「 女装 」しながら原爆を語ろう。
『 オッペンハイマー 』の日本公開を待ちながら その3
ダスティン・ホフマンの代表作の一つ 『 トッツィー 』
売れない俳優が職を得るために女装して女性になりすますが、周囲に女性として扱われ、当人も違うジェンダーロールを経験することで、ものの見方が変わり人間として成長していく話。
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その日本公開のプロモーションのため、初来日。
「 笑っていいとも! 」に出演し、登場するなり「 ともだちの輪 」のポーズをして会場を沸かせ、タモリ、田中康夫、山本コータローらからインタビューを受けたのが印象に残っていますが、当時話題になったのが、来日直後記者会見でアメリカによる広島・長崎への原爆投下を謝罪したこと。
4〜500人の記者がいた会場は一瞬静まり返ったらしい。
来日したアメリカ人映画スターが公の場で原爆投下に言及し正面から謝罪した例を、僕は他に知りません。
さらに文芸春秋1983年6月号で、兄のロナルド・ホフマン氏と司会の佐藤隆三氏との対談を行いました。
「 女装 」しながら原爆を語ろう。 とは、その記事のタイトルで、以下はそこからの抜粋・要約。
兄のロナルド・ホフマン氏は当時レーガン政権財務省次官のブレーンで財政政策担当エコノミスト。
佐藤隆三氏はロナルドとジョンズ・ホプキンス大学の同級生で、無名時代からのダスティンを知る間柄。 当時ブラウン大学経済学部教授 と ハーバート大学ケネディ・スクール教授を兼任。
ダスティンは語る。 第二次世界大戦が終わった時、8歳だった。
2つの原爆投下のこともその後知り、当時始終悪夢でうなされていた。
学校ではそれまでの消火避難訓練が核爆弾の避難訓練に変わり、白い閃光が見えたらすぐに机の下などに身をふせろ、そのあとに轟音が聞こえる、と指示された。
戦後数年のアメリカには「 今度は自分たちがやられるかもしれない 」は対ソ脅威感だが深層心理では罪悪感からのおののきがあったのだろう。
戦争のむごさは、家族を、女こどもを殺すこと。
東京を初めて空襲したジミー・ドゥリトル著「 東京上空三十秒 」の一節。
爆撃の目的地に達する途中、ふと下をを見ると大勢の日本人が何かをやっている。
「 あの人たちは野球をやっているんですよ 」と言われた言葉を忘れられなかったそうだ。 「 ジャップを殺せ 」と叩きこまれていたから。( それでも任務は遂行 )
兄のロナルドとも話したが、原爆を投下した時、アメリカは自分のしていることを自覚していたんだろうか。
初めて日本に来て、街の中の日本人を見ると、きのこ雲の膨れ上がる下で起こってる様を何人のアメリカ人が想像できるか。
たとえばニューヨークに住んでいて、何も知らずにある日ドアを開けた途端、ピカっと閃光とが来て10万人が瞬時に殺されるとしたら。
そう想像するとアメリカの中で原爆の中で世論のリーダーシップがないのが理解できなくなってきた。
真相に対して目をふさがなければ戦争なんてできない。
戦争という言葉といっしょにいつも脳裏に浮かぶのはヴェトナム戦争でナパーム弾で焼かれた少女( ファン・ティ・キム・フックさん )の写真。
僕にとって戦争とは男の所業であり、戦争で男は女を殺す。家族を殺す。
戦争に対してこうした強い感情を感情を抱くのは、3週間前に妻の出産に30時間立ち合い、女の子を授かった体験によるのかもしれない。
血まみれ命がけで行われる分娩に立ち会うと、恐ろしくて男は敵わない、耐えられないと思う。 そこから逃げ出して戦争映画なんぞ観るのが男の姿。 (笑)
同時代の俳優、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ロバート・レッドフォード、ポール・ニューマン、ジーン・ハックマン、ロバート・デュバルらはみんな軍人を演じたことがある。
でもダスティン・ホフマンは軍人を演じたのを思い浮かばないし、チェックしたがなさそうです。 アメリカの俳優ではめずらしいと思います。
163センチと小柄なこともあるでしょうが、よっぽど軍隊がきらいなようにも思えます。
来日前の日本人の印象は、共産圏を含め世界中からファンレターをもらうが、きれいな筆致できちんと書かれていることと、手紙といっしょにプレゼントが送られてくることで、日本人から以外には類のないこと。 感謝して、自分の子どもたちに与え続けている。
日本とアメリカの文化の違いで思うのは、日本では相手を知らなくても一応その相手に敬意を表してお辞儀をする。 それがアメリカ人には理解できないし、それができる日本人が僕には脅威だ。
アメリカ人なら頭を下げるに価するかわからないうちは観察し、ゆっくり避けて通りすぎる。 さもなければ握手をした感触で相手を値踏みする。
初来日で印象に残ったことは、成田空港から車に乗って、さあ日本だ、どんな国だとキョロキョロしていたら、隣の車を運転していた大人の人がミッキーマウスの帽子をかぶっていたこと。 (笑)
同時期の平凡パンチの阿木燿子との対談記事。
松田優作から託された「 3人の俳優をどう思うか? 」との質問に答えて
マーロン・ブランドはいい俳優のゴッドファーザー。 1950年代に演技に見えないナチュラルな演技をしていると評されたから。
『 ゴッドファーザーPARTⅡ 』のアル・パチーノ、『 レイジング・ブル 』のロバート・デ・ニーロには圧倒されて、自分に失望した。
『 ゴッドファーザーPARTⅡ 』を観に行った時、サインをもらいに来た少年に「 今の映画に出てた人でしょ 」とアル・パチーノに間違われて、ショックで悲しかった・・・。
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そんなダステイン・ホフマンですが、この8月8日で86歳。
お誕生日おめでとうございます。
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