「天井桟敷の人々(Les enfants du paradis)」(1945)のガランス
●「天井桟敷の人々(Les enfants du paradis)」(1945)
フランス映画の古典として知られる傑作群像劇。19世紀半ばのパリを舞台に、女芸人ガランスをめぐってさまざまな男たちが織りなす人間模様を、第1部「犯罪大通り」、第2部「白い男」の2部構成で描く。1840年代、劇場が立ち並ぶパリの犯罪大通り。パントマイム師のバチストは、女芸人ガランスを偶然助け、彼女に恋心を抱く。ガランスは俳優ルメートルや犯罪詩人ラスネールにも思いを寄せられていたが、誰のものにもならない。そこへ、同じくガランスにひかれる富豪のモントレー伯爵が現れる(第1部)。数年後、座長の娘ナタリーとの間に一児をもうけたバチストは、フュナンビュル座の看板俳優として舞台に立っていた。そんなバチストを毎夜お忍びで見に来る女性がいたが、彼女こそ伯爵と一緒になったガランスだった。ガランスが訪れていることを聞いたバチストは、ある時、居ても立っても居られずに舞台を抜け出すが……(第2部)。
●●ガランス!
「天井桟敷の人々」では、しっとりとして、かつ芯の強い女芸人のガランスを演じたので、アルレッティやバチスト役のジャンルイ・バローは気になる俳優。40代になってこそ出せる優雅な女性の魅力が凝縮している。一方、一途で勝気なナタリー役を演じたマリア・カザレスの方は、少々苦手な女優として刷り込まれているが、ガランスの多くの男性に思いをよせられる役は、あこがれる存在なのかと・・・。
この映画を観て以来、アルレッティの他の作品を観ているのだが、「北ホテル」はちょっと違う感じがするので、あくまでも、役柄が好きなのだろうと思っているところ。
●アルレッティ(1898-1992)の略歴
速記といった秘書の仕事やモデルを経て、1919年からキャプシーヌ劇場で初舞台を踏み、女優として活動をスタート。映画は1935年「ミモザ館」を経て、1938年の「北ホテル(フランス語版)」でマルセル・カルネ作品に初出演、1942年の「悪魔が夜来る」の出演後の、1945年の「天井桟敷の人々」の女芸人ガランスを演じ、名声を確立、映画史に残る存在となった。アルレッティというより、ガランス・・で知られる。
パリ解放後は、戦時中にドイツ軍将校の愛人であったことから、対独協力の容疑で一時拘束され、「天井桟敷の人々」の封切にも呼ばれなかったが、やがて嫌疑がはれて、芸能活動を再開。ダルクール公爵夫人のアントワネットと同性愛関係にあったことも知られている。
●参考作品
「アルレッティの愛と罪(Arletty, A Guilty Passion)」(2015)