2024年に観た映画(19) 「バジュランギおじさんと、小さな迷子」
初めて韓国映画「シュリ」を観た時、当時はまだ「近くて遠い国」と言われていた彼の国の様子に映画と言う媒体を通して触れて、ハングル語のクレジットと共にとても新鮮だった覚えがあります。
インド映画も、現代劇はこれが初めて。予告編に誘われた本作を印パ両国の関係を予習して観賞。ちなみに制作年度は2015年で、日本初公開は2019年1月との事。有線でじわじわと人気が出た演歌の如く、ここにきて公開される劇場が増えている?
インド映画なので、迷子になるのはインド国内。そこで描かれるこの国の宗教・宗派や食べ物をはじめとする文化の多様性に面食らう。そんな社会で彼らが各々のルールと共に共存している様子に興味が尽きません。後半はロードムービー的なタッチでシャヒーダーの故郷探しが描かれますが、風光明媚なロケーションを楽しめる。
隣国から迷い込んだ少女を親元に返すため命懸けで国を渡るパワンと、シャヒーダーの健気さに後半は涙腺が緩みっぱなし。予想通りのものすごくベタな展開でありながら、憎めない一作となりました。
本作は所謂「お伽噺」。馬鹿が付くほど実直なる主人公パワンが確固たる信仰心を抱きつつ、他者への寛容さと愛情を忘れない姿が、国や宗教を超えて周囲の人々の心を動かす。ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が互いの信仰心に最大限の敬意を示す姿に、やっぱり心打たれます。
実は全編インド国内ロケ。この国にはまだまだ体罰が根強く残っているようにも見受けられますが、パワンを追い詰めるパキスタン側の警察に至っては、まるで日本の江戸時代の如き取り調べ。パキスタンの人達からしたらどう感じるのだろうと思ってしまった。
といったあたりは気になりましたが、パワンとシャヒーダーの心の繋がりが起こす奇跡の物語は、現実社会のどんな政治的交渉よりも両国民の心を動かすパワーがあるようにも思えました。映画の持つ力を信じたくなるような、そんな魅力を感じる作品でした。
№19
日付:2024/5/6
タイトル:バジュランギおじさんと、小さな迷子 | BAJRANGI BHAIJAAN
監督:Kabir Khan
劇場名:シネプレックス平塚 screen6
パンフレット:あり(¥600)
評価:5.5
2019年の公開時に作成されたパンフは小振りで薄くて600円と一昔前の価格。これでいいんです!
<CONTENTS>
・イントロダクション
・ストーリー
・キャスト
・プロダクション・ノート
・サルマン・カーンについて
・V.ヴィジャエーンドラ・プラサード(原案・脚本)インタビュー
・祈りの国への旅 村山和之(中央大学・和光大学兼任講師)
・クレジット