「ワン・バトル・アフター・アナザー」
スピルバーグ、スコセッシ、イーストウッド、ノーラン、タランティーノなど、常に偉大なフィルムメーカーと仕事をしてきたディカプリオが、今回はポール・トーマス・アンダーソン監督作品で主演✨ということで楽しみにしていた「ワン・バトル・アフター・アナザー(2025年)」。公開初日(2025年10月3日)とその後、再度鑑賞してきました。
さまざまな意味でインパクト大😳 他に似たような作品を知らず、新鮮な体験となりました。まだ頭の中で整理できていない部分がありつつ、印象に残ったことを記します。
緊張感とともに駆け抜ける160分
この作品のジャンルは?と訊かれても、パッと答えるのは難しそうです。社会派ミステリー、ヒューマンドラマ、コメディ、アクション、チェイスバトルetc.とさまざまな要素満載✨ 一筋縄ではいかず、かといって不思議ととっちらかるでもなく、ジャンルを超越した独自の「ワン・バト」ワールドとでもいうべきものが展開されています。多ジャンル要素がありつつ、いずれのシーンにも共通しているのが途切れない緊張感。それが大きな吸引力となっています。
レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドによるサウンドトラックも絶妙で、不穏な空気を漂わせるピアノリフなどは、殊に緊張を煽ります。また1960~70年代のソウル、ロックといった挿入歌の、不意打ちのような使い方も効果的です。

ちなみに主人公、うらぶれた革命家のボブ/パット(レオナルド・ディカプリオ)のテーマソングは、スティーリー・ダンの、やや情けない男性の歌「ダーティ・ワーク」。
戦わないディカプリオの戦い
革命組織のメンバーで、なりを潜めて久しいボブ/パット(レオナルド・ディカプリオ)と、訳あってボブの娘ウィル(チェイス・インフィニティ)を拉致した軍人ロックジョー(ショーン・ペン)。タイトルにあるように彼らの「バトル」があるかと思いきや、なかなか対峙しないふたり。このもどかしさは本作に焦燥感とユーモアをもたらし、みる者を釘付けにします。
ボブは娘を助けたい一心で、この上なく慌て、かつ怯まずに走り続けます。ディカプリオの狼狽ぶりはピカ一でした。また建物の屋上から落下したり、センセイ(ベニチオ・デル・トロ)に「トム・クルーズのように」といわれるがまま、走る車からも飛び降りたりをスタントなしで披露(とパンフにも記載)。まさにトムを目指すかのようですが、カッコ良さは微塵も出していません。いかにも冴えないおじさんを徹底的に演じる潔さが、一周まわってカッコ良いです。

彼ら以外考えられないほどハマっていました
壮大なバトルの発端には、偏った思想も絡みますが、それよりも根底にあるのは(変態軍人の)「恋」の感情のように思えます。ここまで書くとネタバレになってしまうので控えますが、よくよく考えれば「クスッ」と笑いを誘うストーリーかもしれません。全編そこはかとなくユーモラスであることも、この作品の大きな魅力です。
また「革命」という非日常的な言葉は、ボブの妻ペルフィディア(テヤナ・テイラー)が求めて誤った「創造性」を踏まえると、身近なテーマとして迫ってくるようでもあり‥さまざまに思いをめぐらせたくなる作品です。