンション上がった点とガッカリさせられた点とを合算すると、私はそれなりにプラスに働きました。特にその世界観と要員配置については文句の付けようもない。エンディングで藤浩一と子門真人の名をクレジットする気配りと共に懐かしい主題歌が流れると、図らずもウルウルしてしまった。
ちなみにこの感想を書きながら、NHK-BSで放送された“ドキュメント「シン・仮面ライダー」”を観ました。庵野さんの本当に心無い(しかも悪気がないから余計にタチ悪い)発言の数々を受けながら、田渕景也アクション監督とそのチームが、役者陣と共にアクション・シーンに取り組むプロ根性に心から脱帽です。
「シン」はこれでもう打ち止めか。原点から逸脱した人気シリーズというと、「ルパン三世」を思い付きますが、ヒーロー物じゃないしなぁ(観てみたいけど)。あと個人的には「仮面の忍者 赤影」を復活させて欲しいかな。
庵野組の皆さん、本当にお疲れ様でした!
袋とじ未開封につき内容未確認