2025年に観た映画(17) 「教皇選挙」

「コンクラーベ(CONCLAVE)」である。本作は「人気作家ロバート・ハリスが知られざる“教皇選挙”の舞台裏を描いたベストセラー・ミステリー」が原作との事ですが、我々は週刊モーニングに連載されていた惣領冬実先生作「チェーザレ 破壊の創造者」でコンクラーベの事はとっくに勉強済み、経験済みなのである。
さーてお手並み拝見と劇場に足を運んだ本作。
現代においてもその選考ルールは変わらない中、文明の利器、情報端末を全て取り上げられ、外界から遮断された空間で、次期教皇が決まるまで延々と続けられるコンクラーベの模様がスリリングに描かれます。
有力候補者の出自や主義主張が明確にキャラ分けされているおかげで、枢機卿同士の相関関係を把握しやすい。我々部外者が観客として参画する上でこの点は非常に有難くて、設定の妙を感じる。ひたすら繰り返される投票と勢力図の変化が一つの見どころですが、いきなり最初の投票結果から「ほぉー、そうきたか」となる。
本命、対抗、穴馬が獲得票数に一喜一憂しながら徐々に明らかになる候補者同士の画策、謀略、足の引っ張り合い。この選挙戦の当事者であり、この選挙を公正に遂行する事務方責任者でもあり、有力候補者の派閥の一員でもあるローレンス枢機卿を演じたレイフ・ファインズは、本作でオスカー受賞しても全然良かったんじゃないかと思えました。スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴーといったこれまた見覚えのある(それも悪役で)名バイプレイヤー達と火花を散らす。
選挙戦を陰で支えるシスターたちの役回りと存在感。死して尚後継者争いに一石を投じる前教皇の遺志。様々な思惑が交錯し続ける中、選挙戦の渦中に身を置かざるを得ないローレンスが自らの信念とも葛藤しつつ施すジャッジが、その行方を左右する。最後まで息詰まる攻防が繰り広げられる中、驚きの結末が用意されてもいました。アカデミー脚色賞受賞にも激しく同意です。実に見応えのある作品でした。
№17
日付:2025/3/30
タイトル:教皇選挙 | CONCLAVE
監督:Edward Berger
劇場名:TOHOシネマズ小田原 SCREEN4
パンフレット:あり(¥990)
評価:6.5





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<CONTENTS>
・イントロダクション
・ストーリー#1
・相関図
・キャスト
・コンクラーベ、その時代背景と現在 松本佐保(日本大学国際関係学部教授)
・用語辞典
・ストーリー#2
・エドワード・ベルガー監督インタビュー
・レイフ・ファインズ(ローレンス枢機卿)インタビュー
・キャスト・インタビュー
・『教皇選挙』で描かれるカトリック教会、変化への風穴と懸念 ISO(映画ライター)
・プロダクション・ノート
・スタッフ
・密室の選挙ミステリーを支えた名優たち 稲垣貴俊(ライター/編集者)
・男同士の足の引っ張り合い、それを見つめる修道女 北村紗衣(武蔵大学人文学部教授)
・深海の迷宮と心の迷宮 柴山幹郎(評論家)
・クレジット
